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Essay ▼ 177 須佐:フォルンフェルスの畳
Letter▼ 荒天・論文再開


畳岩の遠景。


畳岩の全景。


畳岩の全景。


畳岩の全景。


畳岩の全景。


海食台をなしている地層面の礫。


白黒の互層。


海食崖が続く海岸。


多々意味ワイの遠景。


畳岩に団体客が・・・。


畳岩のパノラマ。

(2019.09.15)
 山口の須佐の海岸には、畳を重ねたような崖があります。積み重なった畳は、地層からできています。この地層はもともとの堆積岩から、少し変化をしています。小さな変化の露頭は、大きな変化の縁辺にあたります。


 9月上旬、島根から山口へと調査にいってきました。その目的の一つに「須佐のフォルンフェルス」と呼ばれる露頭を観察することがありました。須佐(すさ)は、山口県萩市の北東に位置しています。須佐の海岸に、特に「畳岩」と呼ばれる露頭があり、有名になっています。
 当日は幸い晴れていたので、じっくりと見ることができました。その露頭には、最初は誰も訪れている人はいなかったので、一人で静かにみることができました。露頭を詳しく観察していると、知らないうちにライダー服を人が後ろにいたので驚きました。そのうち、グループの客がバラバラと来るようになりました。ここは、萩ジオパークや地質百選などにも選ばれており、駐車場や遊歩道なども整備されているため、大型の観光バスも乗り入れています。やがてバスの団体がやってきたので、邪魔にならないように引き上げることにしました。1時間ほどは静かに観察できたので、引き上げることにしました。
 さて、この「須佐のフォルンフェルス」ですが、フォルンフェルス(hornfels)とは、変成岩の一種です。
 岩石のでき方(成因)には、大きく分けて火成岩、堆積岩、そして変成岩の3つがあります。火成岩は、何らかの固体(岩石)が溶けて液体(マグマ)が形成され、液体(マグマ)が再度固化してできたものです。堆積岩は、なんらかの岩石(マグマや水でもいい)が破砕(マグマの場合は火砕、水の場合は沈殿や蒸発)して、バラバラ(未固結)の固体の集合物が堆積して、時間をかけて固まったものです。一般には、固体物が破砕され、運搬され、堆積したものということができます。
 変成岩は、いずれかの成因の岩石(変成岩でもいい)が、高温や高圧、あるいは高温高圧に条件になり、もとの岩石(原岩という)とは異なった見かけ(組織)や構成(鉱物)になったものをいいます。変成作用の程度が弱ければ(低温や低圧)、もともとの岩石の見かけや構成が残され変成岩になり、強ければ(高温や高圧)、原岩の痕跡が少ない変成岩になります。変成条件の差、原岩の差などの組み合わせにより、さまざまな変成岩ができることになります。変成岩は、原岩から変化したものですが、一部が溶けても(マグマにならない)も一部が砕かれても(砕屑物にならない)も、もとの岩石の痕跡が残っていることが必須条件となります。
 変成作用の原因として、海洋プレートの沈み込みが重要になります。沈み込みにつれて、冷えた岩石が高圧条件にさらされます。沈み込み帯の深部では、低温高圧の条件で、帯状に変成岩が形成されます。このような変成岩は、構造作用で広く分布することがあるので、広域変成岩と呼ばれています。
 沈み込みに伴って多様な組成のマグマ(平均すると安山岩質の組成)の形成され、火成作用が活発におこります。これは島弧の火成活動とも呼ばれ、日本列島の火山列はこの作用によります。地表で火山が多数あるということは、深部にはマグマだまりも多数できていることになります。多数の火成作用や沈み込みによる圧縮により、列島には山脈が形成されていきます。このような沈み込みにともなう深部の火成作用が起こっている周辺では、高温中圧の変成条件となり、これも広域変成岩となります。高温中圧の広域変成岩は、地下深部の条件により変成作用を受けるため、マグマも形成されますが、そのマグマが変成作用を起こしているわけであはありません。非常に深部では、かなり高温高圧条件のものもできることがあります。しかし、低温高圧の広域変成岩とは、変成条件が明らかに異なったものになります。海洋プレートの沈み込みに伴って、低温高圧型と高温中圧型の広域変成岩が対をなすことになります。ただし、同時代にできた変成岩が、地表に並んで露出するとは限りません。
