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Essay ▼ 114 南阿波サンライン:メランジュ
Letter▼ 大雨・後半戦


明丸のメランジュの分布と四万十層群の岩相の変化を示す地質図。


外ノ牟岐井ノ浜の砂岩優勢の互層。


外ノ牟岐井ノ浜の厚い砂岩。


外ノ牟岐井ノ浜の砂岩の表面。


外ノ牟岐井ノ浜の砂岩。


外ノ牟岐井ノ浜の層状砂岩の遠景。


千羽海岸からの層状砂岩。


明丸海岸のメランジュの砂岩泥岩互層。


明丸海岸のメランジュの砂岩泥岩互層。


明丸海岸のメランジュの砂岩泥岩互層と赤色頁岩。


明丸海岸のメランジュの赤色頁岩。


明丸海岸のメランジュの砕屑性玄武岩と玄武岩。


明丸海岸のメランジュの枕状玄武岩。


明丸海岸のメランジュの枕状玄武岩。


明丸海岸のメランジュの石灰岩。


明丸海岸のメランジュの層状チャート。


明丸海岸のメランジュの遠景。


明丸海岸のメランジュのパノラマ。

(2014.06.15)
 徳島の太平洋側には、南阿波サンラインという道路があります。道は整備されているのですが、交通量も少なく、天気が良い日は、快適なドライブコースとなります。この道は景観だけでなく、地質の見どころもあります。


