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Essay ★ 72 横浪:メランジュを跨いて
Letter★ 横浪黒潮ライン・まだ行きたい


層状チャートの崖。


層状チャートの全景。


層状チャートの層の様子。


五色ノ浜周辺の2万5000分の1地形図。


上と同じ範囲のLandsat衛星画像。


上と同じ範囲の地形解析の地下開度図。


上と同じ範囲の地形解析の地上開度図。


上と同じ範囲の地形解析の傾斜量図。


泥質の基質のなかに砂岩のブロックのメランジュ部。


ちぎれた地層破片点々はまじっているメランジュ部。


須崎層の整然とした地層。


須崎層とメランジュの境界。


赤色頁岩。


五色ノ浜の石ころ。


五色ノ浜の代表的石ころを積み上げた。下から泥岩、赤色頁岩、玄武岩。

(2010.12.15)
  高知県土佐市宇佐(うさ、USAと書いて宣伝されています)の断崖が続く海岸にメランジュと呼ばれる岩石群が露出しています。少々険しい場所もありますが、そこを越えるとすばらしい露頭を見ることができます。横浪のメランジュを紹介しましょう。


Essay ★ 72 横浪:メランジュを跨いて

 メランジュという言葉を、ご存知でしょうか。地質学の用語でMelangeと書きます(本当はeにアキュート・アクセントが付きます)。フランス語で、「混合」を意味していますが、メレンゲ(meringue)を語源としています。メレンゲとは、料理をする人ならご存知でしょうが、卵の卵白を泡立てた食材で、ふわふわしたものです。地質学用語のメランジュは、そのようなふわふわしたものではなく、硬い岩石の産状を表しています。
  地質学でメランジュは、メランジやメランジェ(私はメランジェと覚えていました)などと呼ばれています。私が大学院生のころ、メランジュやオリストストローム、蛇紋岩メランジュなどの解釈をめぐっていろいろな議論がなさていました。自分自身でも野外で観察していたので、懐かしい用語でもあります。
  地質学でメランジュとは、ぐしゃぐしゃに破砕された基質(細粒の部分)の中に、いろいろな種類、起源の礫や岩塊(大きなサイズのブロック)を含む構造をもつ地質体で、地質図上で表現できる大きさのものをいいます。含まれている岩塊は、堆積岩や変成岩、火成岩などさまざまなものがあり、その起源は問いません。
  メランジュの定義においては、その成因は問いません。もし、成因が明らかな場合は、その成因によって、テクトニックメランジュ(構造運動で形成)、蛇紋岩メランジュ(蛇紋岩形成にともなうもの、テクトニックメランジュと類似)、堆積性メランジュ(オリストストロームとも呼ばれる、堆積作用で形成)、ダイアピルメランジュ(泥ダイアピルで形成)などと区分して呼ばれることもあります。しかし、実際には、メランジュは何度かの変形作用を受けることも多く、いくつもの成因が複合していることもあり、判別が難しいこともよくあります。
  堆積性メランジュとオリストストロームは、同義ですが、研究者によっては、使い分けたりして、混乱することがあります。それが私が大学院生の頃、議論されてことでした。
  オリストストロームは、堆積性ですが、通常の堆積作用で形成されたのではなく、巨大な海底地滑りによって、大小さまざまな既存の岩石(オリストリスと呼ばれる)がブロック状に含まれています。基質は泥質の堆積岩ですが、そこには通常の堆積構造はまったく認められません。まさに、混沌とした産状となっています。従来、スランプ礫岩や海底地すべり礫岩と記載されていたものが、新たな解釈で記述されるようになりました。
  本来なら、オリストストロームは成因がはっきりしている場合に使い、堆積性メランジュとは、堆積性だが成因の不明なメランジュのことでした。しかし、研究者によっては、厳密に区分したり、似たようなものを全部オリストストローム、あるいは堆積性メランジュ、あるいは単にメランジュと呼んだり、いろいろな使い方だされてきました。混乱が起こ、今もまだ混乱は残っているようです。
  オリストストロームについては混乱する場合がありますが、メランジュについては、成因を問わず、野外での産状を表す言葉となってきました。ですから、正常な堆積構造ではなく、異質な岩塊がはいってるものがある程度広く見られるときはメランジュと呼ぶことになります。
  実際に野外でメランジュをみると、なぜできたのかを考えだすと、頭が混乱してきます。非常に不思議な産状です。そのメランジュを見に、高知県土佐市宇佐町の五色ノ浜(ごしきのはま)に行きました。実は、四国に来てから、五色ノ浜には3回いっています。そして3度目にやっと、メランジュの全部を見ることができました。
  一度目は時間がなくて場所を確認しただけで、ほとんど素通りでした。二度目はたっぷり時間をとったのですが、露頭の位置がよく分からなかったのと、途中で難所があり、そこを通ることができかったため、すべてを見ることできませんでした。三度目に、やっと難所をクリアしてたどり着くことができました。
  三度目に出かけたのは、11月下旬でしたが、実はその直前に、あるニュースが飛び込んできました。五色ノ浜周辺を、国の天然記念物に指定することが、文化庁から文部科学大臣に答申されました。多分、これは承認されることになるでしょう。天然記念物に決定すれば、採取禁止なります。私はもともと岩石は採取しませんが、整備などで環境に変更が加わること考えられます。
  五色ノ浜周辺のメランジュは、横浪(よこなみ)メランジュと呼ばれ、日本の地質の特徴である付加体を認識する上で、非常に重要な役割を果たしたところでもあります。
  海洋プレートが海溝で沈む込むとき、メランジュが形成されると考えられています。海洋プレートの上部は、海洋地殻の玄武岩、その海洋地殻の上に溜まったチャート(層状になっている)や頁岩(赤色)、石灰岩などがあり、プレートが海溝に近づくと、陸からの砂や泥の地層が上に溜まります。このような海底できた地層の並び(海洋底層序と呼ばれています)は、海洋プレートが沈み込むとき、陸側に剥ぎ取られて付け加わります。これが付加体と呼ばれるものです。付加作用は、大きな構造運動なので、メランジュがよく形成されます。
  付加体では、海洋底層序の岩石群と陸側の砂岩や泥岩の地層が混在したメランジュのすぐ脇に整然とした砂岩泥岩の互層(整然層と呼ばれます)があったりします。このようなメランジェと整然層の密接な露出が、付加体の証拠となっています。
  付加体の産状は、プレートテクトニクスよってのみ説明される重要な概念でもあります。過去のプレートテクトニクスを、付加体の存在で証明することができます。言い換えると、古い地質体へもプレートテクトニクスの解釈が導入できるようになったのです。
  1970年から80年代以降に、日本の地質学者が世界に先駆けて、大量の証拠(詳細な野外調査、構造解析、微化石層序など)によって、付加体の概念を確立しました。その主戦場が、四万十層群南帯にある五色ノ浜の横浪メランジュだったのです。そのような地質学の歴史における重要性をもつものとして、横浪メランジュが天然記念物に選定されたです。
  私は、五色ノ浜や横浪周辺がなかなか気に入っています。二度目に訪れたときは、ほぼ一日この海岸をうろうろしていました。まあ、午後の半分くらいは暑くてボーっとしていましたが。観光客もまれに来ることがありますが、静かできれいな海岸です。打ち寄せる波、波に転がり磨かれていく小石、その背後の崖にはメランジュがあります。
  東にひと尾根越えれて少し行けば、須崎層の整然層があります。その境界は小さな断層ですが、2000万から3000万年ほどの時代差があります。
  また、西にいくつかの尾根と難所をこえれば、層状チャートのすばらしい露頭までいくことができます。チャートより西へは海岸沿いを進むことはできなくなります。こチャートは、なかなか見事な露頭です。チャートまでの海岸沿いで、海洋底層序が一通り見ることができます。
  11月下旬の天気のいい日を狙って、今度こそはと意気込んで出かけました。2度かチャレンジで目的が達せなかったことにも悔いもありリベンジの意味もありました。そしてとうとう念願かなって、目的の横浪メランジュの海洋底層序を一通りみることができました。いまだに横浪は私には魅力あせません。チャンスがあったら、もう一度行ってみたいところです。


