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125 御嶽山:教訓とすべきこと
Letter▼ 学ぶこと・箱根
  


御嶽山の5万分の1地形図。


上と同じ範囲の御嶽山の10メッシュによる地形図。


上と同じ範囲の御嶽山の地形解析の地上開度図。


上と同じ範囲の御嶽山の地形解析の地下開度図。


上と同じ範囲の御嶽山の地形解析の傾斜量図。


上と同じ範囲の御嶽山のLandsat衛星による画像(噴火前)。


御嶽山の航空写真(2014年9月28日撮影)のパノラマ。


御嶽山の航空写真と地形図を合わせた画像。

(2015.05.15)
 御嶽山は2014年に噴火を起こし、痛ましい事態を招きました。今後、このような事態を繰り返さないために、そこから得られる教訓を私たちは学び取らなければなりません。御嶽山は、私たちに火山噴火にどう向き合うかを、過去にも教えてくれていました。


 御嶽山は、2014年9月27日11時52分に噴火をしました。噴火によって死者57人、行方不明者7名の犠牲者を出しました。これは、戦後最大の火山噴火による犠牲者となりました。御嶽山の噴火を通じて、私たちは、火山についてどのようなことを教訓として学んできたかを見ていきます。そして、2014年の噴火から何を学ぶべきかも考えなければなりません。
 御嶽山は、活火山に指定されていました。ですから火山活動の観測もされていましたが、今回の噴火では痛ましい犠牲者を出してしまいました。その原因を探ることも重要ですが、ここでは、もっと大元のこと、活火山とは何かということについて考えていきます。
 現在活動中の火山であれば、活火山だと誰でもわかります。しかし、活火山でもあっても、活発でない火山や、静かで活動していないようにみえる火山もあります。静かな火山をなぜ活火山と呼ぶのでしょうか。そもそも活火山とはどのような定義なのでしょうか。このエッセイでも活火山については、何度か紹介しているかと思いますが、活火山の定義を紹介してきましょう。
 現在の火山には、広く「火山」という一般的用語と、火山噴火予知連絡会や気象庁が定義している「活火山」があります。
 まず、「火山」です。古い時代の火山も、現在活動中の活火山もすべて、「火山」に含まれます。どんな時代にも火山活動は起こっていましたので、いろいろな時代、いろいろな地域に「火山」はあるはずです。活動を完全に終わっている火山(かつては死火山と呼ばれた)も、現在は全く活動していない火山(かつては休火山と呼ばれた)も、現在活動中の火山(活火山)も、すべて「火山」なります。「火山」は非常に広い意味をもっています。
 かつて使われていた『死火山』は一度も火山活動が記録されていない火山で、『休火山』はかつて活動していた記録がある火山という意味でした。『死火山』、『休火山』という区分は、現在はなくなりました。なぜなら、『死火山』や『休火山』という呼び名は、誤解を招き、時には危険でもある区分だからです。
 御嶽山も、かつて『死火山』と考えられていました。御嶽山は、注意すべき火山とは考えられていなかったのです。ところが、1979年10月28日5時ころ、突然、大きな噴火が起こりました。水蒸気爆発という激しい噴火で、噴煙は高度1000mまで達し、14時には活動が最大になりました。その後、活動は衰えていきました。火山灰は、軽井沢や群馬県の前橋まで観測されています。
 御嶽山は、1979年まで、活火山とは考えられていなかったので、観測体制がとられていない火山でした。前兆現象を調べられることなかったので、前触れもなく、突然の噴火が起こったのです。当時、50名ほどの登山者がいたのですが、負傷者1名だけでの被害ですみました。不幸中の幸いでした。
 現在噴火している西ノ島や桜島、阿蘇山などは、判断に迷うことはありません。噴火の兆候のない火山でも、かつて噴火をしたことが記録に残っているのであれば、活火山にすべきです。御嶽山の噴火の少し前の1975年、火山噴火予知連絡会では「噴火の記録のある火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と定義して、77火山を選定しました。そこには、御嶽山は含まれていませんでした。
 そこに1979年の御嶽山の噴火が起こりました。この噴火により、火山に対する考え方が、大きく考え直されました。記録の有無に頼るのは、危険であることが、実証されたことになりました。
 歴史時代の記録があるものだけを活火山にするのは危険です。なぜなら、歴史時代の記録も、地域により多い少ないがあるはずです。海域のような人が少ない地域、北海道のように人が住んでいても記録を残す文化を持たない地域などでは、激しい噴火が起こっていても、後世に残されていません。また、古文書があるのは、せいぜい千年程度にすぎません。ですから、歴史記録に頼った火山の分類は危険なのです。
 火山噴火予知連絡会は、1991年年に、「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と再定義し、83火山を選定しました。1996年には、その数は86火山となりました。
 人為的な記録だけに頼ることなく、火山の噴火史を科学的に調べることも重要になってきました。地質学者は、すべての火山を調べているわけでありません。また、研究が進むと、「過去およそ2000年以内」という定義も、火山学の進歩により、もっと長い期間の休止後活動することもわかってきました。噴出物の年代測定の精度の向上や火山学の進歩によって、火山の噴火史を、詳細にたどることができるようになってきました。
 2003年、「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」を活火山と再定義し、108個を指定しました。2011年には110個となっています。まだ研究が十分なされていない火山も、多数あります。そのような火山で、今後研究が進むと活火山に指定されていくべきものもあるはずです。
 活火山の指定の背景は、火山学の進歩がありました。そして指定されると観測網が構築され、噴火の兆候があれば、いち早く警報を出す体制ができてきました。
 今回、その警告システムの不備をついて、御嶽山の噴火が起こりました。紅葉のきれいな時期の9月27日、土曜日、晴れの日に、登山者が一番多い時間帯、11時52分に噴火がおこりました。不幸な偶然も重なったのでしょう。
 現状の警報システムに甘んじることなく、よりよいものを考えていくべきでしょう。予知システムの点検も必要でしょう。現状のシステムを点検し、不備があれば修正すべきでしょう。また、登山中の人への警告の発し方、避難所の作り方なども再考すべき点もあるでしょう。
 しかし、私たちの科学は、まだまだ自然を十分理解していないことを銘記すべきです。そこの認識不足が、一番の原因ではないでしょうか。自然に対してもっと謙虚になるべきです。
 私たちは、今回の噴火から、何を教訓とすべきでしょうか。それ皆でを考えていくことが、一番重要なことではないでしょうか。そして、よりよく火山を知るための科学を進めていくことも重要でしょう。そんなことを、2014年の噴火から、私は学びました。


