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講 義■ Lec 013 (その2) 記録:過去を調べる
掲示板■ 想像力・未完


 過去を探るには、現在からです。記録に残る過去とは、非日常的なことばかりです。


▼ 講義ファイル
・Lec013_2の講義ファイル(講義時間 26:27)
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講 義■ Lec 013 (その2) 記録:過去を調べる

▼ 現在のもの
1 現在のものから、過去を知る
  地質学の研究で知りたいのは、「過去」です。過去の記録を、詳細に読み取りたいのです。ところが、どんなに過去のものであっても、「現在」に存在するものしか手にできません。現在まで記録が残っていないと、過去を科学的に再現することができません。「現在」手にできる「過去」のものを使って、過去の記録を読み取ることになります。
  「生きていた証拠:化石」でも紹介した「現在は、過去の鍵である」というハットンの斉一説の考えを使えば、過去を探ることができます。現在の論理で、過去に適用可能なものを利用すればいいのです。
  「現在」のものは、「過去」から「現在」までの時間経過によって、変化しています。しかし、直接読み取れるのは、現在残っている過去の情報です。
  ある石を例にして考えてみましょう。
  ある石は、「現在」ここに存在するものです。この石を科学的に調べていこうとするとき、石自体は、過去の作用によって形成されたものです。そして、その過去に形成された性質で、現在まで残っているものを調べることになります。質量、体積、形態、化学組成、構成鉱物などは、現在も過去も、ある程度、共通の性質を保存しています。
  しかし、厳密には、その性質は、長い時間ののちに変化してきている可能性があります。つまり、
「形成時(過去)にできた性質」+「その後の変化」=「現在の性質」
とまります。
  もし、その石の本質や起源を知りたければ、「その後の変化」を除いたものを求めなければなりません。年代測定は、まさにそのようなプロセスをおこなっているのです。
  現在手にできる「もの」とは、過去の事件、出来事、現象によって形成され、その後の変化を受けて、現在に至ったものなのです。

2 過去は未来を知る手がかりとなる
  なぜ「過去」を知りたいかというと、それは、未来を知る手がかりになるからです。まず、「過去」を知ることは、精密な、
・地球の歴史や
・生命の歴史
を編むことです。
  精密にくみ上げられた、地球や生命の歴史から、過去から、現在、未来まで、普遍的に通用する地球や生命の規則や法則を求めることができます。
  そのような規則、法則は、時間を超越した、時間の変化を受けない、未来予測に活用できるもののはずです。

▼ 過去のもの
1 過去の素材
  過去を調べるには、過去の物質を使うことになります。地質学でいう過去の物質とは、
・岩石
・地層
・化石
です。
  地層は岩石でできています。しかし、地層ではない岩石もたくさんあります。化石は地層に含まれています。しかし、化石を含まない地層もあります。化石は過去の生物(古生物)の一部ですが、すべてではありません。生物は地層とは独立した存在です。
  このあたりの関係を間違わないようにしましょう。

2 日常と非日常
  過去のもので、過去の事件や現象を記録しているものは、過去の「日常」的なものではなく、「非日常」的な事件や現象がほとんどです。
  化石の発見を例にして考えていきましょう。
  化石や地層は、過去におこった非日常的事件によって形成されています。過去の生物(古生物)は、過去に日常的に存在したものです。地層の素材となる、土砂は定常的に河川によって海に運ばれてきました。
  しかし、化石に記録されているのは、生物の死という「非日常」と地層に埋もれる「非日常的」事件、壊れ、なくならずに地層の中に残存するという「非日常的」保存状態を達成し、地表に露出するという「非日常的」事件、人に見つかるという「偶然」によって、化石がはじめて人の手にはいるのです。さらに加えれば、科学者の手に渡り研究材料になるという「幸運」がなければ、多くの人にその化石の存在や、意味、重要性が伝わりません。
  このようなことは、岩石でも事情は同じです。
  岩石は
・火成作用(マグマによって岩石を形成する作用)
・変成作用(熱や圧力による岩石の性質を変える作用)
・堆積作用(物質を地表で移動させて岩石にする作用)
によって形成されます。
  このような作用は、地球の営みにおいては、「日常的」状態です。しかし、ある場やある物質が経験してきた時間の流れで見ていったとき、それは、非日常的営みの集大成のごとく見えます。
  地質学的な記録の多くは、非日常的な記録です。そして広域に記録されているものとは、異変が広域と記録されるような大事件だといえます。


掲示板■ 想像力・未完  

・想像力・
過去を読み取るということは、
緻密な分析や観察が必要です。
それは、労力と時間のかかる作業です。
手間を惜しんではいい仕事はできません。
でも、最期に必要なのは、想像力です。
得られたデータから過去に起こったことを想像する力が必要です。
そんな想像をするときが、一番楽しいときでもあります。

・未完・
四国愛媛県西予市から帰ってきました。
私は山中のロッジに泊まり、
その近くにある地質館に一日中いて
ひたすら仕事を続けていました。
ところが予想通り、
時間不足で、目的の仕事が完成しませんでした。
その他にもデータが足りないことも判明しました。
いまさら仕方がありません。
できる限りのことはやってきました。
今後どうするかを考えなければなりません。
でも、それもなかなか問題なのですが。


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