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Essay ▼ 115 牟岐:人知れないトンボロ
Letter▼ 論文・忙しい夏に


牟岐の松ヶ磯。トンボロで波がきている状態。


牟岐の松ヶ磯。トンボロでr陸続きになっている状態。


牟岐の松ヶ磯。トンボロでr陸続きになっている状態。


牟岐の松ヶ磯。海食台の四万十層群。


牟岐の松ヶ磯。剪断された泥岩の中に砂岩の褶曲した地層がある。


牟岐の松ヶ磯。剪断された泥岩。


牟岐の松ヶ磯。互層の様子がかろうじて残っているところ。


牟岐の松ヶ磯。おじさんと孫がトンボロを渡る。


牟岐の松ヶ磯のトンボロの航空写真。


牟岐の松ヶ磯のトンボロの航空写真。


牟岐の松ヶ磯のトンボロの航空写真。

(2014.07.15)
  牟岐の海岸には、子どもたちが海遊びするのに適した海岸や磯、島、そして山もあります。それを利用して子どもに野外体験をする施設もあります。そんな牟岐の海岸に人知れずトンボロ現象が潜んでいました。さて、この現象は、一時的なものなのでしょうか。それとも、あまりに小規模すぎるものなのでしょか。


Essay ▼ 115 牟岐:人知れないトンボロ

 徳島県の国道55号より太平洋岸沿いを通る県道147号は、南阿波サンラインと呼ばれ、なかなか心地よい道路です。徳島県から高知県にかけての海岸は、室戸阿南海岸国定公園に指定されていて、徳島県海部郡牟岐(むぎ)町は海と山での野外活動の拠点として重要な位置にあります。
  牟岐町灘の東で、南阿波サンラインからはずれて海に向かうと、「徳島県立牟岐少年自然の家」という施設があります。その施設のすぐ前の海側には「モラスコむぎ」があります。
  「モラスコむぎ」林業木材を進行するための事業で建てられた施設で、巻貝と二枚貝を形どったデザインです。二枚貝の方が水族館になっており、巻き貝の方が事務室やダイビング施設になっています。建物からすぐ前の海にでることができます。ダイビングもできるようなっています。「モラスコむぎ」の水族館は、以前来た時見学したので、今回は寄らずに、海岸にでました。
  「モラスコむぎ」から海にでると、海岸を挟んで、少し先に島があります。松ヶ磯と呼ばれています。この磯を見に来ました。
  本エッセイでも何度も取り上げていますが、徳島県の太平洋側には、四万十層群と呼ばれる地層が分布しています。四万十層群は付加体という仕組みでできたものです。海洋プレートが南海トラフに沈み込むとき、陸側のプレートは押されて、さまざまな地質現象を起こします。陸側の地層の圧縮と変形、海側のプレートの上部の剥ぎ取りなどが起こり、それらが混在して陸側に付加していきます。それが付加体というものになり、日本列島の地質の重要なメカニズムになっています。
  陸側の地層は、タービダイトでできています。タービダイトは、陸から河川によって河口付近の海底に運ばれた堆積物が、地震や洪水などを契機に、海底地すべりで、海溝に向かって大陸斜面を流れ下ります。タービダイトにより、砂岩から泥岩までの一枚の地層ができます。長い時間でみると、大陸斜面の平らなところや海底の盆地には、次々とタービダイトがきて、砂岩泥岩の地層が重なっていきます。それが砂岩泥岩の繰り返しの地層となり「互層(ごうそう)」とよばれます。
  付加体には陸側のものと海側のものが混在することになりますが、海側の岩石は、層状のチャートや石灰岩、玄武岩などで、陸の互層とは容易に区分できます。
  付加体の中には、陸側の地層だけをとってみて、整然と残っているところから、乱れてて激しく褶曲しているところ、断層などでズタズタに切られているところ、海洋プレートからの岩石と混在してコチャゴチャになっているところなど、見かけは大きく変化していきます。いずれも付加という作用でできます。
  牟岐の松ヶ磯は、海食台になっていて、平らな海岸で地層を見ることができます。海岸で地層を観察することにしましょう。ここには、海洋プレート側の岩石はなく、陸側のタービダイトの地層だけがでています。
