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Essay ▼ 218 旭岳:自然の変化のスピート
Letter▼ レベルの低下・休刊のお詫び


旭岳の全景(魚眼レンズにて撮影)


旭岳の全景


地獄谷の噴煙(遠景)


地獄谷の噴煙(近景)


地獄谷の噴煙で硫黄が昇華している


大きな火山弾


旭岳の噴煙の全景


旭岳の山頂


山頂からの南裾野の景観


山頂からの登山道と西裾野の景観


山頂からの大雪山の景観


昔の作業道跡


Googleの航空写真でも作業道跡がくっきりと見える


エゾリス


旭岳の山頂のパノラマ画像

(2023.02.15)
 昨年秋に旭岳にいきました。旭岳は、北海道で最も高い山です。旭岳を訪れたのは、2度目です。景観を楽しみましたが、森についた古い道の跡から自然の変化のスピートの違いを感じました。


 昨年の9月中旬に、旭岳を訪れました。旭岳は2度目でした。高山なので紅葉がはじまった頃でした。天気は、時々雲がかかっていましたが、晴れていました。露頭や岩石の観察だけでなく、景観も堪能できました。
最初に旭岳を訪れたのは、家族で2007年に登りました。天気は良い日だったので、登山客も多くなっていました。山頂に着くと、風が強くて、体感温度も低く、あまり長居はできませんでした。しかし、北の大雪山から西の裾野まで大展望を味わうことできました。
2度目の2022年は、コロナ影響で外国人観光客は少なかったのですが、日本人の観光客の方が多くなっていました。観光客の多くは。姿見の池周辺を巡るコースを歩いていました。旭岳山頂を目指す人や、大雪山へと進む登山道を進む人も、それなりにいました。コロナにも馴れて、精神的にも登山楽しめるようになってきたと感じました。
山麓駅からロープウェイで姿見駅まで、高度差500mほどを、一気に登りました。2度目は山頂に登ることなく、石室のある5合目(1665m)付近までいきました。夫婦池から姿見の池の周辺を巡る1.7kmほどの散策コースを歩きました。この周辺は、ところどこにハイマツがあり、高山植物がたくさん生えていました。もう少し登ると森林限界になるところです。
旭岳は、大雪山の一部です。旭岳は、北海道で最も高い標高2291mで、大雪山の南に位置していてます。大雪山は、北海道の中央に位置する巨大な火山で、20個ほどの火山体からなり、10万年前くらいから火山活動をはじめした。
旭岳は、大雪山の火山活動の中で最も新しいもので、現在でも噴煙を上げている活火山です。旭岳は、姿見の池からみると、西側に大きな割れ目ができていますが、もともとは成層火山であったことが思わせる姿をしています。火山活動は、古いものから順に3つのステージに区分されています。
ステージ1(約1-2万年前〜約6500年前)は、大量の溶岩を流すような噴火をして、現在の成層火山の下部をつくりました。大きな斜長石の結晶を含み流理構造をもった安山岩のマグマの活動でした。溶岩は粘性が小さく、15kmに西方に流れ下ったものがあります。柱状節理がみられるところもあります。姿見の池の周辺は、ステージ1の溶岩流からできています。
ステージ2(約6500年前〜約3000年前)では、爆発的な噴火を繰り返して、円錐形のきれいな成層火山ができあがってきました。最終的に、成層火山は、今の旭岳より高かったと推定されています。ステージ2の火山噴出物や溶岩は、山頂付近に分布していますが、今回は頂上にいかなったので、見ることができませんでした。
ステージ3(約3000年前〜現在)では、水蒸気爆発や小さな火口をいくつもつくりました。2800年前の水蒸気爆発で、山体崩壊をおこし西側に爆裂火口の割れ目ができました。山体崩壊によって流れ降った堆積物は、旭岳の西側に広がっています。山体崩壊の跡の火口が、地獄谷火口となって、現在も噴煙を上げています。地獄谷では、火山ガスからミョウバンなどを含む酸性変質帯ができ、噴気孔周辺には昇華した硫黄の結晶も見られます。噴気や硫黄の結晶を、間近で観察することができました。
1940年代初頭、この硫黄が採掘されていた時期がありました。現在の活動からみると、硫黄の昇華する量は大したことがないようみえます。当時は、堆積した分があったのでしょうか。現在の活動からは想像がつきません。もしかすると、有用な物資が少量であっても必要とされていた時代だったのでしょうか。
当時、硫黄を運搬した作業道の跡が、現在も残っていました。その作業道で植生を復活させるためにロープが張られて、入れないようにしてありました。しかし、ハイマツなどの樹木は復元していませんでした。散策道からも作業道跡はよくわかりました。航空写真を見ても、道の跡は火口まではっきりと残っているのがわかりました。
現在の旭岳の高山での植生が、長い時間をかけて成長してきたこと、そして一度植生が失われると、回復に長い時間かかかることがわかる痕跡となっていました。
2007年は、次男と二人で山頂までいきました。当時、次男はまだ7歳でしたが、山頂まで登ることができました。長男と家内は登るのは諦めて、姿見の池で待っていました。次男はまだ小さかったので、登山はかなりきつかったようですが、頑張って登りきました。降りる途中でお腹が空いたといって、おにぎりを食べたら、一気に元気を回復してきました。現在の次男は、まったく見かけも異なり、スポーツもしているので筋肉ムキムキで、体力も有り余っているようです。その分、私の体力は衰えてきていますが。
人の成長や変化は激しく、10年もすると大きく変わっていきます。ところが、人が自然に与えた影響には、なかなか消えないものがあることが、今回の旭岳は教えくれました。自然の営みには、非常にゆっくりとしか変化しないものがあります。そこに大きな変化が起こると、回復には長い時間がかかることに気付かされました。人も含めて自然の変化のスピートは、異なっているのです。

・レベルの低下・
北海道のコロナの管理レベルが1まで下がり
大学も危機管理レベルが1に引き下げられました。
これによってすべての行事が
感染リスクに配慮すれば許可を得ることなく
対面で実施できるようになりました。
当然、来年度のすべて講義は
通常の対面を前提とすることになります。
また春からは感染対策もゆるくなりそうなので、
顔を見ながらの講義が復活しそうです。
残念ながら4月から半年間は
サバティカルで大学から離れるのですが。

・休刊のお詫び・
前回は突然の休刊になってしまい
大変申し訳ありませんでした。
2005年1月に創刊して以来
はじめての休刊となりました。
親族に不幸があり、1月10日に、
急遽、京都に帰省して滞在してたので
原稿を作成することができませんでした。
止む終えない事情なので、ご容赦くださ。
2月末から3月頭にも、京都に帰省しますが、
3月の分は無事発行できるはずです。



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