地球のつぶやき
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Essay■ 226 修行期間:苦悩と歓喜のループ
Letter ■ 紅葉の盛りに・警戒ステージ2


(2020.11.01)
 研究者になるためには、専門的な訓練を受けます。それぞれの専門性を身につけるためには、それなりの適性が必要な場合があります。適性があれば、大変であっても、そこに楽しみを見いだせます。


Essay■ 226 修行期間:苦悩と歓喜のループ

 前回のエッセイでは、研究者の実態を紹介しました。エッセイのLetterでも書いたのですが、もともと書きたかったテーマの部分へと辿り着くまでに、文章量が多くなったので、前半を切り離してお送りしまた。今回は、後半に当たる、研究者が修行期間に、どうモチベーションを維持するか、という話題をお送りします。
 まずは、研究者への道についてみていきます。ただし、これは一般論なので、他の道も、当然、あります。私も少し変わった道筋もたどりましたが、事例として合わせて紹介していきます。
 研究者になるためには、大学の学部学科を卒業後、大学院へ進みます。修士課程(2〜4年間)から博士課程(3〜6年間)までありますので、それなりの期間、専門的な訓練を受けて、修行をしていく必要があります。
 ここで、修士課程を2〜4年間、博士課程を3〜6年間と書いたのは、それぞれで修士論文や博士論文を提出して、課程を修了することになります。しかし、2年間もしくは3年間で論文が終わらなければ、最長で修士課程で4年、博士課程で6年まで在籍できるという意味です。その間に論文を提出し、審査を通れば、修士号や博士号を課程内で授与されることになります。これを超えると、論文修士や論文博士となり、ハードルも高くなります。
 修士論文あるいは博士論文は、指導の先生が、内容をチェックして、了承されたものを提出することになるので、審査は特別ことがない限り、通ることになるはずです。また、大学によっては、論文提出のための条件を定めているところもあります。例えば、私が博士論文を提出した大学では、公表論文を3篇以上、その内1篇以上が査読論文と英語論文であること、などの条件を設けていました。
 研究者となるための最初の訓練は、大学の学部で専門分野を学ぶ時からはじまります。学部の頃は、だれもがその分野の初学者というべき存在になります。初学者の頃は、専門に関する基礎的な知識から応用までを広く学びながら、データを得たり、処理したりする専門分野に関する技能も同時に身につけていくことになります。
 どんな分野であっても、一定のレベル(一人前になる)に達するためには、それなりの修行期間を経ることになります。修行で、その職種固有の知識や技能を身につけることになります。
 私の場合は、地質学の知識を身につけながら、研究を遂行するための基本的なスキルを訓練をしていきました。地質学的スキルとしては、いろいろなものがあります。例えば、野外調査で岩石や地層を見分けること。露頭の位置を地図上で把握し記録すること。見えない部分の地層の分布を、図学的に推定し地質図を作成していくこと。採取した試料を処理して顕微鏡観察できるように薄片作成にすること。薄片を顕微鏡で鉱物を同定したり組織を識別していくこと。試料を化学分析するために調整し、実際に分析すること。得られた分析データを解析していくこと。などなど、非常に幅広い技能を身につけるとともに、専門知識を活用して、研究の方法を学んできます。
 技能を身につけたとしても、それぞれの作業は、一人前の研究者になってもおこなうことになります。中には、地道な努力を強いるものも多く、苦痛に感じることもあり、それに耐えながら研究を進めていかねればなりません。
 研究を継続していくのは、なかなか大変です。しかし、専門的に学んでいくと、興味を覚え、それを追求していきたくなるという、好奇心が湧いてきます。好奇心は多くの人が持っているし、小学校の教育でも、「興味、関心」などいって、好奇心を持つように教育をおこなっています。マニアやオタクと呼ばれる人が、熱中するのも同じ好奇心からでしょう。好奇心は、だれもが、持っているものです。しかし、本業となってくると、好奇心を維持するのは、なかなか大変です。
 研究の修行時代、好奇心だけでこなすには大変なのですが、それを耐えるための楽しみも見つけられるようになります。労力の末、得られる喜びです。苦労が大きくなるほど、喜びも大きくなります。新知見の発見、新しいアイディアを思いつくこと、論文が書き上がること、投稿が受理されること、いろいろな局面があります。それぞれに、大変さとその先に喜びがあることを見出していきます。大変さと喜びを経験することも、あるいはその経験こそが、修行の重要な目的ではないでしょうか。苦労の先に喜びが期待できないと、現在の苦悩には耐えきれないのです。
 この苦労と成功、それに伴う苦悩と歓喜もあります。苦悩と歓喜の繰り返しループを経ながら、一人前になっていきます。苦悩と歓喜の繰り返しの過程が、研究の道へ「病みつき」を生んでいくのでしょうかね。


Letter■ 紅葉の盛りに・警戒ステージ2 

・紅葉の盛りに・
先日校務で函館にいきました。
前泊だったので、途中の大沼公園を一巡りしました。
紅葉が盛りで、艶やかな木立の中の道で、
大沼を一周してきました。
ただ、残念ながら、小雨の降る中だったので、
のんびりと散策する余裕はありませんでした。
ところが、翌日、晴れの大沼公園を通ることになりました。
帰りを急いだので、晴れの大沼の紅葉は
高速から横目で眺めるだけでした。

・警戒ステージ2・
北海道では新型コロナウイルスの感染者数が増え、
警戒ステージが2とひとつ上がりました。
今後の、推移が心配になります。
今の所、大学では、レベルを上げるまでには
至っていませんので、これまでの授業形態が維持されています。
ただ、これからは寒くなってくるので、
今後も予断が許されません。


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