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Essay ▼ 131 別府温泉:地獄の彩り
Letter▼ 宣伝・空飛ぶ浮世絵師 


龍巻地獄。


血の池地獄。


かまど地獄。


かまど地獄。


白池地獄。


鬼山地獄。


山地獄。


海地獄。


海地獄。


鬼石坊主地獄。


別府周辺の5万分の1地形図。


上の同じ範囲のLadsat衛星画像。


上の同じ範囲の地下開度図。南側の断層がきれいに見える。


上の同じ範囲の地上開度図。別府の西にある火山の形がよく見える。


上の同じ範囲の傾斜量図。別府市内の扇状地地形がよく見える。

(2015.11.15)
 大分は温泉県で、中でも別府温泉は、温泉の数も湯量も多いところです。別府温泉の鉄輪温泉にある「地獄めぐり」というものを体験しました。そこには予想以上に、色鮮やかで、多様な地獄が、広がっていました。


 別府は何度か訪れています。一番最初は高校の修学旅行で九州の北部を周った時に、別府港から神戸港へとを復路に使った記憶があります。その時が別府に立ち寄った最初の記憶です。次は、鹿児島で学会があったときと、家族で九州旅行でいったとき、観光で立ち寄った記憶があります。
 今年の秋、野外調査の初日は大分空港からレンタカーで宮崎方面に向かった時、行きは別府の街を通り過ぎましたが、帰る前日、大分に宿泊することになっていました。その日の夕方、早目に別府に着きました。午前中降っていた雨もなんとか上がり、少し時間があったので、地獄めぐりをすることにしました。地獄めぐりには、以前来た記憶があるのですが、その様子は全く残っていないので定かではありません。もしかすると、記憶違いで、はじめてなのかもしれません。地獄めぐりは新鮮でした。
 大分県は温泉が多数あり、源泉の数は4411個、湧出量は毎分28万5553リットルとなっており、いずれも全国第1位を誇っています(2014年3月末現在)。さらに大分県の中でも別府市は、源泉が2294個、湧出量も毎分8万7067リットルで、県内でも一番の数と量を誇っています。
 日本列島で温泉が出るところの多くは、水の豊富な火山地帯となっています。火山が温泉の熱源になっているからです。別府周辺は第四紀を通じて火山活動が盛んでした。190万年前には観海寺安山岩質マグマが流れ、その後浜脇で地層がたまります(浜脇層)、60万年前には由布川火砕流が流れ、40万から50万年前には南の乙原や小鹿山・雨乞岳・北の鹿鳴越に分布する輝石安山岩質のマグマが噴火します。30万年前には高崎山や実相寺山の火山が噴火しています
 現在も、別府温泉の西側にも鶴見岳(標高1375m)とその北には伽藍岳(1045m、硫黄山とも呼ばれる)は活動していて、活火山になっています。近くにある由布岳も活火山になっています。
 鶴見岳から火山灰を出すような噴出が起きたことはわかっているのですが、正確な年代は不明です。鶴見岳山頂の北側に噴気孔があり、現在も噴火活動が続いています。記録に残っている西暦867年に起こった水蒸気爆発が、伽藍岳の火山によるものだと考えられています。また、山頂部の火口内で、1995年に泥火山ができ、現在でも活発な火山活動が続いています。
 由布岳では、約2200年前に大きな噴火活動がおこっています。この噴火では山体崩壊が起こり、池代溶岩ドームができ、北東側から西側の山麓に向かって火砕流が流れました。その後、山頂に溶岩が現れ、南側に火砕流が流れました。この噴火中やその後も継続的に、由布岳火山灰と呼ばれるものも噴出しているのでが、記録に残っている噴火活動は知られていません。
 これらの火山から東の別府湾にむかって流れた噴火の噴出物が、緩やかな傾斜をもって堆積しています。二つの火山が連なる山並みから、東側に別府湾に向かって2つの河川があり、それらが扇状地を形成しています。その扇状地が別府市の街の土台となっています。
