もどる


画像をクリックすると大型の画像が見ることができます。
ただし、大きなファイルの場合がありますので注意ください。

Essay ▼ 209 浦河の段丘の桜並木
Letter▼ 人出のゴールデンウィーク・その地を満喫


沖積平野に広がる牧草地と桜。


優駿さくらロード。


優駿さくらロード。


満開の桜。


オバケ桜。


沖積平野。


日高幌別川の5万分の1地形図。


上と同じ範囲の地質図。


上と同じ範囲の傾斜量図。


上と同じ範囲の地上開度図。


上と同じ範囲の地下開度図。


広域の地質図。

(2022.05.15)
 浦河の河川は、日高山脈が形成された時にできた断層沿いを流れています。河川沿いには、河岸段丘ができており、段丘面と沖積平野には牧草地が広がっていました。桜越しに見る牧草地は、心地よい景観でした。

 今年のゴールデンウィークは、2年ぶりに長期の休暇を取りました。浦河に1週間ほど滞在しました。今回は地質調査はしないで、プライベートでのんびりとすることにしました。調査をしないことだけは決めていたのですが、あとは何をするかは決めず、当日の朝や移動しながら考えるような、無計画で過ごしました。
 浦河の周辺には、野外調査で何度も来ているところなので、土地勘もあり、地質も良く知っているところです。そのため、崖をみても、地形をみても、ついついその背景にある大地の歴史と結びつけてしまいます。職業病でしょうか。それも私には自然の楽しみ方のひとつだと思っています。今回のエッセイでは、北海道での春の訪れとともに、地質も紹介していきましょう。
 浦河は、日高山脈の南部の西の裾野に位置していて、日高支庁の中心ともなっています。かつてはJR北海道の日高線が走っていて、交通の便もよかったのですが、今では廃線となりました。日高幌別川沿いには国道236号線があり、日高山脈を超えて、広尾側に通り抜けられる整備されており、快適な道となっています。日高幌別川沿いは西舎(にしちゃ)と呼ばれるところです。
 浦河の周辺には、競走馬の牧場があり、競馬ファンの方には新冠とともに有名な地となっています。宿泊には「うらかわ優駿ビレッジAERU」もあり、観光施設も整っています。
 日高山脈の地質は、このエッセイでも何度か取り上げています。日高山脈は変成岩、カンラン岩、付加体などからなる島弧の地殻がめくれ上がってできたものです。山脈の西側には、中生代の蝦夷(えぞ)層群とその上に中新世の上杵臼(かみきねうす)層と呼ばれる堆積岩があります。この堆積岩分布地域は日高山脈と比べて、穏やかな地形となっています。
 北海道では、日高山脈の北部から中央にかけて、蝦夷層群の西には神居古潭帯が分布しています。ところが、南部になると神居古潭帯の変成岩や蛇紋岩はでていません。日高山脈からは、蝦夷層群から噴火湾へとなっていきます。これは、日高山脈がアポイ岳付近で幌満のカンラン岩として、マントルの岩石がせり上がっていることにも関係があると考えられます。
 日高山脈の西側は、北東ー南西に走る断層が多数あります。断層により、蝦夷層群の堆積岩類の地層がずれています。大きな断層によって、いくつかのブロックとして区分されています。断層のあるところには河川が流れています。日高幌別川も、北の元浦和川も南の様似川も、すべて大きな断層が通っているところにあたります。
 これらの断層沿いの河川では、硬い岩石でできた日高山脈があるため、侵食を受けて土砂が運ばれてきます。蝦夷層群の分布地域は標高も低く、地形も穏やかになっています。堆積岩で軟らかいため、河川による侵食を受けています。河川沿いには、沖積平野ができます。多くの河川沿いで、似た地形が広がっています。日高幌別川も沖積平野が広がっています。
 日高幌別川は、国道から見ると、沖積平野の中に河川の北側にそって崖が形成されているのが見えます。その崖は、林が残されているため、周りの草原の色と比べると、明瞭な色のコントラスができています。崖は、河岸段丘として形成されたものです。河岸段丘とは、河川に侵食されたところが、隆起したり、あるいは海面低下(海退と呼ばれる)が起こることで、再度河川に侵食されて段丘崖が形成されます。段丘崖は急傾斜なので耕作地になることはなく、林が残されます。
 噴火湾沿いは北海道でも雪が少なく、気候も穏やかなとこで、平地は牧草地となっており、新冠や浦河など馬産地として栄えています。日高幌別川の段丘の上にはが、日本中央競馬会(JRA)の日高育成牧場があることで有名です。施設として、冬でも使える室内の1kmの直線の平坦と坂路の馬場、600mの周回の馬場、また屋外の馬場など、多数のコースがある巨大な施設です。
 競馬には興味がなかったのですが、浦河を毎日うろうろしたので、巨大な馬場があることをはじめて知りました。この育成場の道路沿いには、大量の桜が植えられており、「優駿さくらロード」と呼ばれ、春の桜の季節には見事な桜のドームができます。それを見学するため、多くの観光客が訪れます。
 日高地域の桜といえば、静内の二十軒道路の桜並木は非常に有名です。シーズンには国道が渋滞になるほど、多くの人が訪れます。静内は日高自動車道からすぐなので札幌などの道央圏からアクセスしやすいところなっています。
 浦河の桜並木も有名で人出も多いのですが、渋滞になったり、駐車場に困るほどにはなりません。浦河は静内からさらに車で1時間ほど離れているためでしょうか。浦河の桜並木は、見事なのですが、人出が少ない分、落ち着いて見ることができました。
 浦河に滞在していたので、毎日のように桜並木を見いきました。初日は8分咲きでしたが、翌日あたりから満開になり、見事な桜を、連日満喫することできました。一日だけ雨の日がありましたが、それ以外は見学中に雨に降られることはありませんでした。
 育成牧場内の東の山側斜面には、大きな桜の木が一本だけ立っています。脇を流れるオバケ川の名称にちなんで「オバケ桜」と名付けられて有名だそうです。普段は入ることができないのですが、桜の頃にだけは、昨年から一般公開がおこなわれるようになったそうです。ホテルの駐車場から、無料の連絡バスも運行されており見学できます。初日の最初の便でいき、時間をきにせずのんびりと見ることができました。
 斜面からは、オバケ桜とともに、日高幌別川沿いの段丘面と沖積平野に広がる雄大な牧草地を見下ろすことができました。


Letter▼ 人出のゴールデンウィーク・その地を満喫

・人出のゴールデンウィーク・
今年の春は、日本各地でコロナの感染爆発が一段落して、
移動や自粛の規制もおさまりました。
そのため、ゴールデンウィークには、
各地で人出が戻ってきたようです。
私もその人出の一部となっていました。

・その地を満喫・
ひとつのところにじっとしているのは、
その地を満喫できます。
いつもは目的地があるため、
その地にいくことが重要で
経路はあまり重視していませんでした。
しかし、今回のようにしばらく滞在すると、
気に入ったところは何度も訪れることができて
その地を満喫できるのがいいです。



もどる