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Essay ▼ 74 知床半島:雁行の並び
Letter▼ クルーズ・知床岬


知床半島から千島列島、カムチャツカ半島。900mメッシュを利用


知床半島から千島列島の一部。30mメッシュを利用


知床半島の山並みのパノラマ

((2019.06.15)
 露頭や地形を見に知床半島にいきました。今回の重要な目的として、船から、半島の先端までの海岸の観察することでした。でも、思いは、海岸から千島列島にまで広がっていました。


 旅が好きな人には、行きたいと思っていても行けてない場所が、多数あるかと思います。時間をかけてじっくりと見てみたいと思っている場所も、多数あるはずです。私も、地元の北海道に、じっくりと見たいところが何箇所かあります。日本海にあるいくつかの離島もそうなのですが、交通の便もよく観光地ともなっている場所でも、行っていないところもあります。そこは、遠くてある程度時間をかけていく必要がある知床半島の周辺です。
 道東には何度もいっているのですが、知床半島には、近くまでいっていたのですが、十分な時間をかけて、じっくりと見たいと思っているうちに、何年もたっていました。そこで今回、知床半島をじっくりと見たいと思い、調査に訪れました。一番の目的は、半島の地形や露頭を見ることです。半島の先端の知床岬までみたかったのですが、道路はないのと、世界遺産でもあるので、観光船でクルーズとしていくしかありません。今回、ウトロからのクルーズを予約していました。
 今回予約したのは、海岸に近づけるそうなので小型船で予約しました。ただし、天気次第で欠航になることもあるとのことでした。幸い、今回は出港できた見学することができました。ただし、曇がかかっていたので、半島の山並みは見れなかったのですが、海岸はしっかりと見えました。
 知床半島と千島列島にかけて、不思議な地形があります。
 知床半島から千島列島、カムチャッカ半島まで、火山の連なった山並みからでてきます。このような火山はすべて、千島ーカムチャッカ海溝で太平洋プレートが沈み込んでいて、それに沿って島弧の火山ができています。道東でも、代表的なものでも、阿寒、屈斜路(くっしゃろ)、摩周(ましゅう)、斜里岳、海別岳、遠音別(おんねべつ)岳、羅臼(かざん)岳、知床硫黄岳、知床岳と火山が連なっています。
 さらに面白いことに、島の並びには特徴があります。知床半島から千島列島のウルップ島あたりまで、半島や島の地形と並びが、雁行(がんこう)状に連なっています。雁行状とは、雁(かり、がん)が飛んでいる時の様子を意味していて、「杉」のつくり「彡」の形に並んでいることです。島の並びは、火山の並びでもあります。
 通常の沈み込み帯では、海溝に並行して火山が分布し島弧となっています。ところが知床から千島にかけては、その並びが雁行しています。その理由は、太平洋プレートが海溝に斜めに沈み込んでいるためです。海洋プレートの斜め沈み込みで、圧縮方向が斜めになっています。すると、圧縮だけでなく、横ずれの力もかかっていくことになります。知床周辺では、右横ずれの力がかかっています。右横ずれとは、太平洋プレートから見ると、陸側が右にずれていくことです。そのために雁行状に火山ができたと考えられています。雁行状は、知床半島、国後島、択捉島あたりが、非常にきれいに並んでみえます。教科書的な雁行だとされています。
 ところが、択捉島より先にいくと、雁行状の配列が、不明瞭になって、海溝の並行になっていきます。これは、海溝が弧状に曲がっているため、沈み込む方向が直行するようになるため、圧縮の力だけで、横ずれの力が働かなくなるためです。
 海溝や火山の並び、火山列島などは弧状になっていることが多くなっています。なぜでしょうか。地球は多数のプレートで覆われており、活発な活動はプレート境界で起こります。プレート境界、海嶺は直線的ですが、海溝や島弧はほとんどが弧状になっています。それは、地球が球体であるため、プレートは球面上での運動となり、球体の大円や小円として現れます。海嶺は深くにあるマグマの上昇によるため大円に近くなり、海溝や島弧は表層の運動に基づく小円になるため弧状になるためです。海嶺では海洋プレートが形成されているため、その運動や力のベクトルは直線的ですので、弧状の海溝では斜めの力がかかるところができます。それが知床の付近の雁行配列を生み出しています。船上から、そんな大地形と火山の成因に思いを馳せながら眺めていました。
 クルーズでは、雲がかかっていたため知床の火山の山並みに見ることはできませんでした。しかし、火山がつくったさまざまな地形、火山岩の産状などもみることもできました。また、幸いなことに前日に、雲の切れ間から主だった山を見ることができました。
 今回は知床半島の一部しか、訪れることができませんでした。ですから、近い内に再訪したいと考えています。知床半島内には、他にもいろいろめずらしい地質現象があり、観光地にもなっているところも多数あり訪れたいものです。それは別の機会にしましょう。


Letter▼ クルーズ・知床岬

・クルーズ・
今回のクルーズは小型船でしたが、
幸い海はまったく荒れることなく、
落ち着いて地形を眺めることができました。
小さ船ですが、船の屋上の屋外に座席があり、
そこから景色を眺めることができました。
一番いい席を確保して、見ることができ
大量の写真も撮ることもできました。
露頭や地形を見ることが目的でしたが、
他の観光客はヒグマを見ることが
大きな目的としていました。
幸い2頭のヒグマを見ることができました。
ドトも見ることができました。
行きは崖や岸によりながらなので
船はゆっくりと進むのですが、
帰りはまっすぐ帰るので
屋上の席は風が当たり、非常に寒くなります。
かなり着込んでいたのですが、それでも寒かったです。
多くの人は船内に戻っていったのですが、
私は最後まで外で頑張って半島を眺めていました。
3時間以上船に乗っていたので、
船を降りて方も寒さと陸が揺れていて困りました。

・知床岬・
これまで知床半島の先端の知床岬に
興味をもっていました。
それは、非常にきれいな海岸段丘が
広がっている草原が目についていたためです。
そこは、一般の人は入ることはできません。
これまで映像や写真でしか見ることができませんでした。
しかし、今回、知床岬の段丘を
船からですが、見ることができました。
感動しました。



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