はじめてこの講義を受講するかた、
PC Lectureを試したいかたは
まずはじめにここをお読みください。

もどる


講 義■ Lec 008(その3)信じること:本当のこと
掲示板■ ホロスコープ・心の問題 


 今回は信じることの例として占星術を取り上げます。占星術から信じること、本当のことを考えていきましょう。


▼ 講義ファイル
Lec008_3の講義ファイル(講義時間 20:20)
ブロードバンド用(ファイルサイズ 5.0MB)
ISDN用(ファイルサイズ 2.5MB)


講 義■ Lec 008(その3)信じること:本当のこと

▼ 占星術(astrology)
1 なぜ、占星術なのか
 占星術は、長年にわたって、「この世」の「真理」だと考えられてきました。おそらく、人類の歴史において、いちばん長く「この世」の「真理」と考えられてきた学問体系は、占星術ではないでしょうか。しかし、17世紀後半には、占星術と天文学とは分かれて、別のレベルのものとなりました。占星術は個人レベル、天文学は科学のレベルです。
 科学という手法が作り上げられ、よりよい「真理」の検証法(論理性と証拠の提示)が発見されたました。科学で、間違いという評価がでれば、棄却(ききゃく)される、つまりその論理は捨てられることになります。占星術は、2000年以上にわたって、「この世」の「真理」であったのですが、科学によって、問題ありという評価され、違うレベルでの存在にならなければなりませんでした。
 以下では、占星術の方法をみていき、どこが論理的に間違っているのかを、証拠と論理の上からみていきます。
 何度も繰りかえしますが、占星術を「信じる」、「信じない」は個人的レベルの話になります。占星術は科学のレベルでは「真理」ではないとされているにすぎないということです。違うレベルの話となっていることに、ご注意ください。

2 原理
 占星術では、まず、「星の相対的位置や見かけの運動と、地上の人間や事件の間に、なんらかの関係がある」という前提を設けています。占星術とは、その前提に基づいて、星を指標にして地上のできごとを知ろうとする技術です。
 占星術を構成しているもの(構成要素)は、天体です。天体の中心にあるのが、不動の地球です。占星術は天動説をもとにしてつくられています。そして、中心の地球から、月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星が張り付いた7つの透明な天球があり、その外側に多数の恒星の天球あるという構造を持っています。各天球には、相互間に一定の数比関係(アナロジー)が成り立ち、全天体の配置関係は、地上のものごとにも反映されると考えます。
 このような原理で、占星術はなされていきます。

3 ホロスコープ(horoscope)
 上で述べたような原理から、占星術は、ある時点、ある地点の天体の配置が、その時間、その空間の中で生じた人間やできごとの様相を決定することになります。ある時点、ある地点の天体の配置図をホロスコープと呼びます。このホロスコープを作成し、解読することが占星術の運用方法といえます。
 ホロスコープは、惑星、公道12宮、12室、角度の4つの要素からなり、そこから占い内容が読み取られます。

○惑星(プラネットplanet)
 占星術では、太陽、月も惑星としてあつかいます。そして各惑星には基本的意味があります。表にまとした。

表 惑星とその基本的意味
------------------------------------------
惑星  基本的意味
------------------------------------------
太陽  生命、活力、男性、権威、支配
月   感性、感情、受容性、女性、変化
水星  知性、鋭敏、雄弁、交流、怜悧
金星  美、優雅、魅力、芸術性、社交性
火星  精力、勇気、衝動、攻撃、情熱
木星  楽天、寛大、高貴、荘厳、膨張
土星  悲観、自制、着実、制約、収縮
------------------------------------------
天王星、海王星、冥王星ときには小惑星も取り入れることもあります。

○黄道12宮(ゾディアックzodiac)
 黄道12宮というものは、現在の天文学では使われていないものです。黄道を中心として上下8度の範囲を恒星は運動します。これを獣帯といいます。この獣帯を春分点から30度ずつ、12等分したものを黄道12宮といいます。12宮は、恒星の星座に投影され、星座の名前で呼ばれることがあります。それは以下のようなものです。

表 12宮
-----------------------------------------------------------
宮        性別 動き 4区分  星座
-----------------------------------------------------------
白羊宮      男  動  火    おひつじ
金牛宮      女  静  地    おうし
双子宮      男  変  風    ふたご
巨蟹(きよかい)宮 女  動  水    かに
獅子宮      男  静  火    しし
処女宮      女  変  地    おとめ
天障宮      男  動  風    てんびん
天蝎(てんかつ)宮 女  静  水    さそり
人馬宮      男  変  火    いて
磨羯(まかつ)宮  女  動  地    やぎ
宝瓶(ほうへい)宮 男  静  風    みずがめ
双魚宮      女  変  水    うお
-----------------------------------------------------------