  もともとは砂岩と泥岩の互層のはずのですが、今では、岩石の種類は見分けられますが、構造は激しく破砕されています。弱い泥岩には小さな断層(剪断(せんだん)といいます)が一杯できています。比較的強い砂岩も、地層が曲がりくねったり、壊されて切れ切れになっています。これは、付加体の中で互層がかなり壊されている部分です。
  この松ヶ磯は、潮が満ちているときは海の中の島になり、潮が引くと陸続きになります。私が訪れた時は、潮が満ちつつある時間帯で、砂洲の上を波がかぶっていました。砂洲の両側から波が満ちてきて、不思議な波模様になっていました。
  私は、そんな波を見ながら、渡るのを躊躇しました。松ヶ磯の海食台の一番遠くのとこには、釣り人がいたのですが、彼ら釣り人は、地元のことをよく知っていて、潮が満ちてきても、次に引き潮の時間までじっくり釣りをしているかもしれません。あてにはできません。もし渡ってから満潮になってしまい、濡れないと戻れなくなると嫌なので、渡るのを躊躇していました。
  小さな孫を連れたおじいさんが、海岸に遊びに来ていました。孫とおじいさんは、最初は海岸沿いで遊んでいたのですが、波の合間をぬって私の目の前で、松ヶ磯に渡りました。そして松ヶ磯の海食台で遊んでいました。
  これを見て、私も安心して渡ることにしました。海食台にはタイドプールがいくつもあり、磯遊びするにはうってつけのところのようです。もちろん私は地層をみたのですが。
  島が、潮の満引きよって、陸につながったり島になったりするのは、トンボロ(tombolo)現象といい、日本語では陸繋砂州(りくけいさす)と呼ばれています。いくつかの地理的条件を満たした時、トンボロ現象が起こります。ただし、時間とともに砂が多くなれば、トンボロは陸繋島となり、砂が減れば普通の島になります。ですから、一時的な地形の特徴でもあります。
  いろいろ調べたのですが、松ヶ磯のトンボロ現象について説明しているものがどこにも見つかりませんでした。もっと探せば見つかるのかもしれませんが、時間切れとなりました。国土地理院の技術資料の「日本の典型地形」にも、徳島では、宍喰(ししくい)のトンボロは記載されているのですが、牟岐には特徴的な地形はありませんでした。もしかすると最近、トンボロになったのかもしれませんが、それはあまり考えられません。
  松ヶ磯は、多分、磯と呼ばれているように、丘のようになってい森が茂っていますが、島という大きさもないほど小さいため、島ではなく、岩礁とみなされているでしょうか。しかし、地形区分の定義の上では、トンボロと呼んでいいと思うですが・・・。
  小規模で距離が近いので、松ヶ磯にはすぐに渡れて危険がありません。このトンボロも楽しい磯遊びの場になるような気がします。磯遊びのついでに、地層もみれればいいのですが、ここは典型的な互層の地層ではなく、乱れた地層の観察になります。でも、剪断された砂岩泥岩の互層をみて、付加体からプレート運動に思いを馳せるのは、マニアックすぎるでしょうかね。


Letter★ 論文・忙しい夏に

・論文・
北海道も夏らいしい暑い日が続きます。
私は、7月になてってから、論文作成のために四苦八苦していました。
今回の論文にも手こずりました。
でも、以前から漠然と考えていた考察を
まとめることができました。
現段階で考えられる内容をまとめました。
少々課題が残りましたが、
それは次の論文のネタになるはずです。
私のテーマは、3、4つの互いに関連はしているのですが、
毛色の違う研究を平行してい進めています。
このエッセイを書いているときは、
まだ最後の詰めの段階ですが
エッセイが届く頃には出来上がって
手放していることと思っています。

・忙しい夏に・
いよいよ世間は夏休みが近いようで
浮かれている人もいるのではないでしょうか。
大学は、8月上旬まで定期試験があり、
私は、ある学会の副実行委員長を仰せつかっているので、
その後、数日はバタバタします。
そしてお盆明けには大学の成績提出です。
8月下旬には入試と保護者のために
地方を毎週週末に出張します。
その隙間をぬって、1週間ほどの調査にでます。
それを楽しみに夏を過ごすことになりそうです。
9月から10月にかけては、
教育実習の指導のいくつか入ります。
今年も忙しい夏になりそうです。




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