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講 義■ Lec 012 (その4)生きていた証拠:化石
掲示板■ 労を惜しんではいけない・つかの間の休息 


 いよいよ「生きていた証拠:化石」の講義も、今回が最後となりました。化石から読み取れることを、みていきましょう。


▼ 講義ファイル
・Lec012_4の講義ファイル(講義時間 31:56)
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ISDN用(ファイルサイズ 3.9MB)


講 義■ Lec 012 (その4)生きていた証拠:化石

▼ 化石の示すこと
 化石と認定された古生物が多数集まってくると、いろいろなことがわかります。情報の量が増えてくると、質の違う情報も生み出すことができます。化石の研究から、さまざまな古生物の情報を読み取ることができるます。そんな例を紹介していきましょう。

1 生物個体そのもの
 化石となった生物が、その当時、生きていたことを示しています。当たり前のことに思えますが、この講義でおこってきたように、これは非常に難しい問題を含んでいます。でも、前回までの講義のように、形の類似性と多数の証拠から、高い可能性として化石が過去の生物であるとしています。そのような努力の結果、一つの化石からも、さまざまな情報を読み取ることができるようになっています。ある化石から、過去の生物や、その生物の行動、生活、社会など「生きていた証」を復元することが可能となります。
 化石の定義には、
・古生物の一部や個体そのもの
・生物がなにかした跡(移動、住居、排泄などの生きているためにできたなんらかの生活痕)
とがありました。
 化石には、体全部が残ることは、非常に稀です。ほとんど場合は、体の一部が残るだけです。化石は、その部分や、残りかたによって、いくつかに分類できます。以下では、その代表的なものを見ていきましょう。

・硬組織の化石
 硬組織とは生物の体で硬い部分のことです。硬く分解されにくいものには、貝殻、骨、歯、鱗、木、種(たね)、花粉などがあります。これらの硬組織は、有機物でできた軟組織に比べれば、残りやすく、化石として産出しやすくなります。

・置換化石
 生物の組織の一部や全部が、その組織を保存したまま、別の鉱物に置きかられる(鉱化作用)ことがあります。例えば、木は、炭化して石炭、さらにすすんで石墨となって保存されることがあります。また、木のすきまを珪酸がうめていき、そこが石化して、珪化木とよばれるものになることもあります。

・印象化石
 もともとの生物の部分がなくなっても、その形が鋳(い)型として残ることがあります。その鋳型を雄型、鋳型でできたものを雌型といいます。雌型を印象(いっしょう)化石と呼んでいます。あるいは、雌方を鋳型として雄型ができることもあります。それも、印象化石といいます。先カンブリア紀の化石は、硬組織をもたない生物ですが、印象化石として残ることがあります。

・軟組織の化石
 軟組織の化石が残るのは、特殊な場合ですがあります。冷凍保存された氷づけのマンモスや、乾燥保存されミイラ化した恐竜、樹脂づけされたコハク中の化石、タールづけされた各種の生物化石などが知られています。稀ではありますが、軟組織を調べるために、非常に貴重な化石なります。

 このような化石で、同種の個体、他種の個体などが、複数そろうことによって、より正確な古生物像が描けます。当時の環境(古環境)や生物の時間的変遷(生物進化)など、質の違う情報が読み取れるのです。

2 古生物の生活の様子
 生物の体以外に、生物がなにかした跡も化石としていました。そのような化石を、生痕化石といいます。さまざまな生活の痕跡ですが、化石として、動物の命名基準に基づいて名前を付けられています。
 生痕化石の種類には、這(は)い跡、足跡などの移動を示すもの、巣穴、卵と巣の化石、珪化木に残る鳥の巣穴などの住居を示すもの、糞石(コプロライト)などの排泄物を示すもの、噛み跡などの捕食を示すもの、寄生や共生を示すもの、コハクの中から交尾状態の昆虫から生殖を示すもの、マチカネワニの右側後肢の腫瘍跡などの病気やティラノザウルスの化石から傷を示すものなど、各種のものが見つかっています。

3 古生物の生きていたい時代
 特定の時代にだけ産出する化石があれば、地層の対比、地層の区分、地層の堆積時代の決定、などに便利です。そのような化石は、示準化石(標準化石ともいいます)として利用されています。
 示準化石の条件として、限られた時代に生存していたことがわかっている必要があります。示準化石に有効なものは、生存期間が短かく、広範囲に分布している生物化石です。
 代表的なものとしては、古生代では三葉虫、筆石、サンゴ類など、中生代ではアンモナイト、二枚貝類、恐竜など、新生代では各種の哺乳類などがあります。

4 古生物の生活環境
 示準化石とは違って地層の堆積環境を示す化石があります。そのような化石は、示相化石とよばれています。
 示相化石として利用するには、その場でたまった化石(現地性といいます)か、移動してたまった化石(異地性といいます)を区別する必要があります。現地性の化石であれば、生物が住んでいた場所で化石になったものですから、その化石からよみれる環境の情報は、そのままその地域のものとすることができます。一方、異地性の化石であれば、化石の示す情報は、移動しているので、そのままでは適用できません。生痕化石は、現地性化石であることが多く、現地の環境復元には有効な情報源となります。
 植物の葉の化石が、海生の貝化石とよく一緒に産出することがありますが、これは、明らかに異地性の化石であります。葉が川で流れて海にたまって化石になったものです。
 示相化石として有効なものは、生息環境の条件が限られているものです。特別な環境で生きる生物の化石は、環境としては非常に特殊かもしれません、特別な地域情報を読み取ることができます。

