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講 義■ Lec 013 (その3) 記録:過去を調べる
掲示板■ 没頭できた時・運動会


 今回は、実際に過去を調べるために使われている技術を紹介します。


▼ 講義ファイル
・Lec013_3の講義ファイル(講義時間 16:39)
ブロードバンド用(ファイルサイズ 4.1MB)
ISDN用(ファイルサイズ 2.1MB)


講 義■ Lec 013 (その3) 記録:過去を調べる

▼ 過去の記録を読み取る技術
  大地に残された過去の記録を読み取る方法として、
・地層
・化石
・化学成分
を使うものがあります。それらを、少しくわしくみていきましょう。

1 地層をつかう
  ひとつの地層を、追跡していけば、同一の時間を追いかけることになります。そのようなものを同一時間面といいます。一枚の地層をずっと追跡すれば、同一時間面を忠実に追いかけることができ、空間的な広がりへとなります。
  同じ地層を、どこまでも追跡するのは、なかなか困難なことです。そこで重要なるのが、鍵層(かぎそう)と呼ばれるものです。
  それは、多数の地層中でも、特徴があり、他のものと違うとすぐに区別できるような地層です。多数の地層から、唯一これだけと特定できる地層があれば、途中で地層が見えなくても、同一時間面を見出すことができます。
  鍵層の例として、火山灰があります。
  火山が、ある時、噴火します。そのとき放出された火山灰(テフラ)は、広い範囲に飛ばされます。九州で噴火したものが、北海道の地層の中から何層も見つかっています。もし、その火山灰が火山の噴火の記録と照らし合わせれれば、何年何月何日何時という時間を知ることができます。このような火山灰のようなものが、あれば確実に同一時間面が確定できます。広い範囲に飛ばされた火山灰を、「広域テフラ」と呼ばれています。

2 化石をつかう
  過去の生物が、化石として産出すると、その生物が生きていた時代がわかれば、その地層のできた時代を決めることができます。
  化石で、時代を決めるのに有効なのは、
・ある時代にだけに生きていたもの
・非常に広く分布しいたもの
・多く生息していたもの
です。
  広い地域にたくさん生きていた生物は、化石になる可能性が高くなります。そして広い地域の地層からも、たくさん見つかることになります。このような化石であれば、同一時間面を知る上で役に立ちます。このような化石を、示準(しじゅん)化石といいます。化石によって決めた年代を、相対年代といいます。
  最初に化石を用いて、地層の時代を決定したのは、イギリスのウイリアム・スミスという人です。「地層同定の法則」と呼ばれています。「地層同定の法則」とは、時代の指標となるような化石が、2つの地層から出たなら、それらの地層が同時にできたことを示すという考え方です。
  現在では、鍵層と示準化石を用いて、同一時間の連続を追いかける方法が確立されています。そして、地層を、広い範囲におこなう対比ができるようになってきました。

3 化学成分をつかう
  化学組成で、年代測定に利用するのは、放射性同位体とよばれるものです。その原理は、難しいものではありません。
  放射能を持っている元素(核種といいます)は、ある一定のスピードで壊れます。そのスピードは、地球上のどのような条件でも変わりません。ですからその性質を時計として利用します。壊れるスピードは、親核種が半分になる時間(半減期と呼びます)で表します。
  もともとあった核種(親核種)から、壊れて核種(娘核種)ができます。親核種と娘核種の量を正確に測定すれば、半減期から経過した時間が調べることができます。放射性核種を利用した年代決定を、絶対年代測定といいます。
  放射性元素を用いる年代測定には、
・親核種と娘核種の比をもちいる
・宇宙線によりできた核種を利用する
という2つの方法があります。
  親核種と娘核種の比をもちいる年代測定として、40K(半減期12.5億年)、87Rb(488億年)、238U(44.7億年)、235U(7.04億年)、232Th(140億年)、147Sm(1060億年)、176Lu(357億年)、138La(987億年)、187Re(423億年)などがあります。
  宇宙線によりできた核種を利用する年代測定として、14C(半減期5730年)、10Be(151万年)、26Al(71.6万年)、53Mn(370万年)、129I(1570万年)、81Kr(21.3万年)などがあります。
  年代測定に必要な情報として、
・崩壊のスピード
・親や娘核種の量もしくは存在比
があります。
  崩壊のスピードは、すでに正確に調べられています。ですから、親核種や娘核種の量もしくは比を知ることが重要となります。得られる年代の精度は、比率の測定の正確さによっています。正確さは、
・充分な測定技術があるかどうか
・その測定技術に見合った核種を含む試料があるかどうか
によって決ます。


掲示板■ 没頭できた時・運動会  

・没頭できた時・
今回は、実際に過去を調べる方法を紹介しました。
私は、以前、地質調査で得た試料から
より情報を引きだすめに年代測定を用いていました。
最初は人が確立した方法を用いて年代測定をしていました。
しかし、その後自分で独自に年代測定の方法を確立するという研究を
大学院卒業後の研究生時代におこなっていました。
U−Pb、U-Thによる年代測定です。
年代だけでなく、調べている岩石が
最初にどのような組成を持っていたかで、
地球深部の状態やマグマの素性を調べるのに
重要な情報を提供するものです。
その開発が完成した段階で、仕事が見つかり
年代測定は後輩たちに引き継ぎました。
ですから、このような年代測定の内容を書いているときは、
当時、わき目もふらず研究に没頭していた時代が懐かしく思い出されます。
今思っても、あんなに没頭できた時期はありませんでした。
いまでは、疲れた中年の没頭しきれない
研究者となってしまっているような気がします。

・運動会・
北海道はいよいよ秋めいてきました。
気づいたらもう9月も半ばです。
運動会のシーズンです。
次男の幼稚園では敬老の日に運動会が催されます。
天気が心配ですが、こればかりはどうしようもありません。
狭い園庭で100組以上の家族が集まり、
ぎゅうぎゅう詰めでの見学になります。
これで長男から次男の5年に渡る幼稚園との付き合いも
今年が最期となります。
ですから、すべてのイベントが見納めでとなります。
記録もしっかり残してあげましょう。


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