Letter★ 横浪黒潮ライン・まだ行きたい

・横浪黒潮ライン・
かつては有料道路だった横浪黒潮ラインは
なかなか風光明媚な道です。
帷子崎という展望台があります。
そこに夏の間だけでしょうか、
プレハブの店があります。
電気も水道もきていないところですが、
おばあさんが店を出しています。
麺類なら食べることができます。
私は、寄ると顔をだして、
おばあさんと話をしながら
アイスクリームをいただきましたが
3度目(11月)にはもう閉まっていました。
平日の観光シーズンでないときしか
行ったことがありませんが、
静で穏やかな景色が広がっています。
そんなところも、この周辺が好きな理由かもしません。

・まだ行きたい・
寒かったり暖かったり、
健康管理の難しい日が続きます。
私はもう2度も風邪をひいてしまいました。
風邪で不調でしたが、寝込むことなく、
なんとか過ごしています。
今週締め切りの論文が終われば、
出かけたいところがいくつかあります。
暮れなので、日帰りでいけるところを考えています。
まあ、体調と天候を見ながらですが。


「この地図の作成に当たっては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図200000(地図画像)、
数値地図50000(地図画像)、
数値地図25000(地図画像)、
数値地図250mメッシュ(標高)、
数値地図50mメッシュ(標高)、
数値地図10mメッシュ(火山標高)及び
基盤地図情報を使用した。
(承認番号 平21業使、第53号)」

解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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