Essay ▼ 114 南阿波サンライン:メランジュ

 徳島県海部郡の美波町から牟岐町にかけての海岸は、山が迫っており、切り立った険しい崖が続くところが多くなります。そのような険しい海岸に、内陸を走る国道55号から分かれた南阿波サンラインがあります。南阿波サンラインは、整備されているのですが、交通量が少ないので、景色を眺めながらのドライブにはいいところです。
 切り立った海岸線の形成には、地質学的な理由があります。このあたりの地層は、四万十層群と呼ばれるものからできています。四万十層群は、砂岩と泥岩が繰り返す地層(砂岩泥岩互層といいます)で、タービダイトという海底の土砂の流れによってできたものです。
 砂岩泥岩の互層では、砂岩は固く侵食にも強く、泥岩は柔らかく侵食に弱いという性質を持っています。ですから互層が侵食を受けると、泥岩が窪んでいき、砂岩が残り出っぱていきます。互層で砂岩の比率が多い(優勢といいます)ところは侵食されにくく、泥岩の多いところは侵食を受けやすくなります。砂岩泥岩の互層の分布地域では、砂岩優勢のところは切り立った崖や険しい山に、泥岩優勢ところは開けた海岸や平野や河川の流路になるという、一般的な傾向があります。
 そのようなことを考えると、南阿波サンラインの切り立った海岸線は、四万十層群でも砂岩優勢にあたるところになります。
 外ノ牟岐井ノ浜では、砂岩優勢の地層を見ることができます。泥岩は10cmから3cmほどと厚さしかないの対して、砂岩は2mから20cmほどと一桁大きな厚さがあります。厚い砂岩では、5mを越えるものもあります。泥岩が少なく砂岩が非常に多いところは、砂岩ばかりで時々泥岩の切れ目ができるため、層状砂岩とも呼ばれます。千羽海岸からみえる切り立った崖は、層状砂岩が200mの断崖となって聳えています。
 南阿波サンラインから離れて明丸海岸に降りて行くと、狭い海岸にでます。ここには砂泥互層だけでなく、少々変わった岩石群があります。岩石群といったのは、一種類の岩石ではなく、複数の岩石が混在しているためです。明丸海岸では、メランジュ(Mélange)と呼ばれる岩石群が見られます。
 メランジュとは、日本語訳はなく、カタカナ表記のまま使われています。メランジュは、細粒に破砕された基質のなかに、もともとはまったく成因関係のない、さまざまなサイズの、さまざまな種類の岩石塊を含んでいます。メランジュ自体の成因も判明していない、このような産状を示す地質体をいいます。かつては、同様の産状のものを、サイズを問わず、すべてメランジュと呼んでいましたが、最近では地質図に表現できるサイズのものをいい、あまり小規模ものには使わなくなりました。明丸の地質体は地質図で表現できる規模なので、メランジュと呼んでいいことになります。
 明丸海岸のメランジュは、赤色頁岩、層状チャート、石灰岩、玄武岩、砂岩泥岩の互層などの多様な岩石が見られます。赤、黒、緑、白など、岩石としては多様な彩りをもった地質体で、珍しく見た目もきれいな岩石となっています。
 メランジュの中身を見ていきましょう。
 砂岩泥岩の互層は、陸の岩石が削剥、運搬され、タービダイトで大陸斜面に運ばれて堆積したものです。タービダイトでは、粒の粗い砂岩から細かい泥岩へと並んで(級化層理といいます)一枚の地層ができます。この作用が繰り返すことで砂岩泥岩の互層ができます。周辺にたくさんある四万十層群の堆積岩と同じもの考えられます。ただし、メランジュの中の地層は、周辺の互層よりはそれぞれの層は薄く、砂岩優勢でもありません。すべて陸源の構成物からできた岩石です。泥岩は黒っぽく、砂岩は淡い灰色から暗灰色で、地味な色合いの岩石となります。
 玄武岩は、枕状溶岩の形態を持っているものもあることから、海底で噴出した火山岩と考えられます。一部、海底の火山砕屑岩(ハイアロクラスタイト)や断層などで剪断、破砕された玄武岩もあります。いずれも淡い緑色で目立った色合いの岩石となっています。枕状の玄武岩や火山砕屑岩は、海山や海嶺などで起こった水中火山活動で形成されたものです。つまり、海洋プレートの最上部を構成していた岩石と考えられます。
 赤色頁岩は、鮮やかな茶色で目立っています。赤色頁岩は、陸の堆積物が届かない深海底で堆積した深海粘土が固まったものです。海洋プレートの直上に時間経過にともなって堆積していったものです。このメランジュでは、玄武岩に次いで赤色頁岩が多く、目立った分布となっています。
 層状チャートは、ここではほんの少ししかありませんが、透明感のある灰色の緻密な岩石です。層状チャートは、赤色頁岩と同様、深海底にたまったものです。海洋のプランクトンの遺骸が深海底にまり、珪質部だけが溶け残って形成されものです。時々プランクトンのたまらない時期があるとその間に深海粘土などを薄く挟み切れ目となり層を形成します。このようなものを層状チャートといいます。層状チャートも赤色頁岩も、起源は違いますが、共に海洋プレートに直上に溜まった深海性の堆積物です。
 石灰岩は、白っぽい色で、ここには少しかありません。石灰岩は、熱帯地域の島の浅い海で、サンゴなどの生物がつくった礁が固まってできたものです。これも陸から遠く離れたところで形成された海洋の域の岩石になります。玄武岩には海洋島を構成するものもあり、そこには石灰岩が伴うこともあります。時には石灰岩が、巨大な岩体として存在することもあり、セメントの原料として、各地で採掘されています。
 メランジュの構成物の起源はさまざまですが、海洋地殻やその上の深海底堆積物(海洋プレート層序と呼ばれます)、あるいは海山の一部となっていたものです。つまり海洋域の一連の構成物だったという共通性を持っています。ただし、タービダイトとは起源が違いますが。
 それは次のように考えられば、理解できます。海洋プレート(海山を伴った海洋地殻)が海洋プレート層状を形成し、海溝で沈み込むみます。その時、剥ぎ取られた海洋プレート層序は、周辺のタービダイトからなる砂岩泥岩互層の中に、断層よってばらばらに砕かれながら、取り込まれていきます。これが明丸のメランジュの形成メカニズムだと考えられそうです。
 明丸海岸のメランジュは、岩石の混在として付加体のダイナミズムを記録していることになります。そのダイナミズムは、鮮やかな色合いを帯びたものとなっていました。
 徳島から高知にかけて、明丸のメランジュから南の海岸線は、少しなだらかになります。これは四万十層群の砂岩優勢部が終わり、砂岩泥岩の量が同等の互層となっていくためです。メランジュは、四万十層群の岩相の境界にあたっています。そこにも地質学的秘密がありそうですが、別の機会にしましょう。
 南阿波サンラインから離れた明丸海岸の道は、行き止まりになっているのですが、その先には「サンラインモビレージ」というロッジがあります。行楽シーズンには多くの旅行客が訪れるようです。ここは自炊できる施設ですが、食事がでないので、私は泊まったことはありません。なかなか雰囲気のいいところです。行き止まりにある海岸なので、まるでプライベートビーチのような快適なところになりそうです。
 この海岸に来るのは2度目だったのですが、泊まることはできませんでした。いずれはのんびりとロッジに泊まって、メランジュの色合いを楽しみたいものです。次なるチャンスを待ちましょう。


Letter★ 大雨・後半戦

・大雨・
梅雨前線が少し南に下がったと思ったら、
荒れた天気になっているようですね。
北海道は梅雨ではないですが、
雨が降り続いています。
少々冷たい雨です。
場所によっては大雨となった地域あり
被害が出しています。
農家にとってはこの時期の雨は恵みの雨でしょうが、
多すぎる雨は大変です。

・後半戦・
大学の講義も後半戦になってきました。
本来であれば大学の教員は
講義と研究に精力を使うべきなのです
それ以外にも校務に多くの時間と労力ををつかっています。
私の学科では教育実習が次々とあり、
出張が毎週のようにあります。
講義を休講をできるだけ少なくしなければなりません。
教育実習の研究授業の出張指導は、
6月で前期は一段落なのですが、
9月には第二陣があります。
校務とはいえ、あまり多いと落ち着かなくなり、
体力的にも少々厳しいものがあります。
まあ、今季はなんとか乗り越えることができましたが。




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