○12室(ハウスhouse)
 12室も現在の天文学では使われていません。ある時点、ある地点において、東の地平線上に現れた12宮上の位置を上昇点(ascendant)といいます。上昇点を起点に、全天を一定の規則で12分割したものを12室といいます。各室には活動領域が与えられ、ホロスコープ解読上のヒントとします。

○角度(アスペクトaspect)
 惑星の相対的角度のことで、角度によって惑星の影響力の強弱や吉凶を判断します。

 以上の要素の特長を活かして、ホロスコープを読み解き、人やできことの過去から現在までのこと、そして未来に起こることまでも読み取ることが占星術です。

▼ 占星術の問題点
 占星術の原理を見たのですが、ここからは、問題点をみていきましょう。

1 論理の問題
・前提に根拠がない
 まず一番の問題は、占星術の前提である「星の相対的位置や見かけの運動と、地上の人間や事件の間に、なんらかの関係がある」ということに、論理性や根拠がないことです。
 例えば、今の物理学では、天体の地上の人間の力学的な関係は導き出すことは可能です。しかし、その力学的値が算出できても、その値は非常に小さく測定誤差以下のものでしょう。並んで立つ人の運命をそれらの位置関係が、それぞれの人の未来を左右するというような、論理も出てきません。他の地表で起こるのさまざまな現象(たとえは気象現象、対人間の影響など)の力の方が大きいでしょう。
 また力学的影響があったとしても、その影響が人間や社会になぜ影響を与えるか不明です。まして過去での影響、未来への影響のメカニズムは不明です。ですから、占星術は論理的でない前提からつくられた体系だといえます。

・理論自体の矛盾
 春分点が歳差運動で年間50.29秒ずつ移動すことがわかっています。そのため、星座と12宮は、ずれていくことになります。例えば、白羊宮の初点は、もともとはおうし座だったはずなのに、現在はうお座にあります。そして、今から700年後には、白羊宮の初点はみずがめ座に入ります。
 占星術の理論では、初期の条件が変わっているのに、その変更を理論に組み入れられていません。これは理論を修正するという機能が働いていないということです。現状では問題があることがわかっている理論なのに、修正をしないまま利用されているのです。これは問題です。
 余談ですが、白羊宮のずれから、占星術の体系は、2000年以上前に誕生したことがわかります。

2 新しい事実を取り込めない
 惑星の数は、占星術ができたときと比べて、格段に増えています。かつては、土星までの5つの惑星を、太陽、月を用いていました。しかし、惑星として、天王星、冥王星、小惑星、カイパーベルト小惑星が見つかっています。他にも、各種の周期的彗星がああります。
 このように、新しい観測事実が分かってきたのに占星術は取り込みきれない理論であるといえます。つまり、新しい事実を、この理論には組み込めないのです。新しい証拠に対しての検証能力を持たない理論なのです。

3 運用上の問題
 実際に占星術師が、天文学的計算をして、ホロスコープを個別に書いて、占いをしていません。現状では、正確なホロスコープを書くには、コンピュータを使わなければ、すぐには書けない。逆に言うとパソコンを使ってホロスコープを書いているような占星術こそ本物であるということです。それを使っていなのは、似非占星術師か簡便な誰にでもできるようなものに過ぎないということになります。


掲示板■ ホロスコープ・心の問題  

・ホロスコープ・
ホロスコープを書くのは非常に大変です。
現在の地動説の天体の運動を天動説で計算して、
図示することになります。
計算すべきことは多く、まずそれぞれの人の個人情報を入れます。
誕生日の正確な日時、生まれたときの正確な緯度経度です。
そして、占いたい時と場所の限定などをします。
それらから天体の配置、位置関係を計算していきます。
今では専用のソフトがあれば
だれにもでもホロスコープを手に入れられます。
そのホロスコープから一般的な解釈が可能となります。
雑誌などに載っている星座占いは、
影響の一番強い部分だけを抜き出したものです。
万人用になっています。
いずれにしても、個人用のホロスコープを作成することから
出発するのが本式の占星術です。

・心の問題・
困ったときは、人に意見を聞いたり、相談します。
でも、自分のことに対して、決断出すとき、
あらかじめ選択肢を絞っていたり、
あらかじめこちらを選びたいという気持ち
がある場合があります。
そんなとき、自分の思いに対して、後押しをしてもらうために、
占星術師は重要な役割を果たすこもしれません。
他の占い師も同じ役割を担っているのでしょう。
占うということは、相手のあることですから、
相手の様子や態度をみながら、一般的な解釈を
その人用の解釈にアレンジしなければなりません。
これが占師の腕となるわけです。
占という儀式を通じた人生相談なのかもしれません。
でも困ったときは、それでもいいのかもしれません。
これはすべて個人の心の問題です。
それを否定することは誰にもできません。
でも心の問題は科学のレベルの話とはなりません。


もどる