地球のつぶやき
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Essay■ 214 鍾乳石のカオスとフラクタル
Letter ■ 晩秋の紅葉・北海道の冬


(2019.11.01)
 鍾乳石は、単に柱があるのではなく、その形状や表面に、模様がいろいろ形成されています。その模様は、ひとつひとつは異なっているのですが、どこか似たものがあります。カオスとフラクタルには不思議な魅力があります。


Essay■ 214 鍾乳石のカオスとフラクタル

 音楽には、人に安らぎだけでなく、気分を変えてくれたり、さまざまな感情を湧き起こす力があります。音楽のどこにそのような機能があるのでしょうか。なかなか難しいテーマでしょう。誰もがいいと思える音楽、誰もが楽しくなるような音楽、誰もが心を癒やされる音楽があります。クラッシクとして現在も演奏されるもの、懐メロとして残っている楽曲、現在ヒットしている音楽もその候補でしょう。しかし、時間経過に耐えられるかどうかは不明ですが。
 多くの人がいいと思える音楽は、簡単に作れるわけではありません。AIを用いて、そんな音楽を目指している人もいるでしょう。でもまだその域まで達していないようです。もしAIあるいは誰かが、意図的に誰もがいいと思える音楽をつくることができれば、それは必ずヒットする楽曲ができることになります。その人は、有名になったり、大儲けできることでしょう。音楽を作っている人は、多くの人に届き、ヒット曲を生み出すことを目指しているのでしょうが、現実にはそうはいっていません。たとえ作った本人がいいと思っていても、他の多くの人にいいと思ってもらえるかどうかは、別の問題なのでしょう。そこに感性だけでなく、宣伝効果、集団心理や社会心理などの要因も関わってきそうです。
 さて、自然な中にも、誰もが心地よく思える造形がいろいろあります。自然の造形の中で、対称性や繰り返し、リズムなどがあると、美しいと感じます。美しさより、もう一歩踏み込んでいくと、対称性やリズムを持ちながらも、少しずつ乱れていくとき、その違和感に不思議さを感じることがあります。その典型を鍾乳洞に見ることができます。
 鍾乳石は、地下水の中で炭酸カルシウムが沈殿してできていきます。地下水ですから流れています。流れの作用と、大きな石灰岩の存在とが前提条件がですが、沈殿は水の流れの泣けで形成されます。流れの条件に応じて、沈殿の量や形状が定まっていくはずです。水は流れているので、波動が生じます。波動は水量、スピード、流れのサイズなどに応じて変化しているはずです。沈殿は、それら多様な条件の影響を受け、波動が変化すれば対応するでしょう。もちろん変化が起こらないところもあるでしょう。少しずつ変わるところ、急に変わること、変化してから安定するところなど、変化にもバリエショーンがあるでしょう。その条件を要素還元的に考えるのは困難ではないでしょうか。
 鍾乳石には、変化の多様性の結果が残されています。同じリズムの繰り返し、またそこから別のリズムに変わっていくもの、また同じものへと戻るもの、変わらず変化し続けるものなど、いろいろなリズムの変化を鍾乳石の模様に見ることができます。
 例えば、秋吉台の黄金柱は何本かの筋が集まっているように見えます。上から流れ落ちる水の異なったリズムでの沈殿でできています。しかし、石柱には、さままざまな模様がありますが、模様は連続して変化しているのですが、どこか共通したリズムがあったりします。このような予想できない変化の中にカオスを感じます。
 カオスとは、なんらかの規則性は存在しているのですが、どうなるかは、実際に計算や実証していかないとわからない現象です。初期値の鋭敏性や計算上の誤差の蓄積、誤差の増幅など、事実上、予測不能であるものをいいます。ただし、決してデタラメ、ランダムということはなく、法則や規則性があるものをいいます。決定論的現象ではあるのですが、経験論的に検証していかないと答えがえられない、予測不能性をもっています。考えれば不思議な現象です。通常の因果律が成り立たない現象が起こっていることになります。
 ところが、カオスは、何も特別な現象ではありません。例えば、水の流れにもカオスがよく見られます。川面の流れがつくる模様をみていると、同じ場所では似た渦ができていますが、その渦は一定せず、しょっちゅう変化していきます。しかし、同じ場所では何度も同じ渦が繰り返し生まれていきます。規則性はあるようですが、その規則性が不規則に現れています。
 鍾乳石の模様と同じようなカオスを感じます。さらに、リズミックな繰り返しの中に似たリズムがスケールを変えて現れることがあります。そこにはフラクタルが見えます。
 フラクタルとは、似た規則性(模様)がスケールがいろいろなスケールを変えて繰り返し現れることです。河川の流れは土砂のサイズと水量、傾斜などがその形を決めていると考えられます。それが似た比率の値をとれば、公園に雨の後にでた流れの模様と、人工衛星でみた大河に似た模様を見ることができます。スケールは全く違いますが、似た形状ができます。スケールがわかるものがないと、どのスケールの現象がわからないくらい似ています。そのようなものを自己相似形といいます。
 例えば、秋吉台の百枚皿は、同じような皿状の池が多数あります。上流から流れてきた水が、小さいなプールにたまりその縁に沈殿します。そこから溢れた水が次のプールになります。そのプールの縁にも沈殿ができます。そのような繰り返しで多数の皿ができているところです。それぞれの皿のサイズや形、深さ、縁の模様は異なっています。しかし、なぜか似た形状の皿が多数できています。共通性、フラクタルを感じます。
 鍾乳洞は、単に穴がある、鍾乳石があるだけんでなく、そこにある繰り返し模様に美しさを、カオスとフラクタルに不思議さを感じているようです。鍾乳石はフラクタルとカオスの造形なのでしょう。


Letter■ 晩秋の紅葉・北海道の冬 

・晩秋の紅葉・
10月下旬になって、里には一気に晩秋がきました。
雪虫が何度か飛び交いました。
紅葉も一気に艶やかに染まりました。
早くから紅葉しているものもあるので、
落ち葉はだらだら散っていましたが、
最後の紅葉は一気でした。
冬ももうすぐで、間近に感じます。
11月中旬に今年最後の調査にでます。
雪が心配なのでどうなんなのですが、
冬タイヤにするかどうか迷っています。

・北海道の冬・
大学は、淡々とした日常を繰り返しています。
初雪から根雪になると、
北国に人々は、室内での生活が多くなります。
私も野外調査以外では、
室内での生活時間が多くなります。
北国は、昼の時間も短くなります。
北海道は、明石よりだいぶ東にあるので
時刻より太陽が早く出、早く沈みます。
いつもの時間に自宅を出ても
日はまだ登っていないとき歩きます。
いつもの時間に大学を出ても、
日が落ちて真っ暗中、歩いて帰ります。
そんな冬が間近です。


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