地球のつぶやき
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Essay■ 210 天職:畢生の仕事
Letter ■ エルニーニョ・野外調査


(2019.07.01)
 仕事には、rice work、like work、life workの3つの側面があります。この3つをどう共存させるか、働く人の気持ちがもっとも重要です。畢生の仕事が天職になればいいのですが。


Essay■ 210 天職:畢生の仕事

 ライフ・ワーク(life work)という言葉は、よく聞き、よく使う言葉です。「一生をかけてする仕事」とか、「畢生(ひっせい)の仕事」とも訳されることがあります。life workは、若い頃はあまり気にしない言葉ですが、仕事を退職するころ、あるいは人生の終わりが近づいてきたころ、ふと頭に浮かぶ言葉ではないでしょうか。life workは、自身の人生でもっとも長く継続している仕事になるはずです。もし、点々と職場や職業を変えていたとしても、自身の中で目指しているものが統一されていれば、職歴を通じて全体がlife workとなるでしょう。
 ライス・ワーク(rice work)は、以前誰かが使われているのを聞いたことがありますが、聞き慣れない言葉かと思います。「ご飯を食べるための仕事」、「飯のタネ」とも訳すことができそうです。誰でも、食うためには、働らかなくてはなりません。食うための仕事のことを意味します。
 ライク・ワーク(like work)は、特別な言葉ではなく、ごく普通の言葉です。文字通り「好きな仕事」のことです。今回は、この3つのrice work、like work、life workについて考えていきます。
 現在では、ブラック企業が問題となっています。勤務時間を大幅に超えて長く働くこと、正当な賃金が支払われないなど、大学でも学生に注意を喚起しています。大学という職場自体でも、ブラックにならないように注意喚起がなされています。多く人が経験していることでしょうが、好きなことであれば、何時間でもそれを続けていきます。大人も子どもも関係なく、時間を忘れて集中していきます。ところが、同じような仕事であっても、riceのための仕事と考えると、辛い仕事、早く終わりたい時間となります。それが長時間労働や残業手当がつかないとなると、ブラックな仕事となります。
 例えば、会社の創業時は、多分超過勤務当たり前、残業費ゼロ当たり前のブラックな働き方をすべての社員がしているのではないでしょうか。でも、それはriceよりlikeが勝っていて、会社を成り立たせつために使命感や熱意をもっていたので、本人も会社も、その仕事をブラックに思わなかったのでしょう。その会社が大きくなり、riceのための人が加わると、likeだけの体質は変えなければなりません。それが社会や会社の運営で、あり方なのでしょう。もちろん、会社としてブラックな仕事や働き方は問題ですし、改善すべきでしょう。2つの例を示しましたが、同じ仕事でも、自分自身がどう思うか、気持ち次第で全く違った面がみえます。
 life work、rice work、like workと並べて、これらすべてのworkが一致していることが、理想なのでしょう。そのような仕事をもっている人は稀でしょう。「天職」という言葉があります。「天から命ぜられた職」や「神聖な職務」などの意味もありますが、「生まれながらの性質に合った職業」という意味もあります。このエッセイでは、「生まれながらの性質に合った職業」という意味で使います。天職は他人が判断することもあるでしょうが、自分自身がこれが天職と思えるかどうかを考えていきましょう。先程の例のように、考え方を変えることで、3つのworkを一致させ、天職を得ることは可能なような気がします。
 天職をはじめから持っている人はいません。実際に職業についたとき、それが生まれながらに、自分に合っているとわかる仕事などはないと思います。
 例えば、小学校の先生や保育士になりと思い、資格を取るために大学や短大などで勉強をしていきます。基礎や専門について学び、実習もしていくことになり、大変なことも辛いこともあります。一般の職業でも、はじめて会社に入って仕事をはじめる時、新人として研修や訓練を受け、配属が決まっても先輩について、そのポジションですべきことを少しずつ習って覚えていくはずです。そんな訓練を経て仕事を身につけていくことになります。つまり、天職は最初からアプリオリにあるのではなく、実際にその仕事について、ある程度経験してみてはじめて天職と思えることになるはずです。
 天職と思える期間、時間はどうでしょうか。仕事はすべて技術や手順が必要なので、最初から一人前になることはないはずです。仕事は複雑なところがあったり、ある程度の技能が必要なものには、人にとっては向き不向きが生じるかもしれません。、向いている人が1年で習熟することでも、向いていないとしても3年、5年と続けれていけば、上手にはできなくとも、失敗しない程度の技術や技能が身につくのではないでしょうか。長く続ければ、多くの人が一人前になれるかと思います。長く続ける忍耐は、その仕事へのlikeな気持ちがないとできないでしょう。仕事に向いた能力や才能があったとしても、likeでないと長続きができませんし、それがriceにならなければ、一生の仕事にはなりません。
 多くの人は、まずはriceのために職につくはずです。もちろんそれがlikeな職でありたいと多くの人が思っているでしょう。今の時代、最初からlikeな仕事がriceになるのは、一部の人だけかもしれません。でも、多く人が現在の職をlikeと思わず、riceのためでだけと思って就いているのでしょうか。大変さの中にもlikeを見出し、大変さ、辛さとどこかで折り合いをつけていると思います。そして、長年その職業についていると、どんなに大変であっても、どんなに辛いものであっても、そこにはriceだけでなく、likeを見出しているのではないでしょうか。長い職業経験を経てriceとlikeが、混沌となり一致した状態になったとき、life work、畢生の仕事となり、天職と思えるのではないでしょうか。
 つまり、天職と思えるかどうかは、自身の気持ちしだいということになります。天職にするには、それなりの努力も時間も必要ですが、riceを確保でき、嫌いではなく、普通よりややlikeの仕事がスタートなのでしょう。あとはその仕事を続けることで、likeが多くなってくればlife work、畢生の仕事にできるのではないでしょうか。それが天職への道かもしれません。
 私は今の研究を進めながら、それを集大成することがlike workになっています。若い人たち(学生)を少しでも自身をもって社会に送り出せることをrice workにしています。大学教員ですから、研究もrice workで、若者を教育することもlike workです。そんな職場で、いく種類かの仕事で、likeとriceが混沌している状態となっています。ですから、現在の私の仕事は、畢生の仕事であり、天職なのでしょうね。


Letter■ エルニーニョ・野外調査 

・エルニーニョ・
6月は前半は、いい天気が続いていたのですが、
後半は不順な天候となっていました。
思っていたほど暑くなることはなく、
涼しい6月となりました。
7月は、どうでしょうか。
現在、エルニーニョになっているようなので、
平年とは少々違ってくるのかもしれません。
通常であれば北海道は冷夏になるようなので、
最近はエルニーニョの状態も変化しているようです。

・野外調査・
5月から6月にかけて
前期の野外調査のシーズンになっていました。
主に道内を4回にわたって調査しました。
6月29日から30日が最後となりました。
7月は大学の行事がいろいろあり
週末を利用して出かけることが難しくなります。
次は8月下旬から11月上旬までが
後期の野外調査のシーズンとなります。
毎年いくつもの目的をもってい調査をしているので、
ここの成否はいろいろです。
野外調査にでると、気分転換でき、英気を養える
という捨てがたい大きなメリットがあります。


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