 扇状地の南側と北側には山地があります。つまり、扇状地があるのところはくぼんでいるのです。南北の山地と扇状地の境界は断層となっています。北側には鉄輪(かんなわ)断層があります。南側は、西北西−南南東に伸びる朝見川断層があります。
 九州の地質は、大分県別府市から熊本県の島原まで東西にのびる断層が区切られた巨大なくぼちがあります。このくぼちは、広くとらえた場合は別府−島原地溝、別府周辺だけで使うときは九重ー別府地溝と呼ばれています。別府の南北の断層は、この地溝をつくる断層の一部となっています。
 地溝内には、大小さまざまな規模の火山があり、別府付近では南北5kmにわたり溶岩ドーム群が連なっています。これらのいくつかが、上記の活火山になっています。別府のすぐ近くに温泉の熱源となるマグマが来ているのです。扇状地は、地下を伏流水が流れているところです。特に断層付近は水の通り道になりやすくなります。その水を温めるための熱源もあります。別府は、多数の温泉ができる条件を満たしているのです。
 南北2つの断層付近には、4つずつ温泉地帯があります。合わせて別府八湯と呼ばれています。別府温泉、浜脇温泉、観海寺温泉、堀田温泉、明礬温泉、鉄輪温泉、柴石温泉、亀川温泉の8つで、その中には自噴しているものが多数あるのですが、温泉の成分や噴出の様式が、多様なタイプの温泉がみることができます。
 なかでも別府の北のほうにある鉄輪温泉では、タイプの違う自噴温泉が近隣でみることができ、そのルートが「地獄めぐり」として有名です。自噴している様子が、地獄を彷彿とさせることから、地獄と呼ばれているのでしょう。海地獄、鬼石坊主地獄、山地獄、かまど地、鬼山地獄、白池地獄、血の池地獄、龍巻地獄の7つがあります。それぞれの地獄を見学するのに入場券が必要ですが、共通券があるので、まとめて回るときは便利です。駐車場も完備されているので、車でも徒歩でも見て回ることできます。足湯や温泉施設もあったりするので、地獄めぐりで一日を過ごすことも可能でしょう。
 「地獄めぐり」では、7箇所の自噴している温泉群を見て回ることになります。温泉の噴出に様式も、岩から吹き出したり(山地獄)、泥から吹き出したり(鬼石坊主地獄)、間欠的に吹き上がったり(龍巻地獄)、多様です。また、温泉の色も、白(白池地獄)、赤(血の池地獄)、水色(海地獄)などがあったり、いろいろな不思議な色のものが一箇所でみれたり(かまど地獄)します。地獄ごとに、温泉の色がこんなにも多様で、噴出の形態もこんなにいろいろと違いがあることに驚かされます。
 私は、急ぎ足で一気に見て回りました。少々もったいない気がしましたが、温泉の撮影をすることが目的でしたので、陽のある内まわろうと急ぎました。地獄めぐりは、その鮮やかな彩どりによって、飽きずに見て回ることができます。機会があれば、今度はゆっくりと彩りを愛でながら、楽しい地獄めぐりをしたいものです。


Letter▼ 宣伝・空飛ぶ浮世絵師

・宣伝・
別府は観光都市として、全国的に有名ですが、
最初に広めたのは、
油屋熊八(1863.8.29-1935.3.24)でした。
熊八は、温泉マークの使用や
「山は富士 海は瀬戸内 湯は別府」
というコピーを用いて広めました。
今では、別府八湯温泉泊覧会(オンパク)として、
別府八湯のうち88湯に入浴して
名人の認定を目指するというイベントもあります。
いい資源をもっていたとしても、
それをアピールする必要があります。
いつの時代でも、どの分野でも
宣伝が重要なのですね。

・空飛ぶ浮世絵師・
吉田初三郎(はつさぶろう)は、
大正から昭和の画家です。
画家というより絵師といったほうがいいでしょう。
吉田の一番の特徴は鳥瞰図です。
「空飛ぶ浮世絵師」とも呼ばれていました。
3000点以上の鳥瞰図を作成しています。
別府温泉の鳥瞰図もあります。
油屋熊八は、吉田の鳥瞰図を用いて
別府温泉を日本中にPRしました。



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