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Essay ▼ 164 小砂子:メランジュ
Letter▼ 体幹の衰え・執筆作用の終了


小砂子への海岸線。


メノコシ岬から北への海岸線。


断層による混在岩。新たしい時代の火山岩(白っぽいブロック)も混じっている。


層状チャートのブロック。個々だけ見ると層状チャートの地層に見える。


これ層状チャートは1mほどのブロックである。


層状チャートのブロックの周りには起源の異なる岩石が混在している。


ブロックが集まった産状。


層状チャートかららの海岸線(魚眼レンズを使用したので湾曲してみる)。

(2018.08.15)
 道南の海岸には、海に切り立つ崖が多くなっています。道路は、景色のきれいなところ走るのですが、露頭を見られる場所も限られています。そんな海岸に小砂子があります。

 小砂子と書いて、「ちいさご」と読みます。道南、上ノ国町の南にある集落です。海岸沿いを走る国道228号線(追分ソーランラインと呼ばれています)からそれて、西へ海に向かうの道に入ると、小さな漁村があります。そこが小砂子という集落です。
 国道228号線は、崖の上を切り拓いて通っています。国道は海岸より高い位置を走るので、眺めのいいルートとなります。険しい崖が連なっているので、海岸に平らなところや入江があると、時々集落があるような景観が続きます。小砂子もそのような集落のひとつです。
 小砂子には、今年、3回来ています。漁港に車ととめて、海岸線を北に向かって歩いていきます。天気がいい時は、非常に快適な砂浜の続く海岸です。転々と露頭や岩礁があり、観察していけます。目的は層状チャートがでていなかどうかを確認して、いい層状チャートがあったら、詳しく調査するつもりでした。
 海岸沿いには、崖や砂に埋れた岩礁など、さまざまな露頭があります。露頭には、岩石種として層状チャートがあるとどうかでした。変形した泥岩層、砂岩泥岩の互層などが、次々と、そして地質学的層状を保つことなくデタラメに出ています。岩礁になっているものには、崖から落ちてきた転石も紛れ込んでいるでしょうが、露頭でも断層が多数あり、異質の岩石が混在していることが観察できます。さらにそこに、白っぽくみえる火山岩(デイサイト)も貫入しています。非常に複雑な産状になっています。
 海岸を1kmほど進んでいくと、メノコシ岬という小さな岬にたどり着きます。その岬の崖に、不思議な露頭があります。それは層状チャートや赤色頁岩などが破砕されたブロックと混在しています。やっと目的の層状チャートを見つけたのですが、ブロックになっています。
 このような、成因の異なる岩石が、断層などで混在している産状は、メランジュと呼ばれるものです。メランジュは、このエッセイで何度も取り上げています。付加体によく見られる特徴的な産状でもあります。
 海洋プレートが海溝で沈み込む時、陸側に海洋域の岩石が取り込まれて付加していった地質体を「付加体」と呼びます。付加体には、海洋域の岩石として、海洋地殻を構成している玄武岩、海洋底に堆積した層状チャート、ときには海洋島の玄武岩やサンゴ礁を形成していた石灰岩なども取り込まれることがあります。
 付加体には、陸から由来した砕屑性の堆積物も取り込まれることもあります。その多くは「タービダイト層」と呼ばれるものです。沿岸の堆積物が、海底の土石流によって深い大陸棚へと運ばれた堆積物ができます。土石流のような流れを「タービダイト流」と呼び、堆積物を「タービダイト層」といいます。タービダイト層は、陸から由来した砕屑性の堆積物となり、砂岩や泥岩の互層として堆積します。
 付加体が形成される時は、これらのさまざまな堆積物が、沈み込み帯で下に潜り込もうとする力、その圧縮する力により、海洋域の堆積物が、タービダイト層を巻き込みながら、多数うの斜めの断層で圧縮されながら、規則的な構造の地質体ができます。新しい付加体部分が、古いものの下に、断層で滑り込んでいきます。付加体が成長すると、上位に古い地質体ほど陸側に移動し、下位になるほど新しい付加体となります。
 付加体は、このような海洋域と陸起源の堆積物が混在した産状が形成されます。当初は付加体固有の断層な構造で形成されていくのですが、付加が継続していくと、付加体の中にはさらに大きな断層ができます。そこでは、大小さまざまの多数の断層ができます。大きな断層帯では、成因関係のないさまざまな岩石が、複雑に入り混じった状態になることがあります。このようなものをメランジュと呼んでいます。
 メランジュの形成過程を考えると、海洋地殻の玄武岩が含まれるところや、タービダイトが多くなるところ、両者が混じるところなどができるはずです。小砂子付近には玄武岩見られません。道南にはメランジュの地質体が、ところどころに分布しています。場所によっては、玄武岩が出ているところもあります。しかし、小砂子からメノコシ岬までには、深海底や沿岸域の堆積物はあるのですが、玄武岩が見たりません。
 ただし、小砂子の港付近には、大規模な岩礁帯があり、確認していなのですが、そこに枕状溶岩のように見えるとこもがあります。その岩礁に、行けないかと、何度がチャレンジしたのですが、まだたどり着けません。3回ほどいっているのですが、漁港からが一番近いのですが、4、5mほどもある高いコンクリートの壁が漁港を囲っているので近づけません。
 また、小砂子に集落に向かう道路から、尾根伝いに一箇所踏み跡があり、岩礁地帯に降りれそうなのです。しかし、そこへは細い尾根を通って、最後に急な崖を下れば海岸に降りることができそうです。しかし、足がすくみそうなルートで、私には難しいルートです。
 訪ねる度に、地元の人に岩礁に行く方法を聞くのですが、ある人は、コンクリートに長いはしごをかけていった、コンクリートに横に貼られている金網をよじ登った、細い尾根筋を降りていく人がいるなど、私が諦めている方法しか教えてくれません。機会があれば、岩礁にいきたのですが、どうなるでしょうかね。


Letter▼ 体幹の衰え・執筆作用の終了

・体幹の衰え・
年々、加齢のために、足腰が弱ってきています。
バランス感覚の衰え、足の踏ん張る力も落ちてきました。
これは体幹の筋肉が落ちているように感じます。
体幹を鍛える運動をすべきなのでしょうが、
なかなか実現できません。
腰痛予防のために、毎日ストレッチをしています。
大学への通勤を、徒歩で往復7kmを通っています。
これらの運動で、調査で通常のルートであれば
歩くことができるように体力維持をしています。
少々ハードなルートは、昔のようには歩けなくなりました。
残念ですが、野外調査の歩き方も、
年相応にしていかなければならないのでしょうね。

・執筆作用の終了・
やっと予定していた著書の執筆が終わりました。
明日、印刷屋さんに入稿します。
今回は、執筆に十分な時間が取れたので、
現状ではベストを尽くせたと思えます。
もちろん、あちこちの部分でもう少し調べたいこと、
取り入れたい内容も各所にあります。
しかし、全体の内容とバランスを考えると、
これで満足すべきでしょう。
7月下旬の最終稿の仕上げから、
編集作業でかなり集中していたので、
肩こりや腰痛が次々と発生しました。
執筆には、頭だけでなく、体も酷使していたようです。




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