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Essay ▼ 141 ぶつぶつ川:生活を支えてきた川
Letter▼ 気になる川・道北出張 


ぶつぶつ川源流より。


源流の湧き水。


ぶつぶつ川の源流を見る。


ぶつぶつ川と粉白川の合流部。


ぶつぶつ川源流より。

(2016.09.15)
 このエッセイでは、地形や地質で、主にその地域の特徴づけるものを中心に、取り上げてきていました。しかし、今回は少々変わったものです。ぶつぶつ川と呼ばれる二級河川の紹介です。

 8月29日から9月5日まで8日間、和歌山へ調査に行きました。いくつも興味深い地質や地形を見てきました。以前に行ったところへも、再訪しました。同じ所や露頭でも、時間や季節、天候が異なれば、違って見えます。ですから、同じ所へ何度か行ったとしても、それなりに興味は尽きません。
 今回もきれいな地質、見事な露頭などもいろいろ見てきたのですが、今回意表をついて、小さくて目立たない、だれも取り上げそうもないようなものを紹介しようかと思いました。もちろん地元の人は、メディアに何度か取り上げら多様なので、その存在と、奇妙さはよく知っているようですが、当初はほとんど知られていない存在でした。
 今回は、短い川の紹介です。
 水の豊富な日本でも、洪水被害、水争いなど、川に関する問題は、人が定住し、農業を営むようになってから、常に起こってきはずです。近代国家になってからも、流域にあった共同体の利権や紛争のタネに川はなってきました。水利や灌漑、治水は、国民にとっても、国家にとっても、重要な課題でした。そこで、河川法(1974年)という法律によって、川が管理されるようになりました。
 河川には河川法が適用される適用河川と河川法の一部が適用される準用河川とがあります。適用河川を管理するにしても、河川がいくつもの行政区分にまたがる場合は、管轄が問題となります。国が管理するものを一級河川としました。一級河川は分水嶺から支流も含めて河川全体を水系としてを指定していますので、複数の都府県にまたがる河川の多くは、一級河川に指定されています。全国で109水系あります。一級河川は109水系ですが、河川の数として1万4048になります。
 都道府県知事によって指定され、管理されるのが二級河川となります。二級河川は2711水系で河川数が7078になっています(2014年4月30日現在)。一級河川の川の数のほうが多くなっています。また、市町村長が指定し、管理も市町村長によって行われる準用河川があります。
 さて、今回紹介するのは、ぶつぶつ川です。俗称ではなく、正式名称です。東牟婁(むろ)郡那智勝浦町にある川です。粉白(このしろ)川の支流にあたるのですが、2008年10月に二級河川として指定されました。ですから、りっぱな河川の定義にあてはまるものなのです。
 実は、この川が有名なのは、日本一短い川だからです。本流に合流するまで、つまり全長が13.5mしかないのです。
 この川は目立ちません。国道から少し入っていくのですが、看板もなにもないので、少々わかりづらいところにあります。私が訪れたのは、夏休みも終わった平日だったので、人はいませんでした。海岸にあった玉ノ浦海水浴場の駐車場にいくと、地元人が何人かおしゃべりをしていたので、「ぶつぶつ川はどこですか」と聞くと、「すぐそこだ。大したことはないよ」言いながら指をさして、教えてくれました。短時間なので海水浴の駐車場に車を駐めさせてもらって、ぶつぶつ川を見に行きました。
 小さな公園になっていて、看板があり、ぶつぶつ川の説明がかかれていました。川の側面と上流の突き当りは、石垣になっており、上流の行き止まりの石垣の上は、道路になっています。どうもそこが川のはじまり、源流になっているようです。石垣の下の川面をよく見ると、湧き水になっています。道路の向こうには人家があります。下水が流れこんでいることはないと思いますが、本当にそこが源流かと思えるような川でした。
 柄杓がおいてあるので、飲めるのだと思い、湧き水を飲んでみました。するとその水は、海に近いのですが海水ではなく、冷たい真水でした。やはりそこから、湧いているようです。
 水を飲み終わったとき、軽トラックで川にやってきた人がいました。20リットル入の大きなポリタンクに、水を汲んでいました。その人と少し話しました。
 飲水にするですかと聞いたら、メダカの水を変えるために汲みに来たそうです。自分は飲まないが、コーヒーを飲むために、毎日この水を汲みに来る人もいるそうです。人家の下水は本流に流れる別の水路を経由しているので、この上流には混ざらないとのことです。地域の人も大切にしているようです。そして、この川の湧き水は、今まで枯れたことがないということです。水害があって水道が止まった時、この水を飲料水にできたので、近所に人たちは助かったそうです。ぶつぶつ川の水脈は、右手奥にある小高い丘に続いているようです。大きな山ではないので、もっと大きな地下水や伏流水が水脈となているようです。
 ぶつぶつ川は、比較的最近、二級河川に指定されました。それまで日本で一番短い二級河川は、北海道島牧郡島牧村を流れるホンベツ川で、全長30mでした。それが和歌山のぶつぶつ川が一番短い川に抜かれて(?)しまいました。また、準用河川として一番短い川としては、山形県東町の塩野川があります。その長さは15mです。それと比べても、ぶつぶつ川の方が短くなります。
 一方、一番長い川は、一級河川では信濃川(367km)、2番は利根川(322km)、3番目が石狩川(268km)です。二級河川で最長の川は、和歌山県にある日高川(127km)です。つまり、和歌山には二級河川として最長の日高川と最短のぶつぶつ川があるのです。ちなみに和歌山には、熊野川(183km)や紀ノ川(136km)という一級河川があります。
 ぶつぶつ川の呼び名は、川底から「沸々」と湧く様からきてるとの説明がありました。私が見た時は、それほど「ふつふつ」と湧いているようには見えませんでした。しかし、日照りや水害のときにも、枯れることなく湧いている川は、頼もしく「ふつふつ」として見えたのかもしれませんね。


Letter▼ 気になる川・道北出張

・気になる川・
私は石ころを集めて、
自然史的な研究をしようと考えていました。
私だけでなく、多くの子どもたちも河原は好きです。
自然の中で、遊ぶものがいっぱいあるからです。
私は一級河川のすべてを調査する予定を立てていました。
現在、北海道の河川は終わったのですが、
それ以外は、途中で頓挫しています。
ですから、川はいつも少々気になる存在です。
そんな川でも変わりものは、
ますます気になる存在となります。

・道北出張・
出張で道北の方にでかけます。
北海道は台風で、農作物だけでなく、
交通網もかなりやられています。
ですから、出かける時もたどり着けるかどうかを
調べてから行かなくてはなりません。
今回は道北です。
1泊2日の出張となります。
翌日には校務があるので、
何があっても戻ってこなければなりません。
それだけが気がかりですが。



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