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Essay ▼ 155 鬼ヶ城:自然の造形
Letter▼ 出張・学ぶ姿勢


鬼ヶ城の流紋岩質軽石凝灰岩。


鬼ヶ城の入り口。


鬼ヶ城の海蝕洞が大きな広間のようになっている。


鬼ヶ城の海蝕洞。


鬼ヶ城の遊歩道。


鬼ヶ城の遊歩道。


鬼ヶ城の遊歩道。


鬼ヶ城の何段かの段差ができている。


風蝕による不思議な模様。


風蝕による不思議な模様。


泊まったホテルの下の柱状節理をもった熊野酸性火成岩類。

(2017.11.15)
 三重県の海岸沿いに、鬼ヶ城と呼ばれているところがあります。非常に不思議な景観をもったところでした。岩石の性質と、自然の営みによって奇岩が生み出されました。私がこの地の素晴らしさに気づいたのは今回の旅でした。

 以前、三重の海岸沿いを走る国道42号線は、何度か通ったことがあるのですが、この場所は素通りしていました。観光地であるのは、地図を見てわかっていたのですが、その地の名称は、よくあるものだし、多分、ごつごつした岩があるのだけなのだろうな、思っていました。今回、近くのホテルに泊まることになったので、夕方、まだ明るかったので、見学することにしました。そこは、予想以上にすごい景観が広がっていました。そして、自然の造形の偉大さに驚かされました。
 鬼ヶ城は、三重県熊野市木本町の海岸にある断崖に付けられた名称です。調べるてみると、1935年(昭和10年)には国の天然記念物「熊野の鬼ケ城」として指定され、1958年(昭和33年)には名勝になり、2004年にはユネスコの世界遺産の一部にもなっています。古くから観光地として知られていた地のようです。地図にも観光地として名称は出ているのは知っていたのですが、私がその凄さを知らなかっただけです。
 鬼ヶ城と呼ばれているのは、もちろんそれにふさわしい景観があるからです。全長1.2kmにわたって続く断崖沿いの道を歩くことで、素晴らしさ、奇異さ、規模などを体験できました。今は、観光用に散策コースにはすべての段差には階段が切られ、危なそうなところには手すりが付けられているので、安全に散策し、見学することができます。しかし、長い道のりと、場所によっては、かなり怖い道もあるので、全部を歩ききる人は少ないようです。特に、私が訪れたは夕方だったので、人はより少なかったです。時間がかかりましたが、往復しました。少々疲れましたが、景観を堪能できました。
 岩石は、流紋岩質軽石凝灰岩で、もともとは灰色ぽい地の色に、白い軽石が多数含まれています。凝灰岩は、1400万年前頃の熊野酸性火成岩類の活動に伴うものとされています。
 熊野酸性火成岩類は、熊野灘沿いに大きく2つの岩体に分かれています。南は熊野川に沿った岩体で、北は標高1045mの高峰山から海岸までの岩体です。海岸では、複雑な海岸線をもって露出しています。両岩体の間や周囲には、デイサイトから流紋岩質の火山砕屑岩が分布しています。火成岩に比べると、凝灰岩ですから、侵食には弱いはずなのですが、山を形成しているので、侵食にはある程度の強度を持っているのでしょうか。
 海の近くにある火成岩類の端に凝灰岩が海岸沿い分布しているところに、鬼ヶ島があります。凝灰岩は、海岸沿いの侵食に弱いようです。それでも断崖を形成しているのは、断崖を維持する作用が働いているからのようです。それは上昇する力でしょう。
 この地は、フィリピン海プレートが沈み込んで付加体が形成されている最前線です。付加体の前線では、海洋プレートと島弧プレートが押し合っているところで、島弧側の地層が持ち上げられています。このような作用は、日本列島(島弧)の海岸沿いでは、特徴的な地質の営みとなっています。鬼ヶ城でも、島弧の地質の営みが、繰り広げられています。そんな島弧を代表するところですから、熊野酸性火成岩類の他にも、付加体の構成岩が、さまざまな時代の岩石や地層が混在しているこが、地質図をみるとよくわかります。
 急な断崖は高さ2〜4mの段差になっており、6段あるそうです。それぞれの段は、地震によって隆起した地形だと考えられています。このような地震は、プレートの衝突によって起こる付加作用で隆起する力が働くことで引き起こされています。鬼ヶ城の不思議な地形の原動力は、付加作用に起因しているのです。
 鬼ヶ城は、凝灰岩が海岸沿いの侵食を受けています。そのため風食や波蝕の侵食地形、浸食模様の多様なものが見れます。階段状の各所には、海食台や海蝕洞が穿たれています。入口は、鬼ヶ城の名にふさわしい海食洞があります。海蝕洞はなかなか見事で、奥行きも広く、鬼が住まいとしていてもおかしくない規模です。
 坂上田村麻呂がこの地を荒らし廻っていた海賊・多娥丸(たがまる)を征伐したという伝説がるそうです。多娥丸は鬼として恐れられていたそうです。先人もここに住まいを持っていたかもしれません。そんな想像を沸き立てます。古くから、この地の奇岩と壮大さが知られていたのでしょう。それは、風蝕で洞の壁に、いろいろな模様が刻まれているためでもあったのでしょうか。
 遊歩道沿は奇岩の中を延々と続きますが、歩いていても飽きることがありません。風蝕が景観にさらに奇異さを付け加えています。凝灰岩は、もともと灰色の岩石ですが、風化すると黄土色から茶色になります。風化作用による色の奇異さも付け加わっています。
 島弧で繰り広げられた火成作用と付加作用、そこに自然の侵食や風化の営みが加わることで、鬼ヶ城の景観がつくられたことになります。
 地質図を見ると、私がとまったホテルは海岸の断崖の上にありましたが、火成岩のあるところのようです。しかし、その崖は、柱状節理の発達しています。熊野酸性火成岩類のようです。岩石が違っているためでしょうか、地形や景観はかなり違ったものになっています。


Letter▼ 出張・学ぶ姿勢

・出張・
このマガジンに発行される時は、
1泊2日の出張にでかけています。
校務ので出張なので、少々気疲れがしますが。
このマガジンは予約して発行をしています。
道中、北海道の北で峠を越えることになります。
週末が大荒れでしたので、道路が凍結していたり、
積雪にならないかが心配です。
スタットレスタイヤにしていますが、
はじめての冬道は慣れないので疲れます。

・学ぶ姿勢・
大学は後期の講義を半分終えました。
大学は、推薦入試の時期になってきました。
今では推薦入試もいろいろなタイプがあり、
多様な入試方法で高校生が受験できます。
どんな入試で入ってこようが、
最後は、大学生として、何か目標をもって
学ぶ姿勢が重要になると思います。



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