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Essay ▼ 193 サラシクビ層:硬弱と説のせめぎあい
Letter▼ 成人式・エビデンス


さらし首層の地層。


さらし首層の地層。


さらし首層。淘汰の悪い泥岩のなかにさまざまなサイズの砂岩歴がある。


さらし首層。淘汰の悪い泥岩のなかにさまざまなサイズの砂岩歴がある。


GoogleMapによる海岸の様子。巨大なさらし首が見える


さらし首層のパノラマ画像(ファイルが大きので注意下さい)。

(2021.01.15)
 昨年は新型コロナウイルス一色でした。年明けも、コロナの感染爆発でひどい状況になっています。エッセイでもその影響を受けて、野外調査ができず、かつて訪れたところで配信しています。今回もそうなりました。

 2021年のはじまりは、自粛疲れと閉塞感の満ちたものとなりました。関東につづいて関西、中部、九州でも緊急事態宣言が発出されました。多くの人が、ますます外出できない状況に置かれることになります。北海道も札幌を中心に10月下旬からの「集中対策期間」がはじまり、2月まで延長されました。3ヶ月以上に及ぶ不要不急の外出を自粛が強いられています。大学は札幌市内にはないのですが、札幌から通学する学生や通勤する教職員がいるので、コロナ対策は札幌に準じています。後期の授業の終わりまで、遠隔授業が延長されることが、昨年末に通知されました。
 今回もエッセイは、以前訪れた場所となります。ご了承下さい。何度か訪れたことのある南紀の露頭を紹介します。
 和歌山県の串本町田子の海岸にある露頭は、「南紀熊野ジオパーク」のジオサイトにもなっています。地層名には、変わったものがありますが、中でも「さらし首層」というかなり変わった名称の地層が、その海岸にあります。
 海食棚が広がる海岸になっているのですが、そこに大小さまざまなサイズの岩の塊がゴロゴロの海岸に転がっています。ただし、よくみると岩は、陸側から転がってきたものではなさそうです。転がっているものもありますが、地層中に埋め込まれた岩や、地層とつながっているものもあります。下側の柔らかい部分が侵食でなくなり、硬い岩の部分が残っているようです。
 中には、柔らかいところがかろうじて残り細くなり、その上に硬い岩がのっているような産状もあります。下切り取られた首のついた頭が海岸に落ちているような産状にみえます。そこから、「さらし首層」と名付けられました。柔らかい泥岩の中に硬い砂岩が取り込まれている地層だと考えられます。
 さらし首層は、四万十帯南帯に属し、熊野層群の一部で中新世に堆積したものです。さらし首層は、5つに区分され、その中に2つの「サラシ首」の産状をもった地層があります。下は「大サラシ」として150m、間に40mの礫岩層をはさみ、上に「小サラシ」として120mの厚さの地層があります。全体としては、かなりの厚さになっています。
 砂岩と泥岩からできた地層ですが、泥岩の中に、大きさもさまざまな砂岩のブロックが入っています。全体としてはいろいろなサイズの粒子が混じった泥岩(淘汰が悪いといいます)が多くを占めており、泥岩が基質(マトリックスと呼ばれます)となっています。泥岩の中に、砂岩の大小さまざまなサイズのブロックが規則性をもたずに混在しているという産状をもった地層です。通常の地層の構造は持っていません。かといって、断層による変形などを受けた片理も劈開の痕跡もありません。まあ、グチャグチャになって溜まった混沌状態に見えます。そのため、通常の地層とは、全く異なったでき方をしたと推定されます。
 巨大な砂岩のブロックもあります。このような大きな砂岩層が地層の中でできるとすると、もともとかなり厚い砂層があったことになります。ところが、周りは泥が多いので、ますます不思議な産状です。
 グチャグチャの産状の場合、このエッセイでもよく紹介してきましたが、「メランジュ(正確にはテクトニックメランジュ)」というものを。まず考えられます。四万十帯でも、多く地域でメランジュが見つかっています。ところが、通常のメランジュでは、マトリックスの泥岩は淘汰がよく、変形構造ももっています。また、砂岩のブロックも変形作用を受けています。ところがさらし首層では、そのような構造はみられません。ですから、この海岸の産状はメランジュではありません。
 地層中の泥や砂がばらばらになりながらも、砂の塊(ブロック)の産状を残し、圧力がかかることなく(変形組織ができていない)、堆積する条件を考えなければなりません。かなり広い海岸に分布し、厚い地層となっていますので、大規模な現象で形成されなければなりません。
 ジオサイトの案内板によると、成因にはいくつかの説があると断りながら、海底土石流によってできたという説を紹介しています。
 もともと海底の斜面に露出していた、まだ柔らかい状態(未固結といいます)の地層(四万十層群)が、斜面崩壊を起こし、礫(大小さまざまな砂岩)を含んだ土石流となり、比較的平らな海底にたまります。この地層が、たまたま海蝕を受ける位置にいたため、侵食され、現在の状態になったというものです。
 もうひとつは、ダイアピル説と呼ばれるものがあります。地震によって、泥が液状になって吹き出す液状化という現象がよく知られていますが、地下で水分を多く含んだ地層が、振動により水圧が上昇して、液状化して海底に吹き出したという説です。大規模な泥火山もできる現象もあります。泥火山は、熊野沖の海底で多数見つかっています。ですから、熊野の海岸に地層としてあっても問題はなさそうです。
 さらし首層は、どちらの成因かはまた決着を見ていません。最近でも、研究を続けられているので、判明することになるのでしょう。産状も説も混沌としています。


Letter▼ 民族の嘆き・自粛生活

・成人式・
成人式も多くの地域で中止、もしくは延期になりました。
開催したところも、リモートにしているとこが多くありました。
ニュースでは、三密に配慮しながら、
数回にわけておこなったところもあるようです。
わが町でも、5月に延期になりました。
次男は今年が成人式の年だったのですが、
出れなくて残念がっていました。
致し方ないことですが。

・エビデンス・
GoToキャンペーンも停止され、雪まつりも中止、
多くのイベントの開催は、凍結状態が続いてます。
政府は、何が原因かは「エビデンス」がないので
決断をしない「根拠」としていました。
多く国民はGoToトラベルなど
人の移動が原因だと考えていました。
感染爆発が起こっているので
「エビデンス」が少ないのですが、
GoToキャンペーンが中止され、
緊急事態宣言が発出されました。
予防的措置は、迅速を旨とするのでいいことだと思います。
究極的解決はワクチンの接種ですが、
いくつかの国ではじまっています。
日本でも近いうちにはじまるのでしょうが、
庶民に回ってくるのは、まだ先になりそうです。
接種の判断だけは、間違いのない対処を
政府にお願いしたいものですね。



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