地球のつぶやき
目次に戻る

Essay■ 229 はじまりを尋ねて:LUCAは身近に
Letter ■ ラニーニャ現象・コロナ対策下での入試


 「はじまり」をの探求は、興味深い話題です。ところが、深く追求していくと、推定や仮説の世界にたどり着きます。生命のはじまりも、仮説の世界になりますが、ここ数年新たな展開が生まれてきました。


Essay■ 229 はじまりを尋ねて:LUCAは身近に

 ものごとの「はじまり」については、多くの人が興味を持っていることと思います。しかし、すべてのものの「はじまり」を問いつめていくと、答えにたどり着けないものが出てくきます。例えば、自分の「はじまり」を尋ねていくと、両親、祖父母、曽祖父母、・・・・・と遡り、顔どころが名前さえしない親族へ、さらには過去帳、家系図と文字や文書だけの存在へと繋がっていくことでしょう。さらに「はじまり」と尋ねていくと、人類の「はじまり」であるヒト(分類でいうと「科」になる)となっていきます。さらに遡ると、霊長類(目)、哺乳類(網)、脊椎動物、動物(界)、真核生物(ドメイン)となります。最終的な由来を訪ねていくと、生命の起源へと繋がります。自分の「はじまり」の究極の問は、生命の「はじまり」へたどり着きます。生命の起源も、だれもが興味を持つ「はじまり」ではないでしょうか。
 生命の誕生は、地球創成の時代の出来事だと考えられています。そして、最初の生物は、小さく、単純な単細胞だったはずです。その生物の化石は、硬組織がないのと、形成環境も、確率的にも見つからないと考えなければなりません。現在、遡れている化石は、34.8億年前までは確実なのですが、あとは化学的証拠として38億年前まで遡る可能性はありますが、まだ確定していません。
 現状では、地球創成の時代、冥王代(45〜40億年前)の化石探しは、地層も稀で、化石を見つけるのはなかなか困難となりそうです。化石以外で、なんらかの根拠を手がかりして調べていくことになります。どのような方法があるでしょうか。
 古い化石を探し、そこからより原始的な生物を推定する方法。現在いる生物から最も原始的なものを見つけて探る方法。その遺伝子から探る方法。生物をつくっている有機物などの素材の形成から考える方法。などいろいろなものがあります。いずれも、最初の生物を「共通祖先」として、推定していきます。
 「共通祖先」の名称として、最終共通祖先(LUCA : Last universal common ancestor)、コモノート、センアンセスター、プロゲノートなど、いろいろなものが提案されています。意味するところも、重なっていたり、異なっていたりします。ここでは、LUCAと呼ぶことにします。LUCAは、もともとはバクテリア(細菌のこと)や古細菌、真核生物が共通の祖先から進化してきたと考えた時のものですが、「共通祖先」として用います。
 LUCAなどの研究から、もっとも原始的な生物の性質として、好熱(45℃以上、時には80℃以上)の条件で生育し、遺伝子の数もDNAも小さいと考えられます。低温より高温のほうが、化学反応が活発に起こりますが、あまりにも高温だと形成される有機物が限定されていきます。
 環境としては、高温の熱水が冷たい海水(数℃)に噴き出すようような噴出孔を考えると、どんなに高温の熱水(例えば500℃)であっても、周りの海水が冷たいと、500℃から数℃までの温度の範囲をもった領域ができ、適切な条件のところが、化学合成が進めればいいわけです。広い温度範囲であれば、多様な化学合成が可能かもしれません。現在の海水の条件では、溶存成分が少なくて生命の合成はできなくても、地球初期であれば、溶存成分の多い海水も想定できます。
 また、原始の地球では、形成時のエネルギーがまだたくさん内部に蓄えられていたはずなので、現在よりもっと活発に火山活動が起こっていたと考えられます。海洋では、海嶺や火山などでは、多数の熱水噴出孔があったはずです。
 地球のエネルギーを用いた化学反応で、生物としての必要最低限の素材を利用して生物が誕生したと考えるものです。その後、当時としては、地球でもっとも安定した環境でもあった深海の海水中で、進化していったはずです。それがLUCAです。
 ここまでの考え方は、地球初期を想定した条件に斉一説に加えて、生命の「はじまり」が考えられてきました。ところが、最近、地球初期の条件を重視して、その条件に固有の環境から生物が誕生したと考える研究がでてきました。斉一説の適用より、境界条件の変更して、まったく異なった誕生の場が考えられました。
 地球初期にあったと考えられる少々特異な岩石と水との化学反応と、濃度の高いウラン鉱床の近くの熱水溜まりで、放射壊変の熱エネルギーを利用して、化学合成を考えていこうとアイディアです。
 このような新しいモデルの背景には、CPR群と呼ばれるバクテリアの仲間の実態が少し解明されてきたことがあります。2015年の報告で、これまでの方法では把握できないバクテリア系統群が大量にいることがわかってきました。
 CPR群とは、詳細がわかっていない生物ですが、遺伝子サイズが小さく、通常の生物がもつ化学合成の遺伝子を持たず、特異なタンパク質の合成をおこなっています。
 そんなことから、他の生物に依存して生きているらしいことがわかります。しかし、かなり多くの種類数に登る(15%以上)こと、他の多くのバクテリアと近縁であることから、特異な孤立した生物群ではなく、多くの生物と関連をもつことが考えられます。最近、日本にある白馬地域で、蛇紋岩地帯から湧き出ている温泉に、CPR群が伴われ、その中に「白馬OD1」と呼ばれるものが見つかっています。この生物の研究から、LUCAに近いのではないと提案されています。
 日本の白馬の温泉という卑近な場の正体不明のバクテリア群、ウラン鉱山、最初の生命という、想像を越えた連鎖から面白い仮説が展開されています。身近なところから、新しい学問体系が生まれつつあるようです。
 一方、LUCAの誕生について、一連の反応で生まれたのではなく、いくつかの生物の前段階のものの組み合わせでできたと考える仮説もあります。生物の前駆的物質に何度かのウイルス感染を通じて、LUCAができたと考える、ウイルス進化説と呼ばれるものもあります。本当に多様な仮説があります。
 さらに、疑問もあります。生物の「はじまり」が、ひとつ生命のタイプに収斂するのでしょうか。もしかすると、複数の、あるいは多数のLUCA類似のものがいて、生存競争や突然変異、共生(ウイルス感染)などを繰り返しながら生まれたかもしれません。まさに混沌とした「はじまり」ではなかったかという疑問です。それを、どう実証していくかは問題ですが。過去に起こったことで、直接の証拠が入手できない時代の話しです。


Letter■ ラニーニャ現象・コロナ対策下での入試 

・ラニーニャ現象・
真冬日が続く北海道では、1月下旬に雨が降りました。
最も寒い時期ですので、驚かされました。
しかし、翌日にはまた真冬日になり
道路だけんでなく、あちこちが、
つるつる、ガリガリに凍りつきました。
目まぐるしく変わる天候です。
昨年夏から続いているラニーニャ現象の影響でしょうか。

・コロナ対策下での入試・
1月下旬から2月上旬にかけては
私立大学は、入試のシーズンとなります。
今年は、コロナ禍で入試もいろいろ制限を受けています。
国公立大学で、筆記試験を実施しないという
ところもいくつかでてきました。
我が大学は、ルールに則って、
コロナ対策をしながら、試験を実施します。
そのため、教室数が多くなり、
試験対策の人数も多く必要になります。
まあ、致し方ないことでしょうね。


目次に戻る