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講 義■  Lec 015(その2)相互作用:階層間のかかわり
掲示板■ あと2つ・科学研究費


 階層間のかかわりとして地球の大気の変化を見ます。まずは、地球の最初の大気はどのようなものであったかを見ていきます。


▼ 講義ファイル
・Lec015_2の講義ファイル(講義時間 25:04)
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ISDN用(ファイルサイズ 3.1MB)
倍速用(ファイルサイズ 10.7MB)


講 義■ Lec 015(その2)相互作用:階層間のかかわり

▼ 生命と地球の相互作用の証拠
1 原始大気のモデル
  生命と地球の相互作用を考えていきます。まずは、地球が持っていたもともとの大気は、どのようなものかについて考えていきます。
  太陽系の形成史から考えると、太陽系形成のころは、太陽系全体が分子雲とよばれる宇宙に一番ありふれたガスの成分が、惑星ができる空間にあったと考えられます。その大気は、水素(H2)とヘリウム(He)を主成分とするガスです。H2とHe、そして少量のCH4(メタン)というのは、分子雲の成分でもあり、太陽組成原始大気(一次大気、原始太陽系星雲ガス)と呼ばれています。
  このような大気が、最初の太陽系の大気、そして地球の大気でもあったと考えるのを、原始大気のモデルと呼んでいます。
  H2もCH4も、還元的な性質をもつガスで、このようなガスのもとでは、酸化物はできにくく、酸化物が還元されていくと考えられます。
  このモデルは、
・観測されている他の天体の惑星形成場に、このようなガスが充満しているのが観察される
・木星や土星、天王星、海王星の大気がこのような大気である
などの証拠があるため、説得力があります。
  しかし、このモデルには問題もあります。太陽を考えると、誕生の初期に、激しく活動する時期があり、このような大気は吹き飛ばされることになります。それは、太陽系の惑星空間全体から、原始大気が吹き飛ばされることになります。
  地球の大気は、吹き飛ばされたのか、木星や土星の大気のよう惑星の引力でとどまったのかは、はっきりとはわかっていません。

2 衝突脱ガスモデル
  原始大気のモデルの対して、衝突脱ガスというモデルがあります。対抗するわけではなく、単に別の考えで提案されたものです。
  ある種の隕石(コンドライト)が、惑星の素材となりました。隕石が惑星に集まるとき、衝突をします。衝突地点では、高温高圧の状態になります。すると隕石の中に含まれているガスの成分(揮発成分)が、気体となって出てきます。それが地球の原始の大気となったという考えです。
  隕石には、CO2、N2、H2Oを主とする成分が含まれています。このような成分が隕石衝突時にガスとして放出され、原始の大気となったと考えられます。
  この考えは、先ほどの原始大気のモデルとは大きく違う点があります。それは、出てくるガスが酸化的なものであるという点です。
  衝突脱ガスのモデルにも根拠があります。
・地球を作った素材になる隕石のデータ
・惑星の大気の比較データ
などから、可能性があると考えられています。
  しかし、実際の両隣の惑星の大気を比べると、金星と火星は衝突脱ガスのモデル似ているのですが、地球だけが違ってます。

表 惑星の大気組成
    金星   火星
圧力 92MPa   700Pa
CO2  96.4%  95.32%
N2  3.4%   2.7%
H2O  0.14%   0〜0.03ppm
Ar  18.6ppm  1.6%
O2  69ppm   0.13%

3 原始大気の変遷
  では、上の2つのモデルはどちらが正しい出のでしょうか。次のような考えで、2つのモデルが融合されています。
  太陽組成原始大気がもともとありました。しかし、太陽の初期に活動が活発になり、太陽に近い小さい惑星の大気は吹き飛ばされてしまいました。大気をなくした惑星は、衝突脱ガスがおこり、原始の大気をつくったと考えられます。
  以上のようなシナリオにすると、地球の原始大気は、CO2、N2、H2Oを主とする成分であったことになります。このような大気は、現在のN2とO2を主成分とする大気とは違っていたことになります。
  その変遷を相互作用という目で見ていきます。


掲示板■ あと2つ・科学研究費  

・あと2つ・
このメールマガジンとWEBのPCレターによる講座は
2005年10月29日に第一号を発行しています。
ですから、丸1年がたったわけです。
当初の計画では、半年、もしくは4ヶ月ほどで終了するつもりでした。
しかし、一つの講義を3回から4回に分けて配信し始めたのと、
いくつか新しい講義や特別講義を加えたので
予定を大幅に伸びていきました。
講義の予定はあと2つを残すのみとなりました。
ですから、今年一杯には終わる予定です。
いよいよ終わりが見えてきました。
あと少しですから、がんばりましょう。
ホームページは、メールマガジンが終了後も残すつもりですので、
あわてず、ゆっくりの学んでください。

・科学研究費・
毎年秋のこの季節になると、
文部科学省の科学研究費の申請のために
頭をひねっています。
残念ながら、この大学に来てから一度も採択されていません。
研究テーマとしては自信を持って申請しているのですが、
博物館時代から培ってきた蓄積の上で考えた
研究テーマであったような気がします。
今回は、まったくそれを白紙に戻し、
私がこの大学で5年ほどの間に
おこなってきたものを基礎として、
その延長線で研究テーマを設定しました。
これからやっていきたいものが中心となっています。
これまでの申請は、今までの蓄積にしがみついていたため
採択されなかったのかもしれません。
それをゼロにして新しく自分が生み出したもので
再挑戦しようと考えています。
さて、上手くその必要性が申請書類に表現されているでしょうか。
そしてそれが採択されるか、心配です。
心配していても、はじまりません。
私としては、精一杯、申請書を書くのみです。


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