 変成岩にはその他にも、ある程度の大きさをもったマグマが貫入すると、接触されたり、近くにある岩石が高温になって変成作用を受けることがあります。このようにしてできたものを、接触変成岩といいます。高温中圧型の広域変成岩にも接触変成岩が形成される条件をもっていますが、接触変成岩は、一般に熱源となる火成岩の周辺にみられ、変成を受けた地域がはっきりと限定できるものをいいます。
 前置きが長くなりましたが、須佐ホルンフェルスは接触変成岩になります。畳岩の北にある高山(こうやま 標高532.8m)を中心に分布しているマグマが、斑レイ岩として固まった時、周りにあった堆積岩などが変成作用を受けました。高山斑レイ岩の貫入は、中新世(1400万年前)でした。変成岩の原岩は、山島火山岩、阿武層群や須佐層群などです。マグマに近いところでは変成作用の程度も強く、離れると弱くなります。
 畳岩は、マグマから一番離れたところで、変成作用の程度も弱く、堆積岩の特徴がそのまま残されています。変成鉱物ができているようであれば、変成岩と呼んでいいでしょうが、変成作用も弱いため、変成岩と呼ぶには少々問題があるかもしれません。ただし、熱によって岩石は固くなっているため、崖や海岸の平面も残りやすくなっていたのでしょうか。それが、見事な露頭となっているのでしょう。
 畳岩の原岩は1650万年前の須佐層群で、砂岩から泥岩の互層で、砂岩は白っぽく見え、泥岩は黒っぽく見え、白黒の縞模様がきれいに残されています。この縞模様が、畳を重ねたように見えるので、畳岩と呼んだそうです。
 畳岩は、一方が切り立った崖で、そこに白黒の縞模様の地層がみえます。崖の前面には、平らな面が広がっています。その平面には、大小様々なサイズの円摩された礫が見え、地層の境界の面(地層面)となっています。地層面が礫が多かったため、剥がれやすくなったと考えられます。この地層面が、波で侵食され、海食台となっています。フォルンフェルスには、節理も発達しているので、その節理で割れたものが、畳岩の海食崖を形成しているようです。
 畳岩は、事前の情報もたくさんあって、露頭写真もみていました。写真はたいてい同じような構図のものが多く、いって露頭を見ても既視感があます。遠景でみたり、露頭に近づいてみたときのほうが感動しました。
 目的地を探しているときは、あまり調べすぎると感動が減ってしまいます。しかし、調べなていかないと見落としもあります。その調べる程度が難しいものです。畳岩の次に高山も見たかったのですが、内陸の目的地が優先していたので、そちらを見るために移動することにしました。その目的地は、次回のエッセイとしましょう。


Letter▼ 荒天・論文再開

・荒天・
今回の調査では、山口が半分くらいありました。
そのため、8月下旬の北九州の豪雨の影響を
大きく受けてしまいました。
宿泊地を決めているので、予定通り進むしかありません。
進むところが、遠たところが、
次々と警報がでるような天候でした。
調査日程の3分の2は雨でした。
3分の1は豪雨で、車から出ることもできないほどでした。
泊まるところも大丈夫かと心配になるような荒天でした。
幸いすべて予定通りに宿泊でしました。
みることができなかったところが多数ありました。
残念なので、別のエッセイで紹介したいと思っています。

・論文再開・
大学は夏休み中ですが、来週から後期がはじまります。
その前に校務出張、授業開始直後に研究出張が
その間に祝日もあるので、
日程がつまってくるので、少々ばたばします。
まあ、休みは最低限にして、研究を進めていけばいいのです。
一番の優先は、書きかけの論文の執筆です。
8月下旬から、中断しているので
思い出すのに少々時間が必要かもしれません。



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