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Essay ▼ 188 北アイルランド道:ジャイアンツ・コーズウエイ
Letter▼ ライブ講義線・老後のこと


柱状節理の道。海岸から山を見る。


柱状節理の道。海岸から山を見る。。


柱状節理の道。海岸を見る。


規則正しい節理の並び。


規則正しい節理の並び。


延々と続く柱状節理。


延々と続く柱状節理。 。


規則正しい柱状節理。


規則正しい柱状節理。


6角形だが、正6角形ではない。


柱のようになっている壁。


柱のようになっている壁。

(2020.08.15)
  自粛のため、未だに野外調査はいけてません。昔でかけた、北アイルランドの紹介をします。かなり前の訪問でしたが、多分、現在もそんなに変わっていない風景や生活があるのではないかと思えるところでした。

 自粛が長く続き疲弊している上に、お盆の帰省の抑制とGoToキャンペーンの遂行に空々しさを感じます。どこかにでかけることは、良識的に躊躇してしまいます。そのため、本エッセイも過去の調査を振り返りながら、何度かお送りしてきました。残念がながら、今回も以前の調査のエッセイになります。8月末から校務出張がはいってきますので、9月になったら、様子をみながら、道内で野外調査を実施したいと考えていますが、どうなることでしょう。
  北アイルランドのジャイアンツ・コーズウエイ(Gaiant's Causeway)というところを紹介します。かなり以前(2003年)にいったのですが、その光景は今も、強く心に残っています。我が家の玄関には、ジャイアンツ・コーズウエイの土産物屋で売られていた、白黒の点描画を飾っています。ですから、毎日目にしている光景になっています。
  ジャイアンツ・コーズウエイのジャイアンツ(Gaiant)は「巨人」で、コーズウエイ(Causeway)とは「敷石がひかれた道」という意味です。ですから、「巨人が石を敷いた道」という意味です。このような伝説ができたのは、大きな石が規則正しく、広域に広がっています。人が動かせないほどの大きな石が、規則正しく大量に並んでいます。ですから、「巨人が石を敷いた」と、昔の人は考えました。ケルト神話に登場するフィン・マックール(Fionn mac Cumhaill)という巨人にちなんでいるそうです。特に、海岸に伸びている部分は見事です。
  この敷石の道は、自然にできたもので、柱状節理でできています。柱状節理は、このエッセイでも何度も出てきましたが、節理(せつり)とは、岩石の中にできる割れ目のことです。不規則な割れ目を、亀裂(きれつ)と呼び、規則的なものを節理と呼びます。節理は、岩石が収縮したときや圧力が開放されたときできます。割れ方によって、柱状、板状、放射状、方状がありますが、ここでは柱状になっています。
  ジャイアント・コーズウエイの柱状節理は、5500万年前に、大きな溶岩が流れ、それが冷えたものです。マグマが固まるとき、液体より固体のほうが少し体積が縮みます。その時、岩石に規則正しい柱状の節理ができたものです。節理の柱の断面は、差し渡し30から50cmほど6角形から5角形をしています。正確な角形はないのですが、一個一個の形や大きさは似ていいます。でも良く見ると、どれひとつとして同じものはありません。不思議な幾何学的な模様で、それぞれ類似と差異があり、いくら眺めていても見飽きない面白さがあります。
  この柱状節理が大量にできるところでは、その規則性が故に、人工的なものに感じてしまいます。ですから、ケルトの人たちも、巨人が作ったと考えたのでしょう。
  ジャイアンツ・コーズウエイは、多くの人が簡単に訪れることできる場所にあり、300年以上前から観光名所として、イギリスでは知られていたようです。ここは、世界遺産に指定されています。各地で大小の柱状節理を見てきましたが、ここの節理は見応えがありました。
  ジャイアント・コーズウエイでよかったのは、観光案内が地質学的な説明を中心にしていた点です。観光案内書でも、地質学の詳しい内容が盛り込まれています。ビジターセンターでは、地質図が何種類も売っていました。地質図がそのまま観光案内にもなっていて、トレイル沿いでみられる岩石や節理の説明がついています。
  イギリスは、地質学も教養の一部で、玄武岩、ドレライト、岩脈、岩床など地質学的用語が当たり前に使われています。現在、日本でも世界自然遺産やジオパークなので、地質学も観光に取り入れられるようになってきた。イギリスでは古くから地質を楽しむことがなされていたようです。
  このような敷石の景観は、8kmほどの散策コースになっています。最初はジャイアンツ・コーズウエイの海岸沿いを歩き、途中から崖の上の牧場の柵沿いに歩くものです。ガイドブックでは3時間ほどのコースと書かれていましたが、観察をしながら歩いたためでしょうか、4時間半ほどかかりました。長い時間がかかりました。でも、5500万年前のマグマがつくったさまざなま節理を堪能しました。
  この周辺には自然道もいくつもかあり、その多くは海岸沿いの崖に見えるさまざなまな節理をみていくものです。地質のガイドブックにもいくつかコースが載っていました。イギリスは、ナショナル・トラストによって、そのような自然道がよく整備されています。
  もうひとつの違いは、日本の観光地にはきまって土産物屋や旅館などの観光施設が多数あります。地元の人が、観光を売り、観光客もそのような観光施設を利用します。しかし、ジャイアンツ・コーズウエイは、田舎のためでしょうか、観光地らしく見えませんでした。世界遺産になっていましたから、たくさんの観光客が、世界各地から訪れ、日本人の観光客にも会いました。それでも、観光客によって荒らされていない、自然を満喫できるようになっていました。
  ジャイアンツ・コーズウエイのそばにはビジターセンターがあり、中にはささやかな土産物もあります。そして、ひとつだけりっぱなホテルがありました。それだけでした。
  いちばん近くの町に泊まったのですが、古くからの観光地に最も近い町でしたが、土産物屋らしきものはありませんでした。ただ普通のアイルランドの田舎の町のたたずまいでした。夕食を食べるところも、いくつかしかない町でした。生活に必要な小さなスーパーマーケットが3つ、床屋や美容室などの専門店がいくつかあるような、ごく普通の田舎町でした。ここは、地元の人とたちが、生活に必要なものを手に入れるために集まる、町本来の意味を持っているところなのだという気がしました。でも、とても、静かな町でした。アイルランドの人たちは、観光客が来ても、我を忘れることがないのでしょうね。
  自分たちがすべきこと、そして通り過ぎていく人たちには、最低限のサービスで済ませている様な気がします。自分たちの生活を崩していない気がします。昔から生きてきた方法を守り、それが普遍性、恒久性を持っていることを知っているように見えました。
  もう一度訪れて、何日か滞在したいところです。


Letter▼ ライブ講義・老後のこと行

・ライブ講義・
来週から集中講義があります。
15回分を4日で、リモートでの授業です。
ライブでの講義でおこなってきます。
受講生が少ないので、顔を見ながら、
対話をしながら進めるつもりです。
現在も、講義内容を練っています。
前期の授業が終わってすぐなので、
準備の時間が足りなくて困っています。
採点も遠隔での課題が大量にあり、
それぞれを評価しなければならないので大変です。
短時間ですべてをこなさなればなりません。

・老後のこと・
海外の野外調査には、この大学に来て数年は
行っていましたが、その後テーマの変更もあり、
まったくでかけていません。
多分、残された在任期間では
海外調査にはいけそうにありません。
退職したらと思っていますが、
高齢の上に海外での自家用車の運転は少々心配です。
特に欧米は時差ボケなどがあると事故が心配です。
ツアーにしょようかなどとも考えています。
もう、老後のことを考える時期になってきました。



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