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Essay ▼ 212 花咲の巨大な車石:作為のない造形
Letter▼ 前期の終わりに・体幹の衰え


霧の景観。


上と同じところの崖。下には堆積岩が、上に溶岩が見える。溶岩の上部には枕状になっているところが見える。


巨大な枕状溶岩、車石の景観。


巨大な枕状溶岩、車石の景観。


岬の先端まで溶岩は続く。


溶岩上部の面。


枕状溶岩の景観。 上に平らな溶岩、下に枕状溶岩がある。手前の枕状溶岩に比べて奥の枕状溶岩が大きい。


遠い方の枕状溶岩の景観。


遠い方の枕状溶岩の拡大写真。


岬の西側(漁港側)からの景観。 下に枕状溶岩の層がある。

板状溶岩の景観。


東側のパノラマ景観。(画像サイズが大きいのでダンロードには注意)

(2022.08.15)
 花咲港の前の岬に車石があります。その露頭は、枕状溶岩からできているのですが、巨大なサイズのものがあり圧倒されます。作為のない自然の造形として、枕状溶岩はできたものですが、なぜか圧倒されてしまいます。

 6月中旬に、道東に調査にいきました。その時、根室まで足を伸ばしました。根室といえば納沙布岬が有名ですが、今回はそこが目的地ではありませんでした。同じ根室市ですが、根室半島の根本で太平洋に面した花咲港です。花咲港は、花咲ガニの水揚げで知られていますが、港の左手の崖(地理的に南東側)を見るのが目的でした。
 そこには1939(昭和14)年に国指定の天然記念物の根室車石(くるまいし)があります。今回、車石を見るために再訪しました。
 学生時代に何度が訪れたのですが、記憶が定かではなく、記録も残っていません。その後、2006年5月に、家族で道東を巡った時、来たことがあります。その時は、霧笛が鳴るような霧が濃い日でした。また、雨風も強い日で、5月なのに寒い日でした。露頭はみることはできましたが、周辺をじっくりと見る余裕はありませんでした。それも16年も前のことです。再度、車石を見るためにいきました。
 車石は、丸い半円の石に、中心から放射状に割れ目ができています。自転車のタイヤとスポークの様子に例えればわかるでしょうか。ただし、車石は割れ目だけで、すべて石でできています。枕状溶岩と呼ばれるものです。
 マグマが海底で噴出したとき、表面が急激に冷え固まります。マグマの量が多く、勢いがあると、岩石の殻を破って中からマグマが海中に流れていきます。練り歯磨きを押し出すように、丸い筒状になってマグマが絞り出されては、固まっていきます。それが繰り返されていくと、噴出孔の周辺に枕状溶岩が重なっていきます。
 マグマの流動性がなくなると、周辺から冷え固まっていきます。マグマが固体になる時、少し体積が減るので割れ目ができます。周辺から冷え固まっていくと、中心に向かう割れ目ができます。最終的に中心から放射状の割れ目ができていきます。これが、枕状溶岩の形の形成と、内の割れ目の形成のメカニズムです。
 枕状溶岩は、このエッセイで各地のものを紹介してきました。花咲でも、他の枕状溶岩と同じように、枕が多数が積み重なった状態になっています。ただし、溶岩の中心にあたる枕状溶岩は巨大です。岬の先端にある枕は、直径が7.5mもあります。このようなサイズのものは、なかなか見かけません。
 これは、形成場とマグマの性質が関係していると考えられます。
 マグマは、白亜紀の堆積した根室層のある時に上昇してきました。上昇してきたマグマは、根室層の中で水平になり貫入しました。水平に貫入したマグマの上下は固まりますが、中にはマグマが残っていました。マグマは押され、貫入が進んで、やがて堆積物の先端から、海水が侵入してきて枕状構造できます。どうも海水中の堆積物の中で枕状溶岩が形成されたようなのです。
 マグマの性質は、アルカリ玄武岩と呼ばれるタイプのものでした。マグマは、揮発性成分が多くなると、粘性が小さくなるという性質があります。粘性の小さいマグマとはサラサラと流れやすくなります。アルカリ玄武岩は、揮発性成分が多くなっているため、流動性の高いマグマになります。そのため、堆積物の中でも、自由に移動していくことができたようです。
 今回訪れた時は、風が少々あり遠くには霧がでていました、岬は晴れていました。青空のもとで枕状溶岩をみることができました。岬の先端から眺めると、東側の海岸には、根室層の地層が連続している上に溶岩が流れ、その中に枕状溶岩が見えます。
 西側の漁港に続く崖は近くに見え、枕状溶岩がよく見えます。通常の溶岩の中に、枕状溶岩が何層か形成されているのが見えます。枕のサイズも場所によって異なっており、1m程度のものが並ぶところ、2mほどのもの並ぶところが見えます。岬の先端は、とりわけ大きな7.5mの枕状溶岩があります。
 枕状溶岩のでき方を知っていても、目の前に広がる巨大な枕を眺めると、圧倒されます。自分の何倍もあるような露頭の岩石にみられる、自然の造形です。放射状の模様の入った丸い石、周辺にも幾重にも連なっています。その形は自然のもので、作為はありませんが、なぜか作為を感じてしまいます。整った形状や多数の類似が、作為のない自然に造形に作為を感じさせるのでしょうか。そこに巨大さも加わるため、圧倒感を感じるでしょうか。花咲は少々特別な枕状溶岩があるところです。


Letter▼ 前期の終わりに・体幹の衰え

・前期の終わりに・
定期試験が終わり、採点評価も終わったと思ったら
多数の追試験者ができました。
コロナによる特別欠席になります。
それがやっと終わったのですが、
追試にも特別欠席が発生しました。
今週末に追々試をおこないます。
来週には前期最後の集中講義があります。
集中講義がおわると、校務出張が2つ、
そしてやっと9月には研究出張になります。
研究出張が夏休みとなるのでしょうか。

・体幹の衰え・
車石は、駐車場、トイレなども整備されていて、
溶岩までも、階段で道が作られ
見学しやすいようになっています。
しっかりとした岩石なので
近づいて観察することもできます。
近づいていきましたが、
その時、でこぼこした石の上で
今まで感じたことのない不安定感を覚えました。
これは、体幹の衰えと思えました。
運動不足でしょう。
体を再度鍛える方法を考えねばと思いました。



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