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Essay ★ 68 鳴門:渦潮の複雑な因果
Letter★ お盆・いい生き方


大鳴門橋から見下ろした和泉層群の地層。


大鳴門橋から見下ろした和泉層群の地層。


渦潮。


Landsat画像による中央構造線(赤)の位置。


Landsat画像による鳴門海峡と大鳴門橋の部分の拡大。


上と同じ範囲地形解析の地下開度。


上と同じ範囲地形解析の傾斜量。


上と同じ範囲地形解析の地上開度。


飛島。


大鳴門橋。


大鳴門橋。


三波川変成岩による石碑。


渦潮と淡路島。

(2010.08.15)
  鳴門の渦潮は、太陽と月の天が地球の海洋に及ぼす潮汐作用によるものです。深く考えると、それは鳴門海峡の地形によるものです。地形は、中央構造線などの地質学的作用に由来しています。渦潮には複雑な背景と因果関係があります。


Essay ★ 68 鳴門:渦潮の複雑な因果

 鳴門海峡は、四国と淡路島の間にある海峡で、幅は約1.3kmしかありません。鳴門海峡は、渦潮(うずしお)で有名です。海峡には、大鳴門橋(おおなるときょう)がかかっています。1985年6月8日に開通した鳴門海峡をまたぐ吊り橋で、全長が1629mあり、橋をつっている主塔の高さは144.3mもあります。現在は道路だけですが、将来に備えて鉄道も通れる構造の橋になっています。
  6月に四国東部へ調査に行ったとき、渦潮が見たくて鳴門海峡まで足を伸ばしました。渦潮が見える時間帯に到着できるよう調整しての到着となりました。鳴門スカイラインを通って海峡に向かっている途中、四方見展望台があったので、立ち寄りました。その展望台にきていた地元の人と話をしていました。私が渦潮を見るために船に乗るつもりだといったら、「橋の上の方がよく見えるよ」と教えてくれました。
  渦潮は船からの写真や映像を見ていたので、船から見るものだと思っていました、潮の時間と船の時間は調べていたのですが、大鳴門橋から渦潮を見るような施設があることを知りませんでした。「渦の道」という大鳴門橋の車道の下に造られた海上遊歩道でした。海上から45mの高さにあり、まさに渦潮を真上から見ることができます。そこから見ることにしました。
  鳴門の渦潮は、世界三大潮流のひとつとなっています。他の二つは、シチリア島とイタリア本土の間のメッシーナ海峡、北アメリカ西岸とバンクーバー島東岸の間のセイモア海峡です。
  鳴門の渦潮は、満潮と干潮の時に、大きな渦が発生します。潮汐とは、太陽と月の引力によって海洋が、引っ張られるために起こる現象です。満潮と干潮は、一日に2回ずつ起こります。
  月と太陽の位置によって、潮汐の程度はいろいろ変化します。太陽、地球と月が一直線に並ぶとき(満月と新月)が、一番大きな潮汐作用が働きます。それが大潮と呼ばれるものです。
  潮汐が重要な原因ではありますが、それだけでは渦潮はできません。瀬戸内海と紀伊水道の間に干満の差が大きいことと、海峡部が狭いために起こる現象です。干満の水位差は最高で1.5mにもなります。その差ために大量の海水が、狭い海峡を一日2回の流入と流出があるためです。6時間ごとに海水の出入りがあり、それが渦潮となります。潮流は時速13〜15km、大潮の時には時速20kmにもなり日本で一番速い流れとなります。
  四国がわには、沖200mのところに裸島があります。裸島と四国間の岩礁は、和泉層群の地層が見えています。淡路島の先端の門崎から300mあたりに中瀬(なかせ)と呼ばれる浅瀬があります。四国と裸島間も淡路島と中瀬の間も、それほど深くはなく、裸島と中瀬の間が、深度が深く(約90m)なっています。そこのが渦潮のできる場となります。
  海峡の中央部に深い海底があり、そこが潮汐の本流となっています。その両側は浅くなっています。流体のベルヌーイの定理から、断面積の狭いところ(陸付近)では流れが速くなります。この速度差が、渦(乱流)を生む原因の一つでしょう。
  さらに海峡の瀬戸内海側(深度200m)と太平洋側(140m)に深い海底(海釜(かいふ)と呼ばれています)があります。このような地形の特徴も、渦潮の要因となっています。
  鳴門海峡の複雑な地形は、その形成に中央構造線が大きく関わっています。中央構造線は、吉野川の左岸側(北側)沿いを通っています。下流の河口付近の平野が広がっているところでは、北側の山地の麓を通っています(鳴門断層)。鳴門市の山地は中央構造線によって、持ちあげられたものです。淡路島の南の直線的な海岸線は、中央構造線によるものです。鳴門市の山地と淡路島の山地はいずれも中央構造線の活動でできたものです。
  中央構造線は、一つの断層ではなく、いくつもの断層の集合体です。鳴門断層もその一つで、すぐ南には、旧吉野川との狭い平野部に鳴門南断層があり、この断層も中央構造線に一部です。
  中央構造線の北側の山地を横切るように鳴門海峡があるわけですから、なんらの地質学的弱線が形成され、切断されたと予想されます。その弱線が海峡となっているはずです。1995年の兵庫県南部地震で大きく活動した淡路島の野島断層も、海峡の弱線と関連するのかもしれません。残念ながら、海底地形図がないので、今はその予想を確かめることができませんが。
  中央構造線は、現在も活動中の活断層です。徳島における活断層の調査で、過去の断層を発掘して調べた結果、最新の活動時期は16世紀後半以降から17世紀初頭(1596年頃)で、その前は紀元前後とされています。断層の活動は、約1,400〜1,700年程度と考えられています。もしそれの推定が正しければ、まだしばらくは、この断層による地震は大丈夫なようです。まあ、自然現象は人智の及ばないところもあるので、安心してはいけません。中央構造線が活断層であることを忘れていけません。
  私が「渦の道」を訪れたときは、6月初旬の平日でした。時期的は観光シーズンではないのですが、中国や韓国からの観光客の団体が多数来られていました。でも、団体客は一気に来て一気に去っていきます。渦潮は1時間以上にわたって起こる現象なので、しばらく待っていれば、見たい場所が好きなだけ見ることができます。この「渦の道」は、見学に時間制限がないので、心ゆくまで、じっくりと見ることができました。
  船なら行きたいところにいけるわけではなりませんし、時間にも制限があります。ですから、この「渦の道」からみることができて幸いでした。展望台で会った地元の人の情報に感謝です。でも、時間があれば、今度は船から見てみたいものですが、いつになることでしょう。
  一日4回の渦潮は、潮汐によるものです。潮汐は、鳴門海峡の特殊な地形によるものです。その地形は、1500年ほどの間隔を持っておこる中央構造線の断層運動によって形成されたものです。この断層が、鳴門と淡路島の地形を生み出しています。複雑な因果関係が、渦潮には織り込まれているようです。


