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講 義■ Lec 2006年春の特別講義(その1)
掲示板■ 受講者がいるから・第一歩 


 この春の特別講義は、Sさんから頂いたメールと、それについての私の返事のメールで2回にわたって構成してお送りします。まずは、以前の講義で私が犯した間違いの修正をします。


▼ 講義ファイル
Lec2006Sp1の講義ファイル(講義時間 16:07)
ブロードバンド用(ファイルサイズ 3.9MB)
Lec2006Sp1.pcletter
ISDN用(ファイルサイズ 2.0MB)
Lec2006Sp1s.pcletter


講 義■ Lec 2006年春の特別講義(その1)

▼訂正1:スターバーストとは
 私の前の講義で、「一生をすぐに終えた天体は、爆発します。その爆発によって、物質が周辺に飛ばされます。このような爆発をスターバーストと呼びます」と説明しました。
 それに対して、Sさんから、このような「スターバースト」の使い方は、間違いであるという指摘を受けました。
 私は、英語でバースト(burst)とは、「破裂する、爆発する」という意味がありますので、星が爆発することと単純に考えていました。しかし、住所を見ると「突然現われる」という意味もバーストにはあります。知りませんでした。
 天文学でバーストは、「爆発的星生成」という意味で使われる術語で、多数の超新星爆発を意味すのではないということでした。私も、スターバーストという術語が、銀河同士の衝突や、銀河の中心での多数の大質量の星が作られることに使われていることを知っていましたが、宇宙の創生期にも使われている例を見た気がしたので、記憶違いか、今では使われない用法だったようです。Sさんによれば、そのような使われ方は、現在していないということでした。
 大質量星の爆発的星生成のスターバーストは、実際に観測されていますので、事実としていいわけです。いってみれば、実際に起こっている天文現象の名称としてスターバーストがあります。一方、宇宙の創成期に多数の星ができて死んでいくということを示す言葉はありません。そもそも、まだ観測されていない天体であり現象ですので、仮説に過ぎないからでもあります。

▼訂正2:宇宙創生の最初の天体
 宇宙創生の最初の天体について、まったく名称がないかというと一つあります。それは、「種族IIIの星」というものです。この「種族IIIの星」とは、どのような天体でしょうか。まったく根拠もなく出てきた説でもありません。それなりの理由があったのです。
 「種族IIIの星」とは、宇宙の創生にあったはずの水素とヘリウムだけでできている星です。種族IIIの星は、宇宙で第1世代の星で、重い元素を持たない、非常に大きく、太陽の数百倍の質量を持ち、高温で、寿命が短かったと考えられています。
 このような観測もされない天体が、仮説として出てきたのには、わけがあります。その理由は次のようなものです。

・星の[重元素/水素]比は、すべて10^-4以上で、10^-5以下のものは見つかっていない
 ここで重元素とは、ヘリウムより重いすべての元素をあわせたもののことです。宇宙の誕生時には水素とヘリウムしができなかったのですから、現在観測される星に、重い元素があるということは、宇宙の誕生の観測される天体の間に、重い元素を合成する作用がおこったことを示しています。

・クエーサーのスペクトルに重元素が見られる
 クエーサーとは、現在、観測されている中でもっとも古い天体の一種です。その星に重い元素があったということは、それより以前に重い元素を合成する作用が起こったことを示しています。

・宇宙初期に宇宙全体が再電離されている
 この電離とは、宇宙の存在する元素がイオンの状態になっているということです。このような電離は、種族IIIの超新星爆発の恒星風による加熱によって起こった可能性があります

・宇宙背景放射の近赤外領域(2μm)付近の強いスペクトル
 赤方偏移の大きいところでの現象が近赤外領域に現れやすく、そこに強いスペクトルがあるということは、宇宙の初期に激しい活動があったことをしています。

 これらの観測されている現象や証拠を説明するために、種族IIIの星が考えられました。
 そのようなプロセスにしても、宇宙の初期には、重元素の合成が必要ですから、それに類することが起こったはずです。現在の考えでは、元素合成は、何らかの天体の内部、もしくはその天体の超新星爆発によって起こります。ですから、宇宙の初期に、「スターバースト的」に種族IIIの星が発生した可能性は高いと考えられます。そして、現在、多くの天文学者も、そのように考えています。
 問題は、種族IIIの星が観測できるかどうかです。そして、観測できたとしたら、いつ、どの程度の質量の天体で、どのようなスピードで一生を送ったかなどが、次の問題となるでしょう。


掲示板■ 受講者がいるから・第一歩  

・受講者がいるから・
Sさんは、イギリスの大学で研究されている天文学者です。
Sさんは、「Terraの科学」のPart1の時から
いろいろ教えていただいています。
そしてPart1の時も、Sさんとのやり取りから
夏に特別講義を組んだことがあります。
今回も、Sさんのやり取りを利用させていただいて、
春の特別講義にしました。
残念ながら、今回は、私のミスが題材になっています。
でも、ころんでもただでは起きない姿勢も重要でしょう。
今回のやり取りをこのメールマガジンを通じて、
いろいろな方とつながっていることを感じました。
講義ですから、相手がいないことには成り立ちません。
受講者がいるからこそ、講義は成立している思います。
そしてその講義の受講者が、質問すること、議論すること、
新しい情報を提供すること、間違いを指摘すること、
そんなやり取りがあれば、より講義は充実していくことでしょう。

・第一歩・
わが大学の卒業式も、昨日終わりました。
1000名ほどの卒業生を送り出しました。
次回の講義をお送りする頃には、
いよいよ、新しい年度を迎えます。
この時期、移動される方もたくさんおられると思います。
学校にいると特に春の移動の季節を強く感じます。
しかし、大学の3年生は、
来年の春を目指して、2月から大学で行われている
会社説明会に参加している学生がたくさんいます。
彼らはもちろんスーツ姿です。
彼らにはもう次の年の目標に向かっているのです。
私はとりあえずは、4月からの新学科への配置転換と
そこでの講義で頭が一杯です。
私立大学としては、50名ほどの小さな学科ですが、
小学校教員養成を目的として設立されたものです。
そこのスタッフとしてこれから教育や研究にかかわります。
そんな第一歩が4月かた私には始まります。


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