はじめてこの講義を受講するかた、
PC Lectureを試したいかたは
まずはじめにここをお読みください。

もどる


講 義: Lec 006(その1) 不変と変化
掲示板■ 人間的・講義の全容
 


 変わらないことと変わることについて考えていきます。この難しい問題を解くために、普通ではなかなか思いつかない方法で考えてみましょう。まずは、問題の困難さを考えてきましょう。


▼ 講義ファイル
Lec006_1の講義ファイル(講義時間 26:43)
ブロードバンド用(ファイルサイズ 6.4MB)
ISDN用(ファイルサイズ 3.2B)


講 義: Lec 006(その1) 不変と変化

▼ 気の付きにくい考え方
1 自然の中の規則を探る
 こんなゲームをしてみましょう。私が、3つの数字をある規則で並べていきます。その規則を、あなたが質問によって、探るというゲームです。質問は、あなたが考えた3つの数字を示し、それが私の規則にあっていれば、私はYesと答え、違っていればNoと答えるだけです。できるだけ、少ない質問の回数で私の規則を探っていくというものです。
 まず、私が、頭に思い浮かべた規則で、数字を示します。
2 → 4 → 8
というものです。
 あなたは、こんな質問をしたとしましょう。
4 → 8 → 16
私の答えは、Yesです。もうひとつ質問をしたとしましょう。
0 → 2 → 4
Yesです。なんだ簡単な問題じゃないかと思われた方かいたかもしれません。
 別の人が、こんな質問をしたとしましょう。
2 → 4 → 6
私のYesです。
 2の何乗というものを頭に思い浮かべた人は、その規則は、ここで間違っているということに気づいたと思います。
 また別の人が
1 → 2 → 3
という質問をしたとしましょう。私の答えは、Yesです。
 2の倍数や偶数だと思っていた人は、ここで間違っていたと気づきます。
 では、いったい何が正解だったのでしょうか。私が思い浮かべていた規則は、数字を小さいものから大きいものへと順に並べるという非常に単純なものでした。
 ここで、考えるべきは、答えを得る方法には、規則を予想して、その規則にあうものを考え質問すると、一見答えを得やすいように思えます。ところが、この例のように、私の規則が、あなたの規則を含んでいるより単純な規則であれば、決して本当の答えにたどり着けないということです。
 さらに、追求を途中でやめると、間違った結論にたどり着いてしまいます。もし、本当の答えを知りたければ、すべての可能性を、網羅的に考える必要があります。その方法として、自分の規則を含むより大きな規則を想定して質問すれば、遠回りかもしれませんが、確実に、もれなく答えにたどり着くことができます。あるいは、自分の思い描いた規則に当てはまらない例を想定して、それが間違っていることを確かめることです。
 回りくどいかもしれません、時には、それらが一番の近道となる場合があります。

2 単純な規則を探る
 上の数列を探るというのは、単純な規則ほど探るのは実は難しい、ということを示す例でもあったのです。このような規則を探る方法として、背理法(はいりほう)というものがあります。
 背理法とは、証明したい命題が成り立たないという仮定から出発して、論理を展開して、あるとき矛盾が生じるところで、その仮定が間違っているということを示す証明法です。
 背理法を用いる有名な例を紹介しましょう。素数が無限にあるという証明です。
 証明したのは「素数は無限個ある」ということです。ですから、まず、「素数が有限個である」と仮定します。有限個の素数ですから、すべての素数にp1、p2、・・・、pnと順番をつけていきます。このとき最大の素数は、pnとなります。
 ある数Xを考えます。Xは次のように決めることにします。
X=p1×p2×・・・×pn+1
このXの素因数分解を考えます。Xは、最大の素数pnより大きく、なおかつ素数ではありませんから、p1、p2、・・・、pnのどれかで割り切れるはずです。
 ところが、上の定義した式をみると分かるように、Xはどの素数で割っても1余ってしまいます。これはXが素数であることを示しています。
 これは、最初の「素数が有限個である」という仮定と矛盾しています。ですから、「素数が有限個である」という仮定は間違っているので、素数は無限個あると結論になります。
 数学を習った人なら、背理法という証明方法があることは、誰もが知っていますが、それを実際に思いつき、使うのはなかなか難しいことなのです。
 多くの人は、上のクイズのような場合、規則にあった正しい場合を前提として、質問をするということが、認知心理学のテストからも検証されています。つまり、規則に反するものを考えて、規則を探ろうとする人は、非常にまれなことであるといえます。
 数学という論理だけの世界でも、背理法を思いつくのは、大変です。ですから、数学で用いられる背理法や、数学的帰納法などを、自然の物事を考えるときに用いるのは、なかなか難しいものです。
 自然の中で規則性を探るとき、背理法や否定など、人間がなかなか思いつかない盲点なので、そのような方向から入るというのは非常に困難です。しかし、逆に行き詰ったときに、背理法や帰納法などの方法から考えてみると、よい打開策がみつかるかもしれません。


掲示板:九州調査  

・九州調査・
明けまして、おめでとうございます。
私は、このメールマガジンが届く頃、
私は、九州の調査に出ています。
5日から12日まで、九州中部から南部を巡っています。
九州には何度も行っているのですが、
現在の研究テーマになってからは、まだ行っていません。
現在、私の研究テーマは、北海道を中心としていますが、
川原の小石や川や海岸の砂を集めてデータベースをつくりながら、
それが何とか科学的研究の素材にならないかを考えています。
その比較として、日本各地の主な川と海岸、火山の石や砂を集めています。
今回は、九州です。
このような素材は、子供から大人まで、
すぐに興味を持ち、詳しく見るれば、いろいろなものがあり、
理屈なしに面白いものです。
うちの子供たちを川原や海岸に連れて行けば、
1時間や2時間は、何も言わなくても、
そこにあるものを使って遊んでいます。
こんなに楽しい自然の素材なのですが、
研究者はあまり研究対象にしていません。
なぜなら、これらを使っても、
なかなか研究成果が出そうにないからです。
私は、あえてこれらを研究素材に選びました。
川と火山と海岸の石ころや砂です。
データは集まりつつあり、一般向けに公開してます。
でも、研究が深まりません。
私の能力の無さと努力不足なのでしょう。
しかし、まだ、はじめて3年半ほどです。
まだまだあきらめないつもりです。
とりあえずは、データベースを完成させるつもりです。
なにしろ、川や海岸は、いろいろなものがあって面白いのです。
特に人手あまり入ってない自然の川や海岸は面白いです。
いろいろなものが見ることができます。
大人の私でも面白いのですから、
子供たちが面白くないはずはありません。
我が家の子供たちは、多分、
日本全国の川や川原の石や砂を見ているます。
でも、私は何も教えません。
自然に直接触れ、そこで感じ、経験することが
まず大切だと思います。
教えても身に着かないでしょうし、
まず、場所すら覚えていないでしょう。
でも、経験が大切だと私は信じています。
そして、面白いことだけは、子供たちにも伝わっているはずです。
そんな調査旅行と家族旅行をしています。


もどる