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Essay ▼ 195 赤い丘のマントル:ダナイト
Letter▼ 研究生・ニュージーランド


レッドヒルズの景観。


森林限界を越えているため草が生えてるだけ。


カンラン岩。


カンラン岩の中の層構造。


カンラン岩の中の層構造。


カンラン岩の中の層構造。


カンラン岩中のドレライトの貫入岩。

(2021.03.15)
 今回は、ニュージーランドのダンマウンテン・オフィオライトの紹介です。レッドヒルズとローディン川での調査でした。いずれも、地質学では有名なところです。想い出深い調査でした。

 今回も以前のニュージーランドでの海外調査の紹介です。1987年のことなので詳細はだいぶ忘れていたのですが、当時のメモや資料を保存していたので、思い出すことができました。山や露頭はあまり変わっていないと思いますが、街や道の状況は大きく変わっているはずです。
 この野外調査は、私にとっては2度目の海外渡航でした。ニュージーランドを後輩の友人と二人に行動しました。そして現地で先生と合流して、3名で野外調査をすることにしていました。先生は短期間しか滞在できなかったので、ダンマウンテン・オフィオライト(Dun Mountain ophiolite)と呼ばれる岩石群を中心に野外調査することになっていました。3人での山に入っての調査は、2月27日から3月2日の4日間でした。
 それ以外は、後輩の友人と二人で、モーテルに泊まり、できるだけ自炊しながら、必要に応じてレンタカーで各地で石を見ていきました。2月19日から3月18日の28日間の滞在でした。この時期、日本では冬ですが、南半球は夏で、野外調査にはちょうどよかったのです。
 さて、ダンマウンテン・オフィオライトは、地質学では有名なところです。名前はよく知っていたのですが、どんなところなのかは全く知りませんでした。ダンマウンテン・オフィオライトが見られるのは、ローディン川(Roding River)沿いと、レッドヒルズ(Red Hills)と呼ばれる山岳地帯でした。その両地を短時間でしたが、一通り見て回ることができました。
 ダンマンウンテンが、地質学で有名なのは、カンラン岩の一種であるダナイト(dunite、ダンカンラン岩とも呼ばれている)という岩石名の由来の地になっているからです。カンラン岩とは、主にカンラン石と単斜輝石、斜方輝石の3つの鉱物からできている岩石の総称です。それぞれの鉱物の量比によって、区分され、分類名がつけられています。カンラン石が半分以下のカンラン岩を輝岩と呼び、カンラン石が半分以上のものはレルゾライト(lherzolite)、さらにカンラン石が90%以上ものをダナイトと呼んで区分しています。ダナイトの由来の地が、ダンマウンテンとなっています。
 カンラン岩の重要性は、マントルを構成している岩石と同じであることです。マントルを構成している岩石は、カンラン石のうちレルゾライトが主なものだと考えられています。
 レッドヒルズは、ダナイトからだけでなくは、多様なカンラン岩からできていて、主にレルゾライトからなります。ですから、かつてのマントルを構成していたと考えられます。
 レッドヒルズは、オフィオライトの一部でもあるので、別の意味合いもあるわけです。オフィオライトは、このエッセイでも何度か取り上げていますが、過去の海洋プレートであったと考えられ、海洋マントルとその上の海洋地殻の部分も含まれています。レッドヒルズは、レルゾライトやダナイト、輝岩、あるいは玄武岩質の貫入岩などもみられます。ですから、海洋プレートのマントルの最上部が分布していることになります。その過去の海洋プレートの実態や、形成過程を知るために重要な素材となります。
 ダンマウンテン・オフィオライトが分布は、レッドヒルズだけでなく、ローディン川にもあります。実は、ローディン川も岩石の由来となっています。ロディンジャイト(rodingite、ロディン岩)という岩石の名称になっています。ロディンジャイトは白っぽい岩石で、炭酸塩鉱物をたくさん含み、カンラン岩とは全く違う岩石です。しかし、カンラン岩と関係があります。
 カンラン岩に水が加わることで、変質が起こり、蛇紋岩ができます。蛇紋岩は、カンラン岩より密度も小さく、水分も多い岩石となります。変形しやすく、断層などがあると、上にむかって上昇していくという特徴があります。カンラン岩の分布地帯の周辺で、変形や断裂などの激しいところに、形成されたり、移動してきます。その蛇紋岩の中に、白っぽい岩脈としてロディンジャイトができることがよくあります。カンラン岩や蛇紋岩が水に溶けたカルシウムと反応して炭酸塩鉱物ができます。複雑な関係ですが、ロディンジャイトとカンラン岩は密接な関係があります。
 さて、レッドヒルズは山岳地帯なのですが、山には小さな小屋があったので、そこに3名で泊まりながら、3泊4日の調査をしました。昼間は野外調査で歩き回りカンラン岩の産状をみることができました。山小屋は小さいですが、テントでなかったので、荷物もが少なくなり助かりました。もちろん自炊でしたが。
 レッドヒルズから下りたあとには、ローディン川沿いも調査にいきました。本場のロディンジャイトやダナイトを観察できました。
 もうひとつ印象的なことがありました。1987年は、天文学でもビックイベントがあり、それに立ち会えたことです。友人は、天文観測が趣味で南半球に来て夜に観察するのを楽しみにしていました。レンタカーでラジオをつけていた時、ニュースで超新星爆発があったことを聞きつけました。私は聞き逃していました。それを確かめるために、街にいき望遠鏡を売っている店を見つけて、そこの店員に情報を聞きましました。運良く南半球でしか見えない大マゼラン雲で発生していることがわかりました。レッドヒルズで光の害(光害といいます)が全くないところで、肉眼でみることができました。友人はひどく興奮していました。
 この超新星は、1987Aと呼ばれ、2月23日にカミオカンデでニュートリノを初めて観測しました。ニュートリノ天文学の幕開けの事件となり、スーパーカミオカンデにもつながりました。そんなビックイベントに立ち会えることができたことはよく覚えています。ノートにもその位置を示したスケッチしていました。
 ニュージーランドで各地を見て回ったのですが、のんびりとしているのですが、生活にはイギリスの影響を受けていることが、肌感覚で理解できました。大学院の若い頃の海外調査でしたが、いい経験ができました。


Letter▼ 研究生・ニュージーランド

・研究生・
この調査は、理学博士論文を提出してすぐのことでした。
全学的な学位記授与式に間に合わず、
別日に学長室で授与れました。
まだ大学院生でしたが、
恩師の野外調査に同行させてもらいました。
恩師の調査は短期間だったので
大半は友人とともに、自由に行動していました。
次年度からの職が決まっていなかったので、
大学で研究生として研究を続けることにしていました。
今思えば、研究者として道を歩みだしたばかりの頃の
印象的な海外調査でした。

・ニュージーランド・
私は、この調査以降、ニュージーランドを訪れていません。
しかし、ニュージーランドには、興味はありり
ぜひ、再訪したいと考えています。
子どもたちが二人とも、一月ほどホームスティで
お世話になっています。
思えば、そんな再訪したいところが
世界各地にてきています。
一生かかっても周りきれないですかね。



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