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Essay ▼ 156 神倉神社:コトビキ岩
Letter▼ 継続すること・卒業研究


浮島の森。


浮島の森から見た神倉神社とコトビキ岩。


神倉神社の鳥居との石段。


鎌倉積みの石階段。


鎌倉積みの石階段。


石階段の先に赤い柵が見えてくる。


神倉神社とコトビキ岩。


神倉神社とコトビキ岩。


コトビキ岩。


花崗斑岩。


神倉神社とコトビキ岩のパノラマ。

(2017.12.15)
 太平洋沿岸では、和歌山の北東の端は熊野川で三重と接しています。熊野川の河口にあるのが、新宮の町です。ここは熊野速玉大社の前町として盛えたところです。そんな新宮の町の自然にも、面白いところがありした。

 秋の調査で新宮を訪れました。和歌山県新宮市は、熊野川の右岸にできた町です。新宮は以前にも来ていたのですが、その時は、夕方、熊野速玉大社を参拝しただけで、移動時に渋滞に巻き込まれたので、他のところをじっくり見る時間がありませんでした。今回は新宮の町の中で、見たいものが2つありました。渋滞に巻き込まれないように昼に巡りました。ひとつは「浮島の森」で、もうひとつは「ゴトビキ岩」でした。
 浮島の森は、建て込んだ町の中にあるので、カーナビがなければたどり着けないようなところでした。でも、その一角は公園になっていて、整備がされ、散策路もあり、管理人の方もおられました。現在は、浮島と知らなければ単なる池の中にある森に見えます。
 浮島の森は、新宮藺沢浮島植物群落として国の天然記念物になっているものです。浮島とは、沼に浮かている島のことで、泥炭でできているため、軽くて浮いています。1945年(昭和20年)頃までは、本当に浮いていたそうですが、今では土砂が流入して多くが固定してしまったいるそうですが、今でも西側が浮いていると考えられています。島の中の散策路に踏み入れると湿原の植相に見ます。小さいですがなかなか見ごたえのあるとこでした。でも雨上がりで蒸し暑さが印象に残っています。
 小さいところなので、浮島の森は、すぐに見終わりました。次なる目的のゴトビキ岩に向かうつもりでしたが、管理小屋には、見事は神社の写真がありました。管理の人と話をすると、ここから見えるとのことです。丁寧にここに来ればと、見える位置を教えて下さいました。そこから次なる目的地のコトビキ岩が山の上に見えました。
 そこは、車ですぐでした。神倉神社の前の小さな駐車場に車を止め、神社に入ると、鬱蒼した木の生えた杜が押し寄せてきます。9月の暑い時期でしたが、境内にはいるとひんやりと感じるところでした。鳥居は石段のはじまりに立っています。この石段も、自然石を組み合わせてつくった「鎌倉積み」と呼ばれるもので、急な階段となっています。
 大汗を書きながら急な石階段を登っていくと、やがて少し勾配が緩やかになります。そこには、巨大な手水鉢(ちょうすばち)があり、沢から引かれた水が流れていきます。ここで一息入れなさということでしょうか。この手水鉢は、石段や山全体を形成している岩石と同じ、花崗斑岩をくり抜いて作られています。
 やがて長い朱色の柵が見えてきます。柵と花崗斑岩のすべり面の間の狭い道を進むと、岩肌にへばりつくように、神倉神社が見えてきます。狭いところにある神社ですが圧倒されます。最後の神社までも石段が続いています。神社も石積みの上に建てられています。
 神社の山側には、例のコトビキ岩が聳え立っています。神倉神社にコトビキ岩が御神体としてあります。まるで神社を押しつぶさんばかりの巨石が、神社のすぐ脇に鎮座しています。地震でもあると、ごろりと動き、神社を押しつぶしそうな危うさがあります。迫力満点です。コトビキとは、ヒキガエルのことだそうで、この巨石がヒキガエルににていることから付けられたそうです。
 地震の多い地域なのに、神社の石積みも階段も崩れることなく、そしてコトビキ岩も転がることなく残っているものだと思えます。境内から下を見ると、新宮の町から海までが一望できます。非常に気持ちのいいところで、少々長めに滞在をしました。
 さて、ここまで石の名前を出しただけで、説明をしないできました。花崗斑岩(granite porphyry)とは、花崗岩の一種で、大きな斑晶をともなっています。黒いですが風化でくぼんでしまっている黒雲母、白い斜長石、透明の石英が多く、すこしピンク色のカリ長石の斑晶が、少ないですあります。このような結晶が肉眼でもよく見えます。
 この花崗斑岩は、熊野酸性火成岩類の一部をなしているものです。熊野酸性火成岩類は、付加体とともに、和歌山から三重にかけての地形や地質で重要な要素となっています。熊野酸性火成岩類は、1400万年前の酸性のマグマの活動で、深部で固まったものが深成岩の花崗斑岩になりましたが、一部にはマグマの噴出相もあり、流紋岩や凝灰岩となっています。
 花崗斑岩(花崗岩の仲間)は風化をうけると、外側からマサ状に崩れていき、中の部分が残って丸い岩(コアストーン)となります。このコトビキ岩もこのような花崗斑岩の風化の産物だと考えれます。
 神倉神社も熊野の世界遺産の一部なのですが、ひっそりとしていました。数人の観光の人も訪れていますが、少なかったです。地元の人が信仰のためにポツリと訪れていました。
 新宮では、熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)が重要な観光地となっていますが、私には熊野速玉大社の摂社にあたる神倉神社の方が好みに合っていました。ひっそりとした名所ですが、地質学的見どころがあるところで、インパクトあるところがいいですね。新宮を訪れたら神倉神社がおすすめですよ。ただし、少々きつい登りがありますが、その果に見どころがありますので、頑張ってください。


Letter▼ 継続すること・卒業研究

・継続すること・
12月も早半分過ぎてしまいました。
相変わらず忙しくしています。
つぎつぎと仕事はこなしているのですが、
仕事量が多すぎて、なかなか終わりが見えない状態です。
ですから、優先順位をつけて、
ひたすらこなしていくしかありません。
このエッセイも、書くべき場所は一杯あるので、
場所選びには困りません。
しかし、書く時間を作り出すのに困っています。
時間がないので、一気に書いてしまうことになりました。
本来なら、もう少し詳しく調べてから書きたいのですが、
行く前の予察と行った時の情報で
ほとんど書くことになりました。
私はメールマガジンは、連載を休まないこと、
時間を守って定時には出すことを心がけています。
楽しんでいただけたかどうか心配ですが。

・卒業研究・
今年の卒業研究を着実に進めていた人は
順調に早目に終えることができました。
みんな、それぞれに苦労はしたのですが、
達成感を味わたようです。
いい経験となればと願っています。
ただし、残念ながら諦めた人が一部いたのですが、
他の単位も足りなかったので、
無理せずに、これから来年度にかけて
進めていくことになりました。




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