5 古生物の進化
 各時代を通じて多数の生物を似たものを順番に並べていき、そこになんらかの連続性が見られるのであれば、それは古生物の進化のプロセスをみていると考えることができます。このような化石は、生物の進化の証拠とみなされています。
 化石の年代が決まっていれば、化石から、平均的な進化速度が統計的に求めることが可能です。「種」の生存期間は平均すると30〜40万年、「属」は100〜300万年と見積もられています。これらの値は、多くの種類を一緒にした見積もりとなっています。

6 化石のでき方
 化石のでき方を研究する学問をタフォノミーと呼びます。化石となれるのは、実はある限られたものだけなのです。大多数は、食べられたり、分解されたりして、化石としては残りません。さまざまな条件をクリアしたものだけが、化石となります。化石になるための条件をみていきましょう。

・絶対量が多い
 生物は、基本的に有機物からできています。有機物は、軟組織でできているため、微生物や水(二酸化炭素を溶かして弱い酸性のことが多い)によって、急速に分解されます。ですから、個体数の多いものが、多く残る可能性をもっています。ある限られた時期でも、長い時期でもいいのですが、栄えて多数の個体を持ったものが残る可能性が大きくなります。

・保存されやすい場所に移動・埋没
 遺骸は、死んだ場所で保存されることはあまりあません。分解されにくいところへ移動し、保存されることで化石になります。
 化石として残るためには、分解から逃れるために、できるだけ早く、微生物や地下水のこない場所へ、埋没することが重要です。
 特殊な条件であれば、軟組織も残ることがあります。化石の種類でも述べたように、樹脂のなか(コハク)、タールの湖、特殊な石灰岩などです。
 魚の化石はあまり多くありません。魚は、骨格として硬組織があり、海底に埋没する可能性が高いのに、化石にはなりにくいのです。なぜでしょうか。魚をはじめ遊泳性の動物は、死ぬと海底に沈みます。ところが、腐敗によって体の中にガスが発生して、浮上し、分解し、解体されます。魚の部分で、化石となりやすいのは、耳石(内耳にある平衡器官の石灰化した固体)とウロコです。サメの歯は大型で、生え変わりが激しく、エナメル質で保存されやすいため化石になります。

7 生物の化石としての保存率
 生きている生物がどの程度の比率で化石になるのでしょうか。個数ではなかなか決められませんが、種の数でみるとある程度の目安ができます。現在の生物の種の数を調べ、記録にある化石の生物種の数を推定し、化石として保存される確率が求められています。それによると、4.5〜13.6%と見積もられています。
 海に棲む動物は、化石になりやすい条件で生息しています。しがたがって、化石になる率が高いはずです。
 潮間帯に住む生物が、化石として記録される可能性を研究されました。それによると、属のレベルで40%以下という見積もりがでています。生活の仕方による区分では、海底固着性が3分の2、堆積物中に潜っているものや徘徊性肉食の生物は4分の1しか保存されないことがわかりました。
 一番いい条件でこの程度ですので、一般には、1割程度の種類しか、化石にならないのです。私たちはその一部を発見し、研究しているのです。
 過去の生物を化石から探るというのは、ほんの一部しか見えないのぞき穴から、全体を探ろうという試みに近いものです。もっとたくさんの化石を見つけなければなりませんね。


掲示板■ 労を惜しんではいけない・つかの間の休息  

・労を惜しんではいけない・
労を惜しんではいけないことは、
どんな仕事でも同じです。
小さなことを積み重ねていかなければなりません。
そんな繰り返しが、大きな結果となってくるのです。
ただ、そんな繰り返しのつらいところは、
努力の積み重ねの結果が、保証されているわけではないことです。
だから、継続をしていくのが難しくなるのです。
でも、手を抜いて成功の可能性をあげることが
できないことだけは確かです。
やらなければ、マイナスがはっきりしています。
プラスを望むのであれば、
小さな努力を積み重ねるしかないのです。
私は、そんなことを考えながら、日々励んでいます。

・つかの間の休息・
蒸し暑い夏が続いていますが、
北海道でも蒸し暑い日が続いています。
夏バテはされてないでしょうか。
私は少々夏バテ気味です。
いよいよ夏休みの終わります。
北海道ではもう2学期がはじまっていますが、
夏休みの宿題であわてている人たちもいることでしょう。
我が家では、2学期はもうスタートしています。
平穏な日常的な日々がスタートしました。
私は、大学の前期の成績評価に関する忙しさも終わり、
9月からは校務は定常に行われますが、
講義が10月からですので、
あわただしさは、まだありません。
つかの間の休息を味わいたいのですが、
私は、相変わらず仕事に追い回されています。


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