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Essay ★ 56 賀老の滝:カムイの森の静寂
Letter★ 海の幸・私の夏休み


賀老の滝のパノラマ合成写真。Zommifyを使用して拡大画像を表示しています。


狩場山周辺の地形図。


狩場山周辺の地形解析の傾斜量の図。


狩場山周辺の地形解析の地下開度の図。


狩場山周辺の地形解析の地上開度の図。


狩場山周辺のLandsat衛星の画像。


狩場山周辺の10mメッシュによる鳥瞰図。


狩場山のふもと、黒松内町のブナ林。


海岸沿いの火山砕屑岩と海蝕台。


火山砕屑岩の岩質差による差別浸食でできた窓岩。


島牧村江ノ島海岸。きれいな円摩された礫がきれいな海岸。日本の渚100選に選定されいる海岸。


ドラゴンウォーター。


ブナ林のヒグマの爪あと。


狩場山はヒグマの住む森なのです。

(2009.08.15)
  道南にある島牧村は、人口2000名弱の小さいの村です。面積はそれなりにあるのですが、人は海岸沿いに点々とある集落で暮らしています。そんな島牧村の山に、古い火山をみに行きました。人気のない、ひっそりとしたブナ林に見え隠れする、太古の火山活動の名残を垣間見しました。

Essay ★ 56 賀老の滝:カムイの森の静寂

 今年の夏は、8月1日から4日まで、道南に家族旅行にで出かけました。今回の旅行は、大学の前期の授業の終わりと、定期試験の隙間を縫って出かけました。そのために、3泊4日の短い旅行となりました。そのため、あちこちを巡るのではなく、目的の地域をじっくりと見て回ることにしました。
  今回は、黒松内町と島牧村を巡ることにしました。メインは島牧村でした。私は狩場山に登って火山を見ること、子どもたちは海で遊ぶことを目的にしていました。
  エルニーニョの影響でしょうか、北海道の夏は湿度が高く、曇りが続く空模様でした。まるで梅雨のように蒸し暑く、過ごしにくい天候の中での旅行となりました。旅行中も、厚い雲がかかり、雨が降ったり、合間に晴れ間がでるような、変わりやすい天気でした。そのため、予定通りにスケジュールを進めることができませんでした。私は、狩場山に登るというのが目的だったのですが、それが中止となりました。少々、不満の残る旅となりました。無理をして登山しても、天気が悪い時に登るのは、眺望も得られないであろうし、事故の元ともなるので、この判断は間違っていないと思いますが、未練は残っています。
  狩場山は、標高が1520mもあり、道南では最高峰となります。今回は、狩場山を登ることも、遠くから遠望することも、雲がかかっていたためにできませんでした。それでも、狩場山の奥懐にあたる賀老の滝周辺の公園は、半日かけて巡ることができました。
  狩場山周辺は、あまり開発がされていないので、自然が残されています。狩場山の裾野には、北限のブナの原生林が広がっています。ブナの原生林は、100平方kmほどあります。原始の自然が残っているために、食物連鎖の頂点に達しているヒグマも、このあたりにはまだたくさんいます。このあたり一帯は、狩場・茂津多(もったつ)道立自然公園に指定されています。
  日本列島の火山は、「火山フロント」と呼ばれる、線状に並ぶ火山列として活動しています。この火山列は海溝と並行に分布しています。北海道の道南では、恵山、駒ケ岳、有珠山、クッタラ、樽前山、恵庭岳などが、火山フロントにあたります。
  火山フロントに火山がたくさんありますが、それより大陸側(現在は日本海がありますが、古くにはなく大陸にくっついていました)にも、数は減りますが分布しています。狩場山は、火山フロントの列からはずれ、大陸側(背弧側と呼びます)の西に離れた位置で活動しています。
  列島の火山は、フロントから離れるにしたがって、マグマの性質が変わってくることが知られています。
  日本列島は、島弧に特徴的なマグマ(カルクアルカリ岩と呼ばれる)が主として活動しています。しかし、火山フロント側では、安山岩(輝石を含む)からデイサイトの火山岩で、アルカリの少ないマグマ(低アルカリ・ソレアイト)を伴います。火山フロントから離れると、安山岩から流紋岩(角閃石と黒雲母を含む)の火山岩が増えていき、アルミニウムに富むマグマ(高アルミナ・マグマ)を伴います。また、フロントから背弧に向かって、アルカリ(特にカリウム)が増えたり、ストロンチウムの成分変化(同位体組成)したりするのが、帯状に配列しているのわかっています。
  狩場山の火山も、背弧側に位置していますから、フロントとは違った性質のマグマからできています。火山岩も、玄武岩からデイサイトまで多様なものがみられますが、角閃石や黒雲母を含んでいるのが特徴となります。
  狩場山で、今まで測定された5つの火山岩の年代は、79万から25万年前ものでした。測定された岩石は、すべて更新世に活動したものです。ですから、第四紀に属する新しい火山になります。でも、歴史時代に活動した記録がなく、現在、火山活動をしていないので、活火山には分類されていません。
  狩場山の火山岩の下部(基盤といいます)や周辺には、狩場山の火山活動より古い安山岩類と堆積岩類が分布しています。安山岩類は、鮮新世の活動した、長磯安山岩類やガロ川火山岩類(440万年前の年代が出ています)に区分されています。堆積岩類は、中新世に形成された馬場川層、メップ沢層や小川峠層、、突符火山岩類、マス川層(1500万と1700万年前の年代)などに区分されています。
  賀老の滝付近では、狩場山の溶岩が、マス川層に区分される流紋岩類を覆っているのが確認されています。そして、滝は、柱状節理がよく発達した溶岩の上から、落差70mを幅35mで一気に落ちます。たまたま、賀老の滝を見ているときに、日差しがあったので、明るい状態で撮影することができました。その勇壮な滝は、轟音を発しているのですが、なぜか静けさを感じます。それは、人の痕跡がないためでしょうか。それとも、原始の森に囲まれているためでしょうか。
  滝の水音、滝によっ生まれる風の流れ、冷たい水の流れ、真夏の晴れ間にもかかわらず、涼しさをもたらしてくれました。しかし、梅雨のような蒸し暑さの中、30分近くかけて登たなければならない帰り道では、汗をいっぱいかいてしまいました。
  狩場山は活火山ではありませんが、火山岩の分布地帯でもありますので、温泉がいくつもあります。賀老の滝の少し上流にあるドラゴンウォーターとよばれるものもその一つです。
  賀老の滝には、龍神伝説があり、別名「飛竜」とも呼ばれています。ドラゴンウォーターは、龍神の御神水とされ、流紋岩の割れ目からちょろちょろと湧き出しています。ドラゴンウォーターは、町の案内のパンフレットにもでているので行ってみたのですが、小さな場所で、これがそうかというほどの大きさでした。賀老の滝の雄大さと比べると、あまりに小規模なものです。
  しかし、その湧き水は、非常に珍しい炭酸水の温泉で、飲んでみる価値はあります。鉄分も多いためサビぽくて、あまりおいしくありませんが、飲むと炭酸のためにやや酸味があり、発泡感はありました。残念ながら、入浴できるほどの湯量はなく、一口味わうだけしかできないような規模です。でも、よくも、これの炭酸泉を見つけたものだと思えるほど、規模が小さいのですが、口にしてはじめて、そのありがたさを感じるものです。
  賀老の滝周辺は、夏休みの真っ最中のキャンプ地として環境も整備されている観光地なので、多くの人が来ているかなと思っていました。しかし、月曜日で、雨も降ったりしていたためでしょうか、ほとんど人はいませんでした。海岸沿いでは多数のテントを見かけたのですが、この森でキャンプをしている人はいませんでした。それでも散策をしている数組のグループには会いました。広い駐車場にもかかわらず、2、3台の車が止まっているだけでした。
  ひっそりとした森の静けさを味わいながら、狩場火山のふもとを巡ることができました。しかし、そこはヒグマの出没するところでもあります。ヒグマはアイヌ語でカムイと呼ばれます。カムイとは神と同じ意味です。ここ狩場の森は、龍やヒグマなどの神の領域でもあることを忘れてはいけません。


