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講 義■ Lec 010(その3) 見えないもの:見えないものを見る方法
掲示板■ パラドクス・祭り 


 「この世」には、見えないものが一杯あります。そんな見えないものを見ようとする試みから、いろいろなことが考えることができます。その例としてETIについて考えていきましょう。これは科学者たちが取り組んだ壮大なる思考実験であります。


▼ 講義ファイル
Lec010_3の講義ファイル(講義時間 22:47)
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ISDN用(ファイルサイズ 2.8MB)


講 義■ Lec 010(その3) 見えないもの:見えないものを見る方法

▼ ETIの探査に対する考え方
1 用語について
 まず、思考実験をはじめる前に、いくつか用語を整理していおきましょう。
 以前「ET」という映画があリ、有名になりました。ETとは、Extra-Terrestrialの頭文字をとったものです。Extraとは「外」という意味で、Terrestrialは「地球の」という意味です。ですから、ETとは「地球外の」ということになります。これだけでは、なんのことか分かりません。
 正確にはETI(Extra-Terrestrial Intelligence)と呼ばれています。Intelligenceとは、「知性」あるいは「知性体」という意味です。ですから、ETIとは、「地球外知性体」あるいは「地球外知的生命」などと訳されています。これは、地球以外に誕生した知性をもつ生物のことになります。地球人を除くということを強調したいいかたとなっています。
 UFOという言葉もよく聞きます。UFOとは、Unidentified Flying Objectと頭文字をとったもので、もともとの意味は「航空管制上、飛行体が認識、同定されていないもの」ということです。「未確認飛行物体」と呼ばれています。飛行物体で、何者かがわからないとUFOとなり、分からない限りUFOでありつづけることになります。
 UFOのなかには、気象現象、誤認なども、たくさん含まれているはずです。その中には、地球外からきなにかも含まれるかもしれませんが、確実なものは今のところありません。UFOをETIの乗物という意味で使われていますが、もしETIの乗物と認識されたなら、それはもはやUFOではないのです。
 現在、UFOは混乱した使われ方をしています。ですから、UFOという用語は、この講義では使わないことにします。
 CETIという言葉があります。これは、Communication for Extra-Terrestrial Intelligenceの頭文字で、ETIとコミュニケーションしようという意味です。研究者が、ETIと交信する計画を立てて実験したものです。しかし、現在はもうされていません。なぜなら、交信できるほど近くに、ETIはいそうにもないからです。また、交信するためには返事が得られるという前提ですが、そのようなコミュニケーションができるかすらわからないのに、情報発信するのは効率が悪いからです。
 CETIのかわりに、現在ではSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)というものが行われています。これは、ETIを探す計画です。ETIがいるという証拠を探すのは、効率的で有効です。遠くの星を探す時、人工的な電波の有無を調べれば、そこにETIがいるかどうかが確認できるからです。現在のETI探しは、SETIというやり方になっています。

2 なぜ探査するか
 そもそもなぜETIを探査するのでしょうか。それは、未知なるものへの好奇心でなないでしょうか。そして、ETIを探すという観測をすることや、ETIや探査について深く考えることによって、実は地球生命のことを、よりよく知ることになります。それは最終的に、地球の知的生命の可能性をより高めることになるはずです。

