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Essay ▼ 176 ウスタイベ:柱状節理の千畳敷
Letter▼ 穏やかなお盆・バタバタと


枝幸とウスタイベ岬の位置。


ウスタイベ岬の位置。


上と同じ範囲の地質図。


上と同じ範囲の傾斜量図。


上と同じ範囲の地上開度図。


上と同じ範囲の地下開度図。


ウスタイベの千畳岩。


ウスタイベの千畳岩。柱状節理がある。


ウスタイベの千畳岩。流理による並行節理。


真珠状安山岩。


岬の先端の露頭と波。


岬の先端の露頭と波。

(2019.08.15)
 道北のウスタイベ岬があります。岬は安山岩でできています。流理や節理があり、広い平面となっています。似たも火山岩類が、道北には点々と分布しいてます。しかし、その由来はよくわかっていません。


 今年の春は、道北に2度ほどいっています。特にオホーツク側に海岸を中心にみています。秋にも、もう一度出かける予定です。内陸域もみたいので、あまりきれいな露頭は、すぐには見つかりそうもありません。そこで海岸の道路沿いをみていくことにしました。
 道北のオホーツク側にある枝幸(えさし)は、道南の江差(えさし)と同じ発音で、いずれもアイヌ語で「エシヤシやエサウシ」から由来しています。その意味は「するどく突き出した岬(崎)」というものだそうです。
 さて、今回紹介するのは、枝幸の町の少し北にあるウスタイベ岬です。この岬や北見神威岬などを含めて、1968年に北オホーツク道立自然公園に指定されています。ウスタイベ岬は、公園としてきれいに整備されています。
 ウスタイベの語源には諸説あるようです。枝幸町がウスタイベ岬に設置した看板には、アイヌ語の「ウス・タイ・ペ」で、「入り江の林の川」とされているが、松浦武四郎の西蝦夷日誌では、「湾に海草多く打上、腐りて臭きと云儀、ウシは深き、タイペは塵芥の事也」とされています。武四郎は、アイヌ語の「ウシ・タイペ」を語源としていると記しています。「ウシ」には「多い」という意味があり、「タイペ」は塵芥(チリやアクタのこと)という意味があり、あわせて大量の海藻が腐ったものが、湾に打上げられているということに由来する、としています。
 ウスタイベ岬は、「千畳岩」と呼ばれる観光名所となっています。「千畳」というのは、畳が1000枚も敷けるほど、平坦で広いところという意味で、よく使われる比喩です。以前「173 鴎島:火山砕屑物の守り」(2019.05.15)で、江差の鴎島(かもめ)にも、平坦な「千畳敷」と呼ばれるところがあるのを紹介しました。海岸で広く平らなところでした。鴎島のものは、比較的新しい凝灰質の岩石があり、柔らかくて波の侵食を受け、海食台になっていました。
 ウスタイベ岬の「千畳岩」は、海岸にありますが、海食台ではありません。固い岩石からできます。もともとの岩石が、そのような平坦面をもっている性質だったのです。ウスタイベ安山岩と呼ばれています。マグマは、中新世(1370万〜1380万年前ころ)のもだと考えられています。この安山岩は、マグマが地層の中に貫入して、固まったものと考えられています。
 ここの安山岩は、岩石の固まり方によって、いろいろな見かけ(岩相といいます)になっています。ガラス質から真珠岩質、また斜長石の斑晶をもっているものあります。流理模様もあります。流理とは、マグマが流れたときに結晶やマグマの色の違い、結晶度の違いなどが、流れにそってできた模様です。この流理は、ここでは平らになっています。また、この貫入岩には、柱状節理もあり、節理に沿って割れ目もできています。ただし、六角柱状にはなっていません。流理や節理にそって割れ目がでています。節理は垂直で直線的なものと、水平にもあります。このような節理と流理が、ウスタイベ岬の千畳敷をつきっています。
 道北には、中新世のマグマの火山岩が点在します。それらの安山岩は、1400万〜900万年前に活動したもので、500万年ほどの期間に、広範囲で大量の火山岩を放出しました。道北では、南北(正確には北北西−南南東)に点々と分布していますが、日本海からオホーツク海まで、日本海(礼文島、天売島、焼尻島)、西、中央、東の4つの火山列に区分されています。ウスタイベは東に位置しています。
 日本海は最も少なく、それ以外が格段に多くなります。西が少なく、中央が多く、次いで東が多くなっています。中部は島弧の特徴的な安山岩質マグマ(カルクアルカリ岩系列と呼ばれています)で、それ以外の地域では、安山岩だけでなく、玄武岩のマグマの活動もおこっています。
 しかし、これらのマグマの活動は、現在の太平洋プレートの沈み込みでは説明できない活動です。また、日本海の拡大時期(2000万〜1500万年前)とも一致していません。非常に不思議なマグマの活動が、広域に起こったことになります。これらの火山群の活動の成因については、まだ完全には明らかになっていません。
 仮説として、オホーツク海(千島海盆と呼ばれています)の拡大に関連した活動ではないかと考えられています。千島海盆の拡大は、1500万〜1400万年前にはじまります。それに伴って玄武岩質マグマの活動が起こり、その熱で島弧の安山岩質マグマが1400万年以降活動したのですが、それも900万年前には終わります。
 マグマの化学的特徴は、明らかに島弧のものです。しかし、活動時期や、いろいろな特徴は、典型的な島弧とは違ったものになっています。マグマの由来は、地名のような、これと限定できるものではなさそうです。ただいえることは、非常に特異な地質場での活動だったということです。
 今年の5月に訪れた時、晴れてはいたのですが、風が強く、海の波が荒いときでした。ウスタイベ岬には、今年だけでなく、10数年前にも来たことがあります。その時も、風が強く、ゆっくりと見れなかった記憶があります。また江差の鴎島の千畳敷では、晴れでしたが、風の強い日でした。秋にも訪れる予定ですが、そのときは穏やかな天気であることを願っています。


Letter▼ 間宮林蔵・冷夏・夏休み

・穏やかなお盆・
北海道は、穏やかなお盆となりました。
北海道の暑さも一段落し、
秋を思わせるような快適な時期となりました。
大学はお盆は、休校になりますので、非常に静かになります。
こんな時こそ、研究に打ち込むと、はかどります。
我が家はお盆とはいっても、特別ことはしません。
ですから、淡々と静かに仕事をしていましょう。

・バタバタと・
8月下旬から9月中旬にかけて、講義のない時期です。
しかし、公私ともに、ばたばたと忙しくなります。
校務出張、入試、本州への調査、学生の実習指導、
京都への帰省などが、次々と続きます。
でも、じっくりと長期の調査をし、
そして英気も養いたいものです。



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