もどる


画像をクリックすると大型の画像が見ることができます。
ただし、大きなファイルの場合がありますので注意ください。

Essay ▼ 208 倶多楽火山の恵み:軟い石材
Letter▼ 対面授業・近場の温泉


登別軟石の崖。


登別軟石の崖。


登別軟石の崖。


登別軟石の崖の遠景。


登別軟石の崖のパノラマ。 アフンルパロの洞窟の前。


登別軟石の崖のパノラマ。


クッタラ湖を中心にした5万分の1地形図。


上と同じ範囲の地形解析図。地下開度図。


上と同じ範囲の地形解析図。地上度図。 。


上と同じ範囲の地形解析図。傾斜量図。

(2022.04.15)
 登別温泉は、火山がもたらした恵みのひとつです。登別の火山には、他にも石材という恵みももたらしています。溶岩のような硬いものではなく、加工しやすい柔らかい石材です。

 登別へは調査や校務などで何度もいっています。もちろんその度に、時間があれば、温泉に入ります。そして時間があれば、火山噴火地帯や、地質で興味深い景観や露頭見学にも訪れるようにしています。今回は、登別の石材を見学しました。
 倶多楽(くったら)火山は、正式には倶多楽・登別火山群とされており、活火山に指定されています。倶多楽・登別火山群は、玄武岩から流紋岩まで広い組成のマグマが活動して、成層火山を形成し、溶岩ドーム、カルデラなどのさまざまな火山地形も形成しています。しかし、まだ十分研究されていない火山です。
 倶多楽・登別火山群は、8万年前頃から活動を開始して、4万年前に倶多楽カルデラを形成しました。これが現在の倶多楽湖の起源となっています。少々険しいですが、車で入れる道があり、登ると倶多楽湖の湖面にたどりつきます。春から初夏かけて静かな湖面、秋の紅葉の色づいた湖面、いずれも静かに佇む景観を味わうことができます。好きなところです。
 登別の温泉街は、倶多楽湖の西側にあります。温泉街周辺では、今でも噴気は熱水活動が続いています。この活動は、カルデラができた後の「後カルデラ火山」と呼ばれるものです。地獄谷や尾根を越えた大湯沼は、水蒸気噴火による、いくつかの爆裂火口によってできました。大湯沼の北にある日和山は、デイサイトの溶岩ドームで1万5000年前にできました。
 火山活動は、現在も続いており、地獄谷や大湯沼周辺では、8500年間に12回以上の水蒸気噴火があったこともわかってきました。200年前には日和山が噴火し、山体の付近だけですが、火山灰を降らしました。2016年11月には大正地獄での熱水の噴出もありました。古い時代の火山活動歴はまだよくわかっていませんが、現在も活動中の活火山です。
 さて、話題が変わって石材の話です。
 登別には登別軟石と呼ばれる石が採掘されていました。「軟石」とは、文字通り柔らかい石のことです。工業的(JIS規格)には、圧縮強度や比重などの数値で定義されていますが、火山岩などの岩石と比べると、軟らかくなります。主に凝灰岩がその素材となっています。軟石は、強度が弱い石材なので、コンクリートに混ぜる骨材としては用いることができません。しかし、軟らかく加工しやすいので、壁や床や石垣などによく使われています。
 北海道は火山が多いので、各地で軟石が採掘されてきました。札幌、小樽、島牧、松前(福山)、増毛、美瑛、留辺蘂、訓子府、網走、美幌軟石などが利用されてきました。中でも、札幌軟石や小樽軟石が有名で、明治時代の石造建築にはよく使われてきました。
 登別軟石は、クッタラ火山の噴火による火砕流堆積物のうち、火山灰が溶結したものを「登別軟石」と呼んで採石していました。溶結の度合いが比較的強いものもあり、それらは軟石とは区別して中硬石と呼ばれることもあります。
 主に海岸沿いの崖から採掘されています。海岸沿いに崖となって分布しているので、採掘しやすく運搬もしやすいので、便利な採石場でした。登別軟石は、やや淡い赤紫色としているのが特徴です。中硬石なので札幌軟石や小樽軟石より緻密だったので、需要も多かったようです。
 まん延防止重点措置が終わったので、春休みに夫婦で登別にいきました。今年は雪解けが遅いのと、コロナ感染がまだ続いているので、観光地やお店を回ることはしませんでした。夕方にいって、のんびりと温泉に入って、美味しい食事を摂って、朝には帰るようにしました。
 ただし、せっかく来たので、海岸に分布している登別軟石の露頭をみることだけはしました。人気のないはずところです。漁港の行き止まりまで車でいって、そこから歩いて海岸に向かいしました。車を止めたところからずっと、軟石の崖が連続していて壮観でした。
 ところが、海岸を少し歩いていくと、中年の夫婦らしき人が、崖の下にマット敷いてストレッチされていました。少々不思議な感じがしましたが、怪しい人ではなさそうです。アイヌの遺跡の場所を尋ねるために声をかけたら、気軽に教えてくださりました。なにをしているのか不思議でしたが、ストレッチ中だったので、海岸で露頭の見学に向かいしました。
 もどってくると、女性がフリークライミングをされていて、男性はまだ丹念にストレッチをされていました。帰りにも声をかけて、拶だけをして通り過ぎました。登別軟石の崖は、10数メートルほどの高さで切り立ったまま続いているので、いろいろな難易度のものがあるので、フリークライミングにいい場所なのでしょうか。詳しくは知りませんが、登別軟石に別の使い方があるのがわかりました。


Letter▼ 対面授業・近場の温泉

・対面授業・
2年ぶりで対面授業が復活しました。
先週からはじまり1週間がたちました。
2校つづきの大人数での講義が、2日に渡ってあります。
声や体力も、2時間持つかどうか不安でしたが、
なんとか大丈夫そうで、乗り切れそうです。
一つの講義は、新規にはじまったものですが、
スタートが2年前だったので、
遠隔ではじめなければならなくなりました。
少々あせりましたが、仕方なく予定変更となりました。
今年から対面での講義が新たにスタートします。
講義全体でかなり作り直しが必要となるので、
前期は少々忙しくなりそうです。

・近場の温泉・
温泉と食事のためだけにわざわざ登別までと
思われるかもしれませんが、
高速道路を使うと、1時間半ほどでいけます。
冬場は危険なので出かけませんが、
道路の雪さえ溶けてしまえば、
案外近くなので時々でかけることがあります。
札幌近郊には定山渓があるのですが、
街の中を通り抜けるのと、山奥なので
我が家ではいくことはありません。
自宅の周りにいろいろと好みの温泉があります。
登別は、そんな好みの温泉場のひとつです。



もどる