地球のつぶやき
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Essay 01 地質学的関係
Letter はじめまして/本誌の前身「地球のつぶやき」

Essay 01 地質学的関係

(2002年2月7日)
 地質学的には、同時または短い時間での一連の作用によって形成された岩石があります。このような地質学的区分を、堆積岩では地層(その規模は各種あります)、火成岩では岩体、変成岩では変成相といいます。ここでは、呼び方を問題にしないので、グループと呼びましょう。
 では、次ぎにグループの関係を見ていきましょう。あるグループで一連のでき方でできたものの関係として、どのような可能性があるでしょうか。
 まず、連続と不連続があります。連続にも物質的連続と時間的連続があります。物質的連続と時間的連続な場合、物質的には連続だが時間的には不連続である場合や、逆に、時間的には連続だが物質的には不連続である場合があります。また、不連続とは、物質的にも時間的にも不連続となります。
 物質的連続と時間的連続な場合は、グループ内のある岩石とになります。火成岩では岩体内のある岩石種や溶岩流、変成岩では変成相内のある岩石種、堆積岩では単層、となります。つまり、地質学では、物質的連続と時間的連続な場合を、グループ内での最小の区分の単位としています。つまり、物質的連続と時間的連続というのは、その内部に区分の基準が存在しない、つまり同一であると認定できる基本単位ということです。
 物質的連続と時間的連続な場合のうち、物質的には不連続を持たずに変化していく場合は、「漸移(ぜんい)」といいます。このような場合、境界をどこにするかが問題で、自然は連続しているのに、人為的に境界を設けて区分する場合があります。ここに問題が生じます。これは、別の機会にします。
 上で述べたような何らかの不連続を含む関係を、岩石の基本的な起源として区分される堆積岩、火成岩、そして変成岩で、そのような関係に置き換えることができるか、見ていきましょう。
 堆積岩では、物質的には連続で、時間的には不連続である場合を、「ハイエイタス(無堆積)」といいます。時間的には連続で、物質的には不連続である場合は「整合(せいごう)」といいます。物質的にも時間的にも不連続の場合、「不整合(ふせいごう)」といいます。
 火成岩では、時間的には不連続である場合は、同一グループ内では生じません。それは、火成岩は、マグマからできているからです。マグマにおいて、時間の経過は、温度変化として現れます。ですから、時間の不連続があると、物質的には不連続を伴います。時間的には連続で、物質的には不連続である場合は、「層状(そうじょう)構造」や「流理(りゅうり)構造」ができます。層状構造は、深成岩で同時期形成された鉱物がマグマ溜りの中で層状に繰り返して形成されることです。流理構造は、火山岩で不均質なマグマが流動しながら固まった場合に形成されます。
 変成岩では、岩石の区分と変成作用の違いをもたらします。物質的には連続で、時間的には不連続である場合は、「複変成(ふくへんせい)作用」といいます。複変成作用とは、同じ岩石に変成作用が2度以上にわたって起こったことです。時間的には連続で、物質的には不連続である場合は、同一の変成相ですが別種、つまり岩石名の違いとして現れます。変成岩は、変成を受ける岩石(原岩(げんがん)といいます)の種類を問いません。ですから、同一変成相でも、各種の岩石を混在しているのが、一般的です。物質的にも時間的にも不連続の場合は、複変成作用によって別の変成岩ができていることを示しています。これも、複変成岩ではごく当たり前に起こることです。
 今まで見たきたものは、何らかの成因関係があった場合ですが、つぎは、全く起源やでき方が無関係なものが接している場合をみていきましょう。
 2つのグループに接触関係の形成には、2つの可能性があります。第1は、一方的にあるグループの方が他のグループに接していった場合です。第2は、両者とも別々に形成されたものが、全く別の時期の別の作用で接するようになった場合です。
 地下深部で形成されたマグマが上昇するとき、他の岩石や地層を突き貫けています。その時、第1の可能性の関係が形成されます。このような関係を、火成岩を中心としてみると、「貫入(かんにゅう)」といい、堆積岩を中心としてみると、「非整合(ひせいごう)」といます。
 第2の可能性の場合は、断層(だんそう)といいます。断層関係は、地質学的関係としては、一番多いかもしれません。規模を問わなければ、至るところ断層だらけです。地質図を見れば、断層のない地域はありません。大きな地層の出ていている崖(露頭(ろとう)といいます)をみれば、小さいものならいくつも断層を発見できます。日本列島を宇宙から見ると、中央構造線やフォッサマグナなどの巨大な断層が見ることができます。
 異質のグループが接している場合、そこには不連続が生じます。それは、地質学の世界ではごく普通の現象なのです。それが、その地域の地質を複雑にしていきます。でも、そのおかげで、地質学者の出る幕が生まれてくるのです。


