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Essay ▼ 185 カナディアン・ロッキー:時間への思慕
Letter▼ 定年後は・基準


水平な地層の見える山頂。


水平な地層の見える山頂。


少し傾いた地層の見える山頂。


ほぼ垂直の地層の見える山頂。


主局した炭酸塩岩の地層。


氷河に削られた岩。


山岳の氷河。


山岳氷河からその末端。


U字谷と湖。


小さな山岳氷河。


氷河に削られた岩石(氷河擦痕)。


巨大な河床をもつ河川。

(2020.05.15)
 カナダのロッキー山脈は、若いときに何度が訪れたので、再訪したい地域の有力候補です。そんなカナディアン・ロッキーへの思い出を振り返りながら、大陸に形成に流れた時間へと思いを馳せましょう。

 新型コロナウイルスの影響で、どこにも出歩けない自粛生活が続いています。5月のゴールデンウィークには道南を、6月の教育実習の指導に合わせて、岩手を調査する予定をしていました。それらはすべてキャンセルになりました。また、夏から秋にかけての四国の調査も未確定になり、予定は立られません。GeoEssayのための新しい地域が紹介できるのは、いつになるかは不明です。新型コロナウイルスの期間は、海外や以前に調査したものを利用して紹介していくことにします。
 海外については、以前にもガラパゴスやエディアカラ、バージェスなどを紹介したことがありました。いずれもかなり前にいったところになるので、現状はどうなっているかは、定かではありません。その点はご了承ください。
 私にとって、最初の海外旅行がカナダでした。カナダになったのには理由がありました。修士課程の2年目の春から、恩師がカルガリーの地質調査所へ赴任されました。その以前に、恩師の奥さんもカルガリー大学に滞在していました。そのため、修士論文のための指導が充分できないが、博士課程に入ったらカナダに呼んであげるといわれました。それを励みに修士論文を作成し、博士課程の試験にも合格できました。そして晴れて、博士課程の1年生の夏休みに、カルガリーにある恩師のアパートにお邪魔して、50日ほど滞在させていただきました。
 恩師の家族とバンフやその手前にあるミッドフォード(Mitford)へハイキングにいったり、恩師と東海岸の各地へ地質調査にいきました。その旅の帰りには恩師の娘さんたちを伴って帰国してきました。いろいろ稀な経験をさせてもらった、はじめての海外旅行となりました。
 その後もカナダへは、調査で3度いきました。いろいろな思い出もあるのですが、今回はカナダのロッキー山脈(カナディアン・ロッキーと呼ばれています)を紹介していきましょう。
 カナディアン・ロッキーでは、バンフ(Banff)国立公園がもっと有名でしょうか。そのバンフへは、山脈の東に位置するカルガリー(Calgary)から入るのが一番近くで便利でしょう。
 ロッキー山脈には、アルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州にわたって、いくつもの国立公園があります。バンフ国立公園は、カナダでは最初の国立公園になっています。バンフ国立公園の西には氷河(Glacier)国立公園があり、少し北にはジャスパー(Jasper)国立公園があります。バンフとジャスパーの境界には、コロンビア氷河を間近に見れる峠もあります。南西隣にはコーテナリ(Kootenay)国立公園が、さらに西にいくとヨーホー(Yoho)国立公園があります。このような国立公園をめぐるとカナディアン・ロッキーを満喫できます。
 ロッキー山脈は、西から東へ、主稜線(Main Ranges)、その西の山並み(Front Ranges)、前縁部の山並(Foothillos)をへて、大平原へと、地形が変化していきます。森林限界を越えた山並みには地層がきれいに見えます。その地層は山ごとに傾斜が異なったり、褶曲していたり、色合いが異なったり、さまざま景観が生み出しています。
 いずれも素晴らしい景観を見せてくれるのですが、なんといっても山脈が見事で雄大です。山脈のスケールが日本のものを遥かに凌駕しているため、日本の形成機構を当てはめることができません。景色のでき方は、日本のものとは全く異なっています。北米大陸のロッキー山脈の地形を見るときは、大陸の地層形成のメカニズムと、氷河の知識を持って見ていかなければなりません。
 まずは地層ですが、主稜線は、古生代(カンブリア紀〜シルル紀、一部プレカンブリア紀)の比較的平らな地層からできています。その西の山並みは、きつく傾斜し、曲がった古生代の石灰岩や苦灰岩の地層からできています。その規模(長さも幅も高さも)は、非常大きなものです。前縁部の山並は、中生代(ジュラ紀〜白亜紀)の砂岩、頁岩、石炭の地層からできています。
 地層の形成は、20億年以上前からおこっており、その堆積物は大陸棚にたまり続け、その厚さの合計は6000m以上に達すると考えられています。その後、17億〜5億年前にかけて、西にあった沈み込んでいく海のプレートに押されて、大陸棚に広くたまった地層は、縮められ山ができ始めました。山脈と大陸棚の間には内海があったのですが、そこには堆積物が溜まりつづけます。
 現在の位置でみると、西から東に押されて地層が曲げられました。押し縮められた地層は、激しく変形し褶曲しなが、高さも増していきます。東西の圧縮によって、南北に長く伸びる山並となりました。3000mを超える高い山並みになり、大陸の西側に聳えていくようになります。
 このような大地の営みはプレートテクトニクスによるものです。しかし、同じプレートの営みでも、日本の山並みは火山列がつくる山並みが多くなっています。日本列島の古い山では、火山を作り出したマグマが地下でゆっくりと冷え固まった深成岩が侵食で露出しています。日本列島では、沈み込みにともなうマグマの作用が重要になっています。
 ロッキー山脈の景観には、氷河が重要な役割を果たしています。河川の侵食では谷は断面がV字に削りこまれていきますが、氷河によって削られた谷はU字になります。氷河が流れた谷は、下流ほどU字の規模が大きくなり、その雄大さが圧倒的な景観となります。ロッキー山脈の河川も、日本列島のものと規模が異なり巨大なものとなります。
 平原には、山脈からきた河川が大河となって流れます。そこでは運搬作用より堆積作用が強く働きます。しかし、長い目でみれば、この大陸の平原も、侵食を受けて平らにされてきたものです。今は乾燥したまったくの平原であっても、そこには長い時間をかけた河川の浸食作用が働いていました。そして最後の氷河期には、氷河によって平原が侵食されて、さらに平らになりました。氷河によって運ばれた迷子石などが、平原に点々と転がっていてる景観もあります。
 日本列島の形成に流れている時間と、カナディアン・ロッキーから大陸平原にかけて時間は、異なっているようです。カナンディアン・ロッキーからは、そんな時間の流れ方の違いも感じることができるでしょう。


