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Essay ▼ 139 大沼:穏やかさの中の激しさ
Letter▼ 陥没湖・計画変更 


駒ケ岳。手前に小高い丘が見える。流れ山地形。


別の場所からの駒ケ岳。手前に小高い丘が見える。流れ山地形。


大沼越しみる駒ケ岳。残念ながら頂上に雲がかかっている。


大沼湖畔からの駒ケ岳。小島が見える。


駒ケ岳のギザギザの山頂。


JRの車窓からみる冬の駒ケ岳。


JRの車窓からみる冬の駒ケ岳。


大沼の5万分の1地形図。


上と同じ範囲の2.5万分の1地形図。


大沼周辺の5mメッシの数値標高による図。


地形図の同じ範囲の地形解析、傾斜量図。


地形図の同じ範囲の地形解析、地上開度図。


地形図の同じ範囲の地形解析、地下開度図。


大沼と駒ケ岳のパノラマ画像。


大沼のパノラマ画像

(2016.07.15)
 北海道の道南の大沼公園は、もともとは荒々しい火山地形だったものが、今では素晴らしい湖沼の景観になっていました。激しい噴火で一気にできたものですが、穏やかな佇まいから、激しさは想像できません。

 先日、校務で大沼にいってきました。時間があったんで、周辺を見て回りました。下り坂の天気でしたが、最初は晴れていたので、駒ヶ岳を望むことができました。駒ケ岳は、尖ったぎざぎざの山頂が特徴となっています。そして、青空のもと、大沼ごしにみる駒ケ岳はなかなか見応えのある景観です。また、函館本線の車窓からみる駒ケ岳もなかなかいいものです。車窓の駒ケ岳でも、冬の雪景色も特別いいものです。
 大沼公園の周辺には、札幌から延びている道央自動車が、大沼公園インターまで来ているので、高速道路で一気に来れるようになっていました。ただし、4時間もかかるので、一人で運転していくには少々疲れますが。
 それに加えて、今年の春には北海道新幹線も開通したので、本州からも便利になりました。新幹線の北海道の玄関口である新函館北斗駅は、大沼の近くにできため、今後、ますます観光地化されていくことでしょう。私が訪れた時も、7月最初の金曜日だったのですが、多くの観光バスで外国人観光客が来ていました。それに混じって、日本人の年輩の観光客も見られました。
 大沼は、道南の亀田(かめだ)郡七飯(ななえ)町にあり、国定公園にも指定されています。大沼国定公園には、大沼と小さい小沼、そして蓴菜(じゅんさい)沼があり、その他にも小さな沼もあります。大沼と小沼はつながっており、大沼と小沼はセバット(狭戸)と呼ばれる狭い部分でつながっています。大沼の水位が高いので、セバットを通って小沼側に水が流れ込んでいます。セバットは狭いので、橋がかけられ、そこをJR函館本線や道々43号線が通っています。
 それぞれの沼には、小さな島が多数あります。ある資料によると126個の島があるといいます。さらに沼の中だけでなく、小高く小さな丘が、周辺に多数、点在してます。いくつかの大きな沼と多数の小島、多数の小さな丘が、大沼公園を特徴づけています。
 この小さい島や丘は、「流れ山(ながれやま)」地形と呼ばれているものです。
 大沼周辺の流れ山地形は、5万分の1地形図ではあまりよく表現されていないのですが、2万5000分の1地形図では、ごつごつした小山が表現されています。また、5mメッシュの数値標高は、大沼周辺がすべてデータが揃っているわけではないのですが、一部あって、それをみると小さな小山がかろうじて見えています。現地ではよく分かるのですが、地形図でみると、小さすぎてよく見えないようです。しかし、10mメッシュの数値標高を使った地形解析の傾斜量図でみると、小さな丘がよく見えてきます。