Letter はじめまして/本誌の前身「地球のつぶやき」

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★「Terra Incognita 地球のつぶやき」を購読いただきまして、ありがとうございます。以下に、すこしこのメールマガジンの発行趣旨を説明します。
★"Terra Incognita"とは、ラテン語です。"Terra"とは大地や地球の意味です。"Incognita"は未知の知りえないという意味です。
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★日本では、地球科学に関する限りは、ハイブローな(つまり学術的にも内容的にも妥協しないもの)内容のエッセイは、あまり見かけません。でも、欧米では、スティーブン・J・グールドや一線級の研究者が、市民向けに、ハイブローなエッセイを書いています。日本では、書籍にすると、売るために、議論の複雑さ数式などを犠牲にして、いいたいことを伝えきれずに書かれた書籍が多すぎます。けっして、専門化向けの自己満足的エッセイではなく、わかりやすさを追求しながら、内容や専門性を犠牲にすることなく、議論していきたいと考えています。そして、二番煎じやどこかの聞きかじりでなく、私自身が聞き取った内容で、議論を展開していきたいと考えています。そのため、メールマガジンではあまりふさわしくないのですが、月刊という息の長い連載エッセイを企画しました。
★もしかすると、そんな議論が、地球のより深い理解に繋がるのではないでしょうか。そんな気持ちで、このメールマガジン「Terra Incognita 地球のつぶやき」を発行してきます。★

・本誌の前身「地球のつぶやき」・
★このメールマガジン「Terra Incognita 地球のつぶやき」には前身があります。それは、「Monolog of the Earth 地球のつぶやき」というメールマガジンでした。限定100名に対して、この「地球のささやき」(購読は、http://www1.comonitei.com/earth/regist.html)の姉妹篇である「Monolog of the Earth 地球のつぶやき」を非公開で発行してきました。もともと、この「地球のつぶやき」は、「地球のささやき」の読者で著者にメールを下さった方に対する私の感謝の気持ちとしてお届けしていたものです。「地球のつぶやき」は不定期ですが、月一回程度の発行をしてきました。現在まで、No.7が発行済み、廃刊としました。でも、その感謝の気持ちを忘れないないためにも、当初の名称の「地球のつぶやき」を副題として残しました。以下に「Monolog of the Earth 地球のつぶやき」の目次を紹介していきます。
1 サラとの対話(14kb)
2 組織について(14kb)
3 分類と類型(13kb)
4 地質調査(9kb)
5 教育(6kb)
6 オッカムの剃刀(10kb)
7 地質学的終焉(18kb)(本号)
もし興味おありでしたら、ホームページにバックナンバーを掲載しています。ので、ご覧になってください。
★「地球のつぶやき」では、エッセイ以外に、読者へのLetterのコーナーもあり、そこでは、私の個人的なことや経歴など、なかり踏み込んだ内容が書かれていて、全体として、かなり大量の文章量となっています。もし、著者である私自身の生い立ちや、なぜ地質学を研究しているのか、どんな経歴なのか、などが気になる方、興味ある方は、かなり立ち入ったことまで書かれていますので、ホームページでバックナンバーをご覧ください。もしかすると、私のことがかなり理解できるかもしれません。★