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Essay ★ 70 柏島:白い時間の破片
Letter★ ストリートビュー・掃除が怠りがちに・心には余裕


柏島全景。海は養殖用の施設が見える。


柏島でみつけたサンゴの破片。


柏島の狭い砂浜は白い砂だった。


柏島と沖の島の5万分の1地形図。


上と同じ範囲をLandsat衛星画像で表示したもの。


上と同じ範囲を地形解析の地下開度で表示したもの。


上と同じ範囲を地形解析の地上開度で表示したもの。


上と同じ範囲を地形解析の傾斜量で表示したもの。


花崗岩の断崖。


半島に架かる橋のたもとには花崗岩があった。


観音岩は花崗岩できている。


半島内の川は花崗岩地帯の沢特有のきれいな水であった。


遠くにはかすんでいるが沖の島が見る。

(2010.10.15)
  高知県西部に小さな島があります。近年道路も整備され、トンネルと橋もでき、交通の便がよくなり、楽に行けるようになりました。しかし、行楽シーズンでない時期は、ひっそりとした島に戻ります。そんな島の海岸の小さな白い砂浜に、サンゴの白い破片がありました。そこに時間の切れ端をみつけました。


Essay ★ 70 柏島:白い時間の破片

 柏島(かわしじま)という島をご存知でしょうか。同名の島はなさそうなので、間違うことはないでしょうが、小さな島なので知っている人も少ないと思います。まして、いったことのある人はあまりいないでしょう。もちろん、小さいとはいえ、人が住み生活をしてて、観光もそれなりに行われています。ですから、地元の人以外にも訪れる人はいます。しかし、近くにある竜串や足摺岬に比べれば、有名な観光地とはいえません。
  柏島は、高知県西端の幡多(はた)郡大月町のさらに先端(大月半島)に接するようにあります。現在は立派な橋が架かっていますので、陸続きで島らしくありませんが、半島側の崖の上から見ると、海が間にあり島であることが分かります。
  また、展望台から眺めると近くに沖の島の見えます。しかし、この沖の島やさらに西の鵜来島(うぐるしま)が、宿毛(すくも)市にの飛び地になっているために、高知県最西端は宿毛市になります。
  柏島にいったとき、白っぽいごろごろした石とサンゴのかけらが目立ちました。四国の太平洋側の海岸には、サンゴ礁のかけらがころがっていのは珍しくありません。黒潮のきているせいで、サンゴ礁が周辺の海底に自生しています。四国は、まだ南国の海なのです。
  四国の太平洋側の海岸の砂は、うす茶色でサンゴのかけらが転がっていると、サンゴの白色が目立ちます。ところが、柏島の砂浜は広くありませんでしたが、白砂でした。5月のまぶしい太陽のもと、サンゴの白と砂の白が目を引きました。
  四国の太平洋側の海岸の砂はうす茶色をしているのは、四国南部の地質を反映しています。
  四国の南部は、東西に延びる仏像構造線を境にして、北に秩父帯南帯(三宝山帯)が、南に四万十帯が分布しています。高知県の西部はすべて四万十帯に属しています。四万十帯はさらに北帯と南帯に二分されていて、北帯は主に白亜紀の地層が、南帯には古第三紀から新第三紀の地層が分布しています。
  四万十層群の堆積岩が黒っぽい濃い色の地層なので、海岸の砂もその影響をうけていきます。物質は細かくなると光を乱反射してしまうので、元の色より色が薄く見えることがあります。でも、もともと色が濃い物質なら、白よりは濃い目の色になります。濃い目の石が分布している四国の太平洋側の地域は、その色に似た砂となります。ですから、本当の白砂ではなくなります。
  ところが、花崗岩の分布している地域には、マサと呼ばれる白っぽい砂ができます。花崗岩はもともと白っぽい岩石である上に、風化すると、鉱物がばらばらになりやすい性質があります。そして、黒っぽい鉱物は少ないうえに風化や変質に弱く、くずれたり解けたりして、流されていきます。後には、変質しにくい石英や長石などの透明か白っぽい砂粒が、マサとして残ります。柏島にも少ないながらマサの砂があります。
  この四万十層群の中に、マグマが貫入してるところが、何箇所かあります。このような貫入岩は、新第三紀中新世に形成された西南日本外帯貫入岩と呼ばれています。四国では、足摺岬、室戸岬、滑床などに大きな岩体があります。室戸岬の貫入岩は、斑レイ岩を中心とした岩石です。足摺岬は、以前、このエッセイでも紹介した花崗岩ですが、少々変わったマグマからできています。
  柏島周辺にも貫入岩があります。今回、私がここ訪れたのは、断崖を形成している柏島付近に分布している花崗岩の貫入岩を見るためです。ですが、この付近には、沖ノ島などの島々も似たような貫入岩からできています。この地域の花崗岩は、谷尻(たにじり)型花崗岩(正確には細粒斑状花崗閃緑岩)と母島(もしま)型花崗岩(正確には中粒から粗粒優白質等粒状黒雲母電気石花崗岩)の2種類に大別され、さらに詳しく区分されています。谷尻型が古く、母島型が新しくて谷尻型に貫入しています。柏島は古いほうの谷尻型花崗岩です。
  2つの型は、別々のマグマによって形成され、その中の多様性は、マグマが固まっていくとき結晶を形成しながら組成を変えていった(結晶分化作用といいます)と考えられています。谷尻型のマグマには、変成岩が溶けたか、一部が溶けて混じりこんだかしたと考えられています。なかなか複雑な履歴をも持っているようです。
  現在では、柏島への道は、立派な道路やトンネルもできたので、アプローチも簡単になっています。かつて、はくねくねした道で、幅も狭く、険しい遠いところでした。わたしは、調査のためにうろうろと旧道を走り回ったので、狭いくねくね道には、苦戦しました。対向車が来たらどうしようかと思うような細い道の連続で、方向感覚もなくなりました。そのような道を生活道として使っていた時代には、柏島は遠いところだったのではないでしょうか。
  私が訪れたのは、5月中旬の平日でしたので、観光客らしき人は、ほとんどいませんでした。狭い道を知っているとき、途中の展望台であった老夫婦ぐらいしか見かけませんでした。彼らも道に不安を感じていたのでしょう。地図を見ながら、二人で相談していました。私もカーナビがなかったら、どこを走っているか分からなくなって、迷子になっていたことでしょう。
  現在では、交通の便もよくなり、釣りやダイビング、シュノーケリング、キャップなどの観光を盛んに進めているようです。ここには、猿の公園もあるようで、公園には行きませんでしたが、野生のサルをみることができました。
  こんな険しい断崖絶壁の先にある柏島ですが、かつては地下深くで時期を違えてできた幾種類かのマグマが、地下でゆっくり冷え固まってきました。花崗岩は、地上に顔を出し浸食を受けて、断崖の形成しているのです。断崖の道の先の小島で、太陽の光をうけて、白くまぶしい砂とサンゴのかけらに、そんな時間の流れと大地の営みが隠されているのです。柏島の白は、時間の破片なのかもしれません。