 流れ山地形とは、火山の裾野にできる特徴的な地形です。大沼の近くの火山として、北にそびえる駒ケ岳(剣ケ峰山頂の標高は1131m)があります。駒ケ岳は活火山で、何度も激しい噴火をしています。その中でも、1640(寛永17)年の噴火は、非常に激しいものでした。この噴火の様子は、「松前年々記」などの古文書にも残されており、その激しさが詳しく記録されています。
 7月31日正午ころ、山頂が崩壊(山体崩壊といいます)して、広範囲に崩れ落ち、飛び散りました。噴火湾になだれこんだ大きな崩壊物が、巨大な津波を起こしました。この津波によって、沿岸で700名あまりが溺死したと記録されています。
 南側にも山体崩壊が起こりました。この山体崩壊によって、南魔の流れ山地形ができました。そのときの堆積物は、「クルミ坂岩屑なだれ堆積物」と名付けられています。
 山体崩壊が起こると、山体を構成していた堆積物が、噴火によって破壊されて、裾野を流れ下ります。岩塊は、数mから100mを超すものまでいろいろなサイズものが混在して流れていきます。斜面の傾きがゆるくなると、崩壊物の流れが止まり、細粒のものは流れ去ったり、空気が抜けて体積が縮まり、大きな岩塊だけが残って、地表に出っ張ていきます。この出っ張りが流れ山地形となります。
 崩壊物が流れこんだところに河川があると、河川がせき止められることになります。川がせき止められると、上流には池や沼ができます。大沼は、このようにしてできた堰止湖と考えられています。ただし、小沼と蓴菜沼は、地盤の陥没が起こってできたとされています。
 1640年の噴火まで、駒ケ岳はきれいな成層火山(標高1700m)の形をしていました。ところが、激しい噴火によって、成層火山の上部600m分が吹き飛ばされて、ぎざぎざの山頂になってしまいました。この年夏に始まった激しい噴火も、約70日後の秋には治まってしまいました。非常に短い噴火だったようです。
 この短い噴火の中でも、岩砕なだれは最初の噴火で発生しました。つまり、1640年7月31日の噴火によって、津波だけでなく、大沼周辺の流れ山地形や堰止湖も一気にできたことになります。この噴火のあとには、荒々しい山頂をもつ駒ケ岳ときれいな景観となった大沼公園が残されました。
 農道から駒ケ岳の写真をとっていたら、近くの農家の方が、「○○へいったら、もっときれいに写真が撮れるよ」と教えてくれました。多分、大沼とともに駒ケ岳が撮れる絶好のポイントがあるのでしょう。また湖畔の道路脇でまたもや撮影をしていたら、カヌーから降りてきた人が、「○○から撮れば、駒ケ岳も入るよ」と親切に教えてくれました。大沼は、北海道の美しい景観と、人よさも合わせ持っていいました。しかし、その背景には、荒々しい火山噴火が隠されていました。


Letter▼ 陥没湖・計画変更

・陥没湖・
大沼は堰止湖で、小沼と蓴菜沼は陥没湖である
という記述があるのですが、
その出典がわからず、深くは述べませんでした。
どのようなメカニズムに陥没したのかが
よくわかりませんでした。
もう少し探せば、見つかるのかもしれませんが、
時間切れで断念しました。
そんな悩みは、湖面に映える夏の緑で吹き飛びます。
短い時間でしたが、非常に心地よい思いをしました。
帰りの長距離運転は疲れましたが、リフレッシュできました。

・計画変更・
今年の研究のための調査計画を変更しています。
ゴールデンウィークにでかける予定の
熊本での野外調査が地震で中止になったので、
その代替の調査を現在検討中です。
秋の南紀の調査はもともと計画にあったのですが、
中止になった分の計画の変更届をだしています。
持ち認められたら、短い調査を
2、3回行く予定です。
その一部な道内になりそうです。
道央と道南を考えていますが、
どうなるかは、変更届が受付られるか
どうかにもよりますので。



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