地球のつぶやき
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Essay■ 271 冥王代の砕屑性ジルコンの謎
Letter ■ エアコン・体調不良


(2024.08.01)
 冥王代の年代を示す鉱物があります。砕屑性ジルコンと呼ばれています。ところが、そのような古い年代の岩石は見つかっていません。砕屑性ジルコンだけが、なぜ古い年代をもっているのでしょうか。


Essay■ 271 冥王代の砕屑性ジルコンの謎

 今回は地質学の謎の話になります。しかし、その謎の解明には、地質学の知識となりより想像力が必要になります。がんばって話に付いてきてください。
 では話をはじめましょう。まずは年代測定からです。ジルコンというマグマからできた鉱物は頑丈で、少々変成作用を受けても、砕かれて堆積物に紛れ込んでも、形成されたときの年代を保持していることがあります。ジルコンを見つけて、年代測定をしていく方法が開発されました。以降、古い堆積岩中の砂粒となったジルコン(砕屑性ジルコンと呼びます)を見つけて、多数の年代が報告されてきます。その中に、古い年代を残しているものも見つかってきました。
 西オーストラリア、ナリアのジャックヒルズ礫岩は、約30億年前に堆積していますが、そこから古い年代の砕屑性ジルコンがよく見つかっています。最古の年代は、43.72±0.06億年前となっています。43億年前までのいろいろな年代の砕屑性ジルコンが多数報告されてきています。ですから、これらの年代も確かだと考えられます。
 一方、岩石として最古のものは、カナダ北西準州スレーブ、アカスタの花崗閃緑岩の40.31±0.03億年前が、もっとも確かなものとなっています。ぎりぎり冥王代に入ります。しかし、それより古い岩石で確かな年代は見つかっています。
 砕屑性ジルコンや火成岩でも、もっと古い時代のものが見つかる可能性がありますが、現状の情報をもとに、以下では考えていきます。
 冥王代とは、地球が形成されてから、地質学的証拠が揃ってくるまでの、証拠のほとんどない時代ことです。証拠が揃ってくる年代は40億年前からで、太古代(始生代ともいいます)になってからです。岩石の年代として、冥王代末期のものが見つかっていますが、現在のところ年代区分とは呼応しています。問題は、砕屑性ジルコンにだけに、なぜ古い年代が見つかるのかということになります。
 ジルコンは、花崗岩質のマグマからできる鉱物です。ですから、砕屑性ジルコンが由来した岩石も、花崗岩類だと考えられます。冥王代の花崗岩類はどのようにしてでき、どのようにして消えたのかが、より本質的な問題となってきます。
 その謎は、冥王代の地球の歴史を辿る必要があります。
 まず地球形成は、45.62 億年前に多数の小天体が集まってできました。地球初期にはマグマオーシャンができていました。マグマオーシャンとは、集まった小天体の衝突による熱で、地球表層が溶けてマグマの海ができている状態です。
 そんな時(45.5〜44.4億年前)、地球に大きな天体(ジャイアント・インパクトと呼ばれています)が衝突しました。天体と地球の一部が飛び散り、月ができました。月の化学的特徴が地球と似ている点もジャイアント・インパクトの証拠となります。その後、月にも地球にも、マグマオーシャンが再度できました。地球にあった岩石は、すべて飛び散ってり、溶けたりしてなくなりました。マグマオーシャンが固まると、斜長岩と呼ばれる花崗岩の仲間ができます。そこでもジルコンが形成されていたはずです。
 月で、後期重爆撃(late heavy bombardment: LHB)と呼ばれる現象が、43.7億〜42億年前に起こっていることが見つかりました。当然、地球でも起こったと考えられます。衝突した天体は、小惑星帯から木星軌道あたりから由来し、揮発成分を多く含んでいました。月の引力が小さいため、揮発成分は保持されませんでしたが、地球は大きかったため残りました。その結果、地球の初期地殻が破壊され、大気と海洋が形成され、そしてプレートテクトニクスが作用しはじめました。
 このようは出来事の規模を考えていくと、後期重爆撃以降にできた火成岩中のジルコンが、砕屑性ジルコンの原岩となっているはずです。
 冥王代のマントルの温度は高かったと考えられており、マントル対流も激しかったと想定されています。そのため、プレートは現在より小さく数百枚のプレートで覆われていました。多くのプレート境界ができ、多くの沈み込み帯があったと考えられます。プレートテクトニクスが作用しはじめると、海洋プレートが形成され、沈み込みがはじまり、海洋性島弧が形成されます。島弧では花崗岩類のマグマが活動するので、ジルコンが形成されます。
 小さなプレートが多くできると、大規模な沈み込みによる激しい浸食(構造侵食と呼ばれます)が起こってきます。多数の海洋性島弧が形成されるのですが、活発な構造侵食で、海洋性島弧の岩石はできては、浸食されマントルへと消えていきます。
 海洋性島弧では、ジルコンが多数形成され、付加体ができていたはずです。付加体の堆積物中には、島弧由来の砕屑物ジルコンが、多数含まれていたはずではずです。構造侵食が激しく、島弧は次々を消滅していくので、島弧の岩石中のジルコンは残る可能性は低くなりますが、付加体中の堆積物は常に形成されていれば、付加体の堆積物中の砕屑性ジルコンも多数のなので、残存する可能性はより大きくなります。
 多数のプレート境界があれば、沈み込み帯と海洋性島弧の状態だけでなく、島弧同士の衝突なども起こって、もと付加体の堆積物が比較的大きな地質体として残される可能性もあるでしょう。海洋性島弧でできたジルコンが、砕屑性堆積物として多数、多くの地域の多様な地質帯に散らばれば、火成岩の原岩よりはずっと残りすくなるはずです。
 そこから次のようなシナリオが考えられます。付加体中の堆積岩には、43億年前の砕屑性ジルコンが含まれていました。そのような場が他にもいつくかあってのでしょう。その中のひとつの堆積層から、再度約30億年前の西オーストラリアのジャックヒルズ礫岩に砕屑性ジルコンの産地で取り込まれたと考えられます。
 冥王代の岩石は見つからないのに、砕屑性ジルコンだけが見つかるのはなぜか、少々複雑ですが、このようなシナリオを私は想像しています。


Letter■ エアコン・体調不良 

・エアコン・
8月になります。
7月中旬には暑い日がありましたが、
7月末、北海道は大雨で、
各地で洪水がおこしました。
気温はそれほど上がることなく、
今年から自宅で導入したエアコンも
あまり出番がありません。
少し前の夏のようの気候ですが、
最近では、8月になれば、北海道も暑くなり
エアコンも活躍するのでしょうね。

・体調不良・
先週から体調不良で、急遽、
5日間ほど休みました。
自宅では、デスクワークをしないので、
タブレットで校務処理をすることになります。
重要なメール、急ぎのメールへの返信をするのですが
タブレットの入力は慣れないので
時間がかかりミスもします。
自宅で見たメールや返信が
どこかにいってしまいました。
なにか設定がおかしいのでしょうね。


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