Letter★ 学ぶこと・箱根

・学ぶこと・
御嶽山の噴火は、まだ1年も経過していません。
重要なことは、今回の噴火から学ぶことです。
いろいろ考えるべきことがあるはずです。
どうすれば、噴火の予兆現象をよりよく捉えられるのか。
噴火はいつ、どこで、どの程度の規模が起こるのか。
多分このような予知は自然現象なので、
特別な火山でないとできなと思います。
しかし、少しでも予兆があれば、
その危険性をいち早く知らせ、対処できれば、
犠牲を減らすことはできるはずです。
たとえ「オオカミ少年」になっても
警告は、繰り返す必要があります。
現状で危険と判断されるのなら、
強制的に立入禁止の措置も必要でしょう。
私たちはもっと学ばなければなりません。

・箱根・
この原稿は5月上旬に野外調査に出るために、
早めから準備をしていました。
箱根か御嶽山で書こうと、準備をしてました。
そして御嶽山で書き始めていました。
そんな矢先、箱根で火山活動が激しくなった
というニュースが流れました。
かつて住んでいた近くでの火山活動です。
観光を生業としている方が多いので
今回の活発化は大きなダメージでしょう。
箱根は火山の恩恵を受けている地域でもあるのです。
その背景には危険性があることを当然考慮すべきでしょう。
いろいろ考えることもありましたが
それは別の機会にしましょう。



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