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Essay ▼ 211 風蓮湖:ラグーンを抱く砂嘴にて
Letter▼ 北海道にも夏が・野生生物との遭遇


春国岱。


走古丹からみた風蓮湖。


5万分の1地形図。


5万分の1地形図で標高表現を40倍に強調したもの。


地形解析の地上開度(40倍)。


地形解析の地下開度(40倍)。


地形解析の傾斜量(40倍)。


風蓮湖の北にある西別川。


オジロワシ。


オジロワシ。


オジロワシ。


オジロワシ。


霧の雄阿寒岳。

(2022.07.15)
 風蓮湖は汽水湖で規模が大きいものです。北海道には、もっと大きなサロマ湖があるのですが、風蓮湖はそのでき方や自然環境に特徴があるので、面白いところです。

 最近、岩石の多様性を形成するさまざまな作用を整理しています。多様性を形成する作用も多様です。そこからもっとも本質的な過程を「素過程」として抽出していこうと考えています。素過程は、多様な過程から抽象していく作業なので、いろいろな現場を見ながら、感じていくことが重要になると思います。
 古い時代の地質学的過程は、古い地層から探るしかありません。新しいものは、活火山や河川、海岸など、現在進行している作用の場を観察することが重要になります。今年は、古い地層だけでなく、新しい活動が起こっている現場へも調査にでかけています。
 6月中旬に道東を訪れました。いくつかの地域を訪れました。知床半島から根室半島にかけての東側の海は、オホーツク海と太平洋をつなぐ根室海峡になります。野付半島や、根室半島の先端の納沙布岬にいくと、北方領土にいかに近くにあるかを実感できます。
 さて、今回は、風蓮湖(ふうれんこ)と春国岱(しゅんくにたい)をじっくりみることにしました。風蓮湖と春国岱は、両方とも道路沿いから見たことはあったのですが、じっくりとはみることはありませんでした。「みる」とはいっても、露頭はないので、平坦な地形や微地形を、周辺の道路を移動しながら、観察していくことになります。風蓮湖と春国岱を紹介しましょう。
 根室半島の付け根のすぐ北側、根室海峡に面して風蓮湖があります。風蓮湖の北側からは、砂州が伸びています。先端の走古丹(はしりこたん)の町までは、砂州の中を道路が走っています。砂州は、町からもうすこし先まで続いています。
 一方、風蓮湖の南側にも、やはり砂州が伸びており、春国岱と呼ばれています。2つの砂州が風蓮湖を塞くようになっています。橋で渡れるようにはなっていますが、春国岱は陸続きではなく、島の状態になっているます。このようなものは、バリアー島と呼ばれています。これらの2つの砂州をつくった砂は、オホーツク海の沿岸流が運んできたものです。
 春国岱は、3000年前から1500年前の間に形成されたもので、長さ8kmにわたって伸びています。島の中には、3列から5列の砂丘が形成されています。標高はせいぜい3mほどしかありませんが、そこに森が形成されています。森から、草原、砂地、そして湿地という、多様な自然がつくられています。風蓮湖は漁業で利用されていますが、周辺の陸地の砂州には、自然の豊かな景観となっています。春国岱はほとんど農耕などに利用されることがなく、手つかずの自然が残されています。
 風蓮湖は、砂州によって海と区切られた海跡湖(ラグーン)となります。水深も浅く、砂州で塞がれているため、海水の出入りが少なくなっています。しかし、風蓮川、別当賀川、ヤウシュベツ川などの河川から淡水の流入があるため、汽水湖となっています。浅く平坦なので、岸近くでは湿地帯となっています。水鳥の多い湿地であるため、2005年にはラムサール条約に登録されています。
 国道44号にある道の駅スワン44ねむろから見ると、対岸に春国岱が見えます。砂丘でできていることは知っているのですが、森があるので砂丘の存在には気づけません。
 春国岱は、17世紀にあった道東太平洋沿岸で巨大地震があり、その時地盤が1〜2m隆起したことがありました。このような地震によるバリアー島の形成過程は、非常に珍しいものです。
 その後、現在までは、年間8.5mmで沈降していることが、GPSの観測からわかっています。海面が上昇しているため、春国岱の森林を構成しているアカエゾマツが、海水につかることで、立ち枯れになってきています。立ち枯れが年々増えているとのことです。もし次に地震による上昇がなければ、春国岱は海没するかもしれません。
 このような景観は、地震による上昇がなくても、やがてはできていたはずだと考えられます。なぜなら、北にある野付半島と尾岱沼の関係をみていると、春国岱の上昇がなくても、やがて砂嘴が伸びるか、春国岱のバリアー島が根室半島側と繋がり、風蓮湖は海とは隔たれていくことになったでしょう。
 ですから、今後も、地層の降下があったとしても、海流による堆積物の流入があるはずなので、ラグーンは維持されていくとでしょう。さらに時間が進むと、堆積物はもっと溜まっていくはずです。しかし、現在の風蓮湖には河川が流入しているので、どこかで海とつながる水路は形成されることになるでしょう。
 風蓮湖の西側から海沿にでる国道244を途中から道道475に入り、走古丹へ向かう道に入りました。そこは海沿いの砂州を走る道ですが、大きな鳥をみかけました。車をとめてカメラのレンズを望遠にして見る、尾が白くなっていました。頭が淡い色にみえました。オジロワシだとわかりました。
 鳥は専門外ですが、特徴的な姿やサイズなのですぐに見分けることができました。そして一旦見分けられると、海岸沿いのあちこちでオジロワシがいるのを発見ができるようになりました。


Letter▼ 北海道にも夏が・野生生物との遭遇

・北海道にも夏が・
北海道でも暑い日が続いていますが、
我が大学でもやっとでしょうか
多くの教室にエアコンが配備されました。
おかげで暑い日でも落ち着いて授業が受けられます。
大学は前期も終盤になってきました。
7月末には定期試験も実施されますが、
エアコンがあるので乗り切れそうです。

・野生生物との遭遇・
北海道で調査をしていると
エゾシカ、キタキツネは当たり前にみることができます。
道東にいけば、かなりの確率で
タンチョウもみることができます。
野鳥や野生生物に特別に興味はないのですが、
はじめてみたオジロワシには感動しました。
一度見つけることができると
次からは、すぐに識別できるようになります。
若い時は野外でヒグマにも3度ほど遭遇していますが、
今では見る機会は少ないですね。



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