Letter★ お盆・いい生き方

・お盆・
お盆は、地元の祭に参加しました。
盆踊りや花火大会もありました。
こじんまりとしたものでしたが、
なかなかいい祭でした。
こんなにたくさんの人を
地元でみるのは初めてでした。
若い人や子供たちもたくさん参加していました。
やはり人が生活を営んでいる地には、
それなりの人がいるのですね。
日ごろ出会う人が少ないと、
過疎地や限界集落などという言葉が聞くため
ついつい寂しい地のように思ってしまいますが、
実はそれなりの人がいることを
思い出させてくれました。

・いい生き方・
私は、夏休みはすでにとったので、
次は9月初旬に調査をするまで、
出かける予定はありません。
9月には、四国中央山地を縦断するコースを
行こうと思っています。
そんな話を掃除のおばさんとしていたら、
「先生はいい生き方をされているね」
といわれました。
どういう意味だったのでしょうか。
なかなか意味深な言葉で、
考えてしまいました。


「この地図の作成に当たっては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図200000(地図画像)、
数値地図50000(地図画像)、
数値地図25000(地図画像)、
数値地図250mメッシュ(標高)、
数値地図50mメッシュ(標高)、
数値地図10mメッシュ(火山標高)及び
基盤地図情報を使用した。
(承認番号 平21業使、第53号)」

解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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