Letter★ ストリートビュー・掃除が怠りがちに・心には余裕

・ストリートビュー・
Googleのストリートビューというのがあります。
個人情報に関していろいろ問題があると
ニュースになったこともありますが、
しかし、知らないところの様子を知るには
なかな便利なものです。
そのストリートビューが
とうとう南極にまで進出しました。
まだ、少ししかない歩いてないようですが、
南極をコンピュータの画面から歩くことができるのです。
ペンギンマークが目印です。
試してみては、いかがでしょうか。

・掃除が怠りがちに・
単身赴任で気楽ではあります。
自分中心の生活で、無駄は極力省くことになります。
ついつい生活に必要な掃除、洗濯、炊事も省きたくなりますが、
そうもいきません。
炊事は生きていくために、省くことができません。
洗濯も着替えていくと溜まっていきますから、
省くことはできません。
それに全自動洗濯機なので
洗濯物を放り込んでスイッチを押せば
勝手に洗濯が終わります。
ほっておくと洗濯物がしわくちゃになるので、
干すしかありません。
ですから、洗濯も必然的に定期的にすることになります。
それに比べて、掃除がどうしても怠りがちになります。
家族でいるときは、妻がそれをやっていくれたのですが、
自分でやるとなかなか億劫です。
しなくても、急にどうこうはなりませんので、
たまにしにかしなくなります。
すればしたらで、気持ちはいいのですがね。

・心には余裕・
十月も半ばとなり秋も深まってきました。
のんびりと秋に色づく野山を散策でもしたいのですが
そんな時間がなかなかとれそうにありません。
10月は、出かけることが多いので、
その隙間を縫ってすべきことがいろいろあるので、
あわただしい思いをしています。
11月には頼まれた授業や講演があるので、
その準備もしなければなりませんが、
なかなかそちらに手が回りません。
忙しいのはいいのですが、
我を忘れるほど忙しいのはいけませんね。
どんなに忙しくても、心には余裕が必要です。
それを取り戻したいものです。


「この地図の作成に当たっては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図200000(地図画像)、
数値地図50000(地図画像)、
数値地図25000(地図画像)、
数値地図250mメッシュ(標高)、
数値地図50mメッシュ(標高)、
数値地図10mメッシュ(火山標高)及び
基盤地図情報を使用した。
(承認番号 平21業使、第53号)」

解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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