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Essay ▼ 181 日御碕:八百万の節理
Letter▼ ズーズー弁・神在月


少し斜めになった平坦面。


垂直面の不思議な模様。


細かな柱状節理。


平坦面から崖面まですべて柱状節理からなる。


平坦面の割れ目。不規則な割れ方をしている。


日御碕の東側にある出雲松島。


日御碕の西側にある経島。


出雲大社の大きな注連縄。


出雲大社の大きな注連縄。

(2020.01.15)
 出雲大社から少し北西に足を伸ばすと、日本海に出ることができます。海岸は断崖になっていますが、小さい八百万の方形の岩からできます。多数の岩が織りなす不思議な模様を、そこにみることができます。

 島根県出雲市は、松江市から少し西にある大きな街です。山陰地域では松江市、鳥取市に次いで、多くの人口があります。出雲市には、出雲大社があり、もともとは簸川郡(ひかわぐん)大社町としてありましたが、2005年に市町村合併で出雲市となりました。
 出雲は、出雲大社のある地で、神話でも有名です。しかし、神話だけでなく、発掘でとてつもなく大きな柱がみつかっているため、巨大な社があったことがわかってきています。
 かなり以前ですが、鳥取に住んでいる時に、出雲には訪れたことがあります。その時は、出雲大社の大きな注連縄(しめなわ)の記憶もあるのですが、それが自身の記憶なのか、それともよく見るメディアのものなのか、よくわかりません。
 昨年秋に、出雲大社にいきました。大社も巨大な注連縄も、新たな記憶に置き換えることができました。しかし、今回の目的地は、もう少し足を伸ばした先にある日御碕(ひのみさき)でした。日御碕で露頭を見ることでした。以前の日御碕の記憶は、崖と風の強さしか残っていませんでした。
 日御碕は、出雲大社から車ですぐのところです。ただし、道があまり広くなく、くねくねしているで注意が必要です。日御碕の駐車場から少し歩くと、岩石からできた露岩があり、その先は崖になっています。崖沿いには散策路があり、露頭で岩石の産状をいろいろ見ることができます。
 断崖は、日御碕では20〜30mほどの高さがありますが、崖の上は比較的平坦面になっています。断崖は、日御碕に向かう南側の道路沿いからはじまり、日御碕の東側まで数kmにわたって続いています。このような地形は、海岸段丘と呼ばれています。
 海岸段丘は、もともとは海岸にあり、波に侵食され、平坦になっていたとこでした。そこか地殻変動で隆起したものです。段丘の形成は、数万年前のできごとでした。そのため、段丘上には堆積物もあったのですが、ほとんど侵食されているようです。また、断崖の上には固い段丘面が露出していのですが、それも侵食されています。侵食されて谷になった地形は、海底にも続いているそうです。
 段丘面を成している日御碕の露岩は、柱状やサイコロ状、蜂の巣状の割れ目をもった白っぽい岩石からできています。まさに八百万(やおよろず)というほど多数の角張った石が規則正しく並んでいます。割れ目でき方には、なんとなく方向性があるように見えます。
 柱状の割れ目といえば、柱状節理を思い浮かべます。柱状節理とは、マグマが固まるとき、体積が縮小することで、小さくなるときの割れ目でできます。割れ目は冷えたところから垂直に伸びていくので、それが節理の方向となっています。これまで紹介してきた柱状節理は、玄武岩質マグマのものが多かったのですが、それとは異なった見かけになっています。
 玄武岩の節理の場合、6角柱から5角柱で、どれも似た断面の形をもっていました。ここでは角柱ではあるのですが、その断面が不規則になっています。玄武岩の柱状節理は、角柱の径が数十cmから時には1m近いものもあるのですが、ここでは5〜10cm程度でかなり小さいサイズになっています。
 また、玄武岩は黒っぽい色なのですが、ここでは白っぽい色の火山岩なので、明らかに異なった性質のマグマのものです。日御碕の柱状節理は、流紋岩質マグマからできたものです。流紋岩質マグマは、新第三系中新世(1600万年前)に活動したもので、上昇して地表付近でドーム状(溶岩ドームと呼ばれます)になりました。地表付近の地中で、噴出した溶岩よりは、ゆっくりと固まりました。その冷え方が柱状節理の方向性となっています。
 日御碕の散策路の東側からは、点々と小さな島が見えます。そこは、「出雲松島」と呼ばれています。西側には港があるのですが、その港に2つの島からなる経島(ふみしま)があります。仏教の経文を積み重ねたようなので、名前がつけられたとのことです。しかし、日御碕からはその由来の形状は、みることがで来ませんでした。この経島は、12月ころにウミネコの飛来して、4、5月に産卵し、7月には北に渡っていくとのことです。ウミネコ繁殖地として国の特別天然記念物になっています。
 出雲は、神話や大社で有名です。日御碕の柱状節理も見応えがあります。日本の神様は、八百万の神として至るところにいることになっています。日御碕の小さな節理は八百万より多いかもしれません。多様な神様がおられるように、節理にも2つとして同じものがない、多様さと不思議さがありました。


Letter▼ ズーズー弁・神在月

・ズーズー弁・
出雲というともうひとつ、思い出すことがあります。
それは、松本清張の「砂の器」です。
出雲には、ズーズー弁に似た方言があります。
砂の器では、奥出雲の地名の「亀嵩(かめだけ)」が
その地の出身者が「かめだ」と発音していたというのが
手がかりとなっていました。
残念ながら今回は、出雲で
そのような言葉を聞くことができませんでした。

・神在月・
旧暦10月は、神無月と呼ばれます。
全国の神様が出雲に集まり、
神様が不在になるためです。
出雲では神在月と呼ばれることになります。
全国八百万の神様が集まるため、
出雲各地の神社では「神迎祭」がなされます。
訪れたのは9月上旬ですから、
旧暦の7月下旬にあたります。
11月であれば、神々出会えたかもしれませんね。



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