Letter▼ 定年後は・基準

・定年後は・
定年まで少し時間がありますが、
定年後はのんびりとゆったりと旅してみたいと、
ぼんやりと考えています。
ひとつの地域に、1週間ほど滞在しては、
次なる地へと移動して、また滞在する。
そんな旅行を数ヶ月してみたいと思っています。
グルーズ旅もいいかと思ったのですが、
自分の行きたいとこへは行けない、
じっくり見たいところが見れない、
という不満が湧きそうな気がします。
滞在の旅の候補として、ロッキー山脈周辺があります。
オーストラリアやニュージーランドもいいのですが、
変化に富んでいるのは、アメリカ大陸でしょう。
そんな夢想を自粛中に考えています。

・基準・
家内がよく利用している地元の店舗の従業員に
新型コロナウイルスの感染がありました。
店も感染予防がきっちりとされていたようなので
多分、周囲への感染の恐れはないかと思います。
日本全国でこのような感染の危険性はあります。
ウイルスは見えないので、ひたすら自粛し、
地域全体で防疫していくしかないのでしょうね。
大学は、前期の科目すべてが、原則遠隔授業が決定しました。
どうしても対面の授業が必要な科目については
警戒レベルに応じた基準を設けて、
申請に応じて順次授業を実施していくことになります。
それがいつからできるかは、まだ目処がたっていませんが。



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