Letter★ 海の幸・私の夏休み

・海の幸・
蒸し暑い中を歩くのは疲れます。
しかし、子どもたちは海岸に連れて行くと、
今までの疲れも忘れて嬉々として遊んでいます。
我が家は海から遠いところなので、
海や水辺の遊びがあまりできません。
たまに子どもたちを連れて行くと、
時間を忘れて遊びます。
それに今回は、潮の引いた岩場に連れて行けたので、
いろいろ珍しい生き物を見ることができたので、
大喜びでした。
今回はアメフラシをはじめてみたので大喜びでした。
私は、民宿ででてきたイカ飯がうまかったのが喜びでした。
イカ飯は、太平洋側の長万部が有名ですが、
イカは日本海が本場です。
新鮮なイカそうめんにイカ飯など、イカ尽くしが
非常においしく、食べ残した子どもの分まで食べてしまいました。

・私の夏休み・
北海道の小学校は、来週から2学期が始まります。
私は、まだ前期の校務の真っ最中です。
先週は定期試験、今週は卒業研究指導があり、
来週には、前期の採点作業が待っています。
私の夏休みは、その後からとなります。
9月になると、調査で各地に出歩きます。
ですから、家族でそろってすごせる夏休みが
なかなかとれなくなりました。
今回の道南の旅も、その数少ないチャンスでした。
8月下旬になって、やっとのんびりとした日々が過ごせそうです。
まあでも、やりたくでできない研究をしたり、
調査中にしておくべき業務をするために、
研究室に出かけるのですが。


「この地図の作成に当たっては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図200000(地図画像)、
数値地図50000(地図画像)、
数値地図25000(地図画像)、
数値地図250mメッシュ(標高)、
数値地図50mメッシュ(標高)、
数値地図10mメッシュ(火山標高)及び
基盤地図情報を使用した。
(承認番号 平21業使、第53号)」

解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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