3 いくつかの重要な条件
 SETIをするとき、あるいはETIについて考えるとき、Fact A(ハートが1975年に提案したものです)というものがあります。それは、「ETIが地球に飛来したことはない」という事実を前提にしようというものです。ここからETIの考えがスタートします。
 もうひとつ重要な条件があります。カルダショフが宇宙文明を技術(テクノロジー)によって、いくつかに分けることを提案しました。高度な技術は、エネルギーを多く使用します。その使用エネルギー量に基づいて文明を区分することができというのが、カルダショフの提案です。
 カルダショフは、I型、II型、III型の3つの文明に分けました。I型文明は一つの惑星上で利用できるエネルギーを使う文明、II型文明は惑星が属している恒星が出しているエネルギーを使う文明、III型文明は銀河全体のエネルギーを使いこなす文明となります。現在の地球は、I型文明の中ほどにいるのでしょう。
 さて、一般的に文明とは、どのように発展していくのでしょうか。人類の今までの歴史を見ていくと、答えの可能性が見つかります。ひとつの国で、鎖国が続いたのは、数百年程度です。ですから、鎖国状態で長く文明を維持するのは難しそうです。
 つまり、長い年月の後には、文明は破滅するか、発展するかのいづれかになりそうです。人類の文明を見ていくと、滅亡した文明はいくつもありますが、それは他の文明があるがために、滅亡したことが多く、どれかの文明は残っています。それが次なる発展を遂げるのです。
 このような人類の歴史を参考にすると、文明とは選ばれたどれかが発展を続けるものである、と考えられます。その考えを、一般的にテクノロジー文明に適用するなら、I型→II型→III型へと進んでいくはずです。ですから、やはく知性をもった生命体は、きっとIII型文明へと達しているはずです。

4 Fermi のパラドックス
 Fact Aとテクノロジー文明は発展するという条件を考えると、不思議なこと、あるいはパラドックス(矛盾)が生じます。
 人類の歴史から類推すると、知的生命はやがて生まれた天体の外へも拡散していくはずです。知的生命体のどれかは、III型文明まで発展しているはずです。しかし、Fact Aとして、ETIとの接触やETIの文明の痕跡が観測されていません。これはパラドクスです。フェルミのパラドックスと呼ばれています。フェルミは、かくれんぼ遊びにたとえて"Where is everybody?"(皆どこにいるんだい)といいました。
 このフェルミのパラドックスを解決する考えとして、バールが1973年に考えた動物園仮説というものがあります。これは、私たちの太陽系は、銀河文明の自然公園あるいはサンクチュアリーのようなもので、わざと放置されているというものです。III型文明のETIたちは、私たちに分からないように、私たちを観察しているというものです。III型文明をもつ彼らには、私たちに分からないように観察することは、たやすいことでしょう。
 でも、この仮説を採用すると、私たちの科学では解き明かせない問題となります。ですからこれ以上は進めなくなります。これが本当かもしれませんが、本当だという証明も、間違いだという証明もできません。
 ですから、この仮説に関わりなく、研究が進められています。

5 アプローチの方法
 SETIには、観測と理論からの2つのアプローチがあります。その詳細については、次回にしましょう。


掲示板■ パラドクス・祭り  

・パラドクス・
パラドクスは、矛盾を意味します。
パラドクスには、どこかに問題や間違いが
ひそんでいるはずです。
そのパラドクスを解くこと、あるいは解く過程が、
大いなる思考実験として、進歩につながります。
パラドクスを発見すれば、それは楽しいことを
発見したと思うべきでしょう。
まだ未解決で重要なパラドクスが提示されれば、
それ自体が重要な発見といえるかもしれません。
パラドクスが難しければ難しいほど、
そしてパラドクスが不思議であればあるほど、
そこにはきっと新しい何かがあるはずです。
良いパラドクスは歓迎すべきかもしれませんね。

・祭り・
世界中がサッカーのワールドカップで賑わっていますが、
北海道では、祭りが続いていて、賑わっています。
学校の大学祭や運動会、体育大会なども、
この時期に集中します。
5月下旬には、札幌の大通りでライラック祭りがあり、
先週はYOSAKOI祭りがあり、
今週は北海道神宮例祭があります。
北海道神宮例祭は、通称、札幌まつりと呼ばれていて、
6月14から17日までおこなわれます。
16日には御神輿(神輿渡御と呼ばれています)が出ます。
北海道では、一番良い季節に祭りがあるのですが、
今年は天候が不順で、少々寒い天気です。
ですから、人出がもう一つだったり、
運動会なども順延があったりします。
でも、いい時期には違いありません。
できるだけ外に出て楽しみましょうか。


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