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Essay ▼ 186 竜宮の潮吹き:岩脈と信仰
Letter▼ リモートにて・調査へ行きたし


海岸沿いに見える岩脈。


岩脈は色鮮で、暗赤色の部分が急冷縁。


岩脈はかなり続いている。


海岸沿いに見える岩脈。


海岸沿いに見える岩脈。


岩脈が貫入している地層。粗粒砂岩で流離がよく見える。


岩脈が貫入している地層。淘汰が悪い角礫岩。


海岸に向かって朱色の鳥居が並ぶ参道。


参道の鳥居。


参道の鳥居。


参道の鳥居。


参道の鳥居。

(2020.06.15)
 新型コロナウイルスの影響で、しばらくどこにも出かけられない日々がつづています。多分、多くの人が同じ思いを抱いていることでしょう。このエッセイで、少しでも旅に出た気分を味わっていただければと思います。

 今回は、山口県の北西部にある長門市の話題です。昨年8月末の調査は、悪天候に祟られていたのですが、大雨の秋吉台の翌日、数少なかった晴れた日に訪れた地でした。
 長門市は、下関市と萩市の間に位置しており、今回の目的地は、海岸の露頭です。長門市の海岸は、日本海に向かって、東には青海島(おおみじま)が、西には油谷(ゆや)半島から向津具(むかつく)半島が、牛の角のように、曲がりくねりながら突き出ています。今回訪れたのは、油谷半島の付け根にあたる油谷(ゆや)津黄(つおう)の海岸です。
 油谷津黄の海岸は、複雑な海岸線になっており、岩礁や洞、小さな入り江などの景観があり、北長門国定公園にも指定されています。高さ200mを越すところもあるような、切り立った崖の海岸になっています。この崖は、海での浸食でできた海食崖です。
 津黄の海食崖に「竜宮の潮吹き」と呼ばれるところがあります。崖の海面近くには、小さな穴(縦1m、横20cm)隙間が空いているそうです。海が荒れて波が激しくなって、この穴に波が当たり海水が入り込むと、中の空気が圧縮され、穴から一気に外に吹き出します。その時、一緒に音と立てて空気が飛び出すとともに、海水も吹き上がります。このような現象は「噴潮(ふんちょう)」と呼ばれています。条件(北東の風)が合えば、最大30mの高さにまで噴潮が上がっていくそうです。その様子は、龍が天に登るように見えるとのことです。残念ながら、私が訪れたときは、噴潮はありませんでした。この噴潮現象は国の天然年記念物及び名勝に指定されています。
 海岸の露頭は、津黄安山岩と呼ばれる火山岩からできています。そしてこの竜宮の潮吹きの起こる崖には、みごとな岩脈がみられます。典型的な貫入岩を観察することができました。岩脈は、幅15から20mで、少し陸側に傾いていますが、貫入面がきれいに見えています。ただし、岩石は安山岩ではなく、デイサイトと呼ばれる火山岩です。
 岩脈は変質していて、赤褐色や黄色、白っぽくなったりと、色合いが平行になっています。このような並行な色合いは、マグマが貫入した時、流れた様子をそのまま反映したもので、流理構造と呼ばれます。貫入面に近いところは、赤褐色になっており、緻密細粒で、急冷縁と呼ばれるものがよくわかります。これれらの特徴は、このデイサイトが貫入岩であることをよく表しています。
 この周辺には、前後して火山活動が多数起こっています。今岬玄武岩、津黄安山岩、デイサイト岩脈に区分されされています。今岬は、ここから6kmほど東にあり、海に1kmほど突き出たところを中心に、今岬玄武岩やその火砕物が分布しています。この貫入岩は、津黄安山岩の分布地域にあります。
 津黄安山岩は、安山岩溶岩を主としていますが、下部に巨礫岩、中部に火砕岩質の礫岩から砂岩、泥岩の地層があります。デイサイト岩脈は、この津黄安山岩類に貫入しています。貫入されている津黄安山岩類は、火山砕屑物を主としていますが、粗粒で淘汰の悪い堆積物(礫岩から砂岩)になっています。地層面が明瞭ですから、水中で堆積した地層のようです。デイサイトは、3500万年前ころに貫入したマグマだとわかっています。時代は、古第三紀始新世後期になります。
 岩脈を見に来たのですが、竜宮の潮吹きは、残念ながら噴潮現象は見られませんでした。この噴潮現象の海岸には、元乃隅(もとのすみ)神社という有名な観光地でもあります。当然ですが、この神社のほうが有名で観光地となっています。
 この神社は、貫入岩の崖よりさらに上の崖に建っています。神社から海岸まで曲がりくねった100m以上の急な坂道が参道になっています。そこに多数の鳥居(123基あるそうです)が並んでいます。その並ぶ鳥居が壮観で、観光名所となっています。
 昨年行った時も、平日にもかかわらず、駐車場には車がいっぱいで、歩いている観光客も多数いました。駐車場から海岸まで下って、岩脈をじっくりと観察しました。海岸を散策するのんびりと観光客は少なく、岩脈に興味を持っているのは私だけでした。まあ、地質や石というマイナーな興味なので、しかたがないのでしょう。でもこの岩脈はなかなか見応えがあったのですが。じっくりと岩脈を見た後、鳥居の列が見事な参道を登っていきました。
 元乃隅神社は、もともとは元乃隅稲成(もとのすみいなり)神社という名称だったそうですが、CNNが2015年に「Japan's 31 most beautiful places」(日本で最も美しいところ31)に選んだ中にはっていたことで、海外からも多数の観光客が来るようになりました。ところが、長い神社名は外国人にわかりにくいということで、2019年に現在のものに変更したそうです。外国人、観光のために、社名を変更とは驚きです。まあ、考え方はいろいろですが。
 ホームページをみたところ、元乃隅神社は新型コロナウイルスの感染防止のため、現在は「参拝中止」だそうです。境内と鳥居内には入れないとのことでです。ただ、龍宮の潮吹は、自由にいけるようです。


Letter▼ リモートにて・調査へ行きたし

・リモートにて・
北海道、札幌も緊急事態宣言が解除されました。
札幌ではまだ新規感染者がでていますが、
だんだんと状況は好転しているので、
順次、レベルはゆるくなっていくようです。
大学でも先週からレベルもひとつゆるくなりました。
とはいっても、学生および部外者の入構禁止は継続中です。
現在、講義も会議も、すべてネット経由のリモートでの対応です。
私は、毎日、大学の研究室まで通っています。
研究とリモート授業の準備があるためです。
研究室内は一人きりなので、マスクはしていませんし、
通勤も人の少ない時間帯、場所しか通らないので
マスクは不要なのでしていません。
ただ、大学で人に会う時(少ないですが)のみ
マスクを使用することになります。
そんなときは、ついついマスクを忘れて、
研究室に取りに戻ることもあります。
休みも家内が買い物をしてくれるので、
出かける必要はありません。
まあ、いつもの日常の研究生活を同じですかね。

・調査へ行きたし・
調査に出れないことが辛いですね。
今年予定していた調査は、
四国、東北、北海道3箇所でした。
それが道内は今後可能かもしれませんが、
道外は予定が立たないので諦めることにしました。
でも、9月以降なら道内なら
調査にでることは可能かもしれません。
期待していますが、どうなるのでしょうかね。



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