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Essay ★ 67 五色台:カンカン石の音の由来
Letter★ 梅雨・カンカン石


20万分の1地形図でみた讃岐平野。


上と同じ範囲をLandsat画像でみたもの。


5万分の1地形図でみた讃岐平野。


上と同じ範囲をLandsat画像でみたもの


上の同じ範囲を地下開度でみたもの。平野の中の高まりがよくわかる。


上の同じ範囲を地上開度でみたもの。火山の解析が進んでいるのがわかる。


上の同じ範囲を傾斜量図でみたもの。


五色台の展望台からみた瀬戸大橋。


国分台からみた火山群。


国分台のサヌカイト。


五色台のサヌカイト。板状の節理が発達している。


屋島から見た庵治の採石所。


屋島から見た庵治の採石所(望遠)。

(2010.07.15)
  讃岐(さぬき)は香川の昔の呼び名です。その讃岐を名前にもつ岩石があります。その岩石は、非常に特異で複雑な履歴を持っています。しかしその岩石の奏でる音は、あまりに澄んでいて、特異な履歴を感じる人は少ないでしょう。


Essay ★ 67 五色台:カンカン石の音の由来

 四国と本州の間に、3つの橋があります。本州四国連絡橋と呼ばれ、東から神戸−鳴門ルート、児島−坂出ルート(通称、瀬戸大橋)、尾道−今治ルート(瀬戸内しまなみ海道)となっています。1988年4月10日に児島−坂出ルートが開通し、1998年4月5日には神戸−鳴門ルートが、1999年5月1日には尾道−今治ルート(実際には道路が全部つながったのは2006年4月29日)が開通しました。瀬戸内海に面した徳島、香川、愛媛の各県が、本州と陸続きになりました。私は、いずれのルートも、遠目で眺めることはあったのですが、渡ったことはありませんでした。
  今回は香川県坂出の五色台(ごしきだい)を取り上げます。香川県は徳島県の北側に位置して、瀬戸内海に突き出た形をしています。香川県坂出には、瀬戸大橋がありますが、何箇所かで見てはいたのですが、なかなか全容がつかめないままでした。
  先日JRに乗って、坂出から岡山に渡る瀬戸大橋をはじめて渡りました。10本ほどの橋が、島をまたいでつくられています。瀬戸大橋は、自動車道の下にJR線が通る2階建ての構造になっています。JRで通過して、その長さと巨大さに驚きました。
  さて、五色台です。五色台は、瀬戸内に臨み、讃岐平野の中にそびえています。標高は300m以上もあり、瀬戸内海や讃岐平野を眺めることができる景勝地でもあります。瀬戸内海国立公園に含まれています。五色台に宿泊したので、朝と夕方の田畑の広がる讃岐平野と瀬戸内を眺めることができました。
  香川県の地形と地質の概略を紹介しておきましょう。香川県の南側には、中央構造線で持ち上げられた讃岐山脈があります。讃岐山脈は、主として中生代白亜紀後期の和泉層からできています。讃岐山脈の北側では、領家帯の花崗岩があります。領家帯は瀬戸内海をはさんで中国地方にまで分布しています。
  讃岐山脈の北麓から一気に標高を落とし、讃岐平野になります。讃岐平野の中には、台地状や円錐状の山がいくつもある珍しい景観を示します。
  台地状の山は、花崗岩でできたところと火山岩でできたところがあります。石の産地として有名な庵治(あじ)は、屋島の東に湾を挟んである山の裾野にあります。その裏山から産出する石は花崗岩です。庵治にはストーンミュージアムがあります。残念ながら庵治の石は売っていませんでした。
  火山の方は、五色台(国府台と呼ばれています)、城山(きやま)、壇ノ浦の戦いで有名な屋島(やしま)などで、もちろん火山岩からできています。この火山岩が、讃岐岩(サヌカイト、sanukite)とよばれる少々変わった安山岩からできています。昔に活動した火山なので、浸食を受けた溶岩台地(開析溶岩台地)となっています。讃岐富士と呼ばれている飯野山のような小さな円錐状の山も火山で、マグマの通り道(岩頚(がんけい)といいます)が残っているものです。やはり安山岩からできています。
  これらの火山は、1400〜1100万年前(中期中新世)に活動した瀬戸内火山帯に区分されています。瀬戸内火山帯の特徴は、サヌカイトの仲間(サヌキトイド、sanukitoid)のほか、ざくろ石デイサイト、松脂岩(Pitichstone)などの特徴的な岩石を含んでいます。特にサヌキトイド特徴的では珍しい石でもあります。
  サヌキトイドは、安山岩の特徴をもっている(SiO2の含有量など)のですが、古銅輝石(bronzite)という斜方輝石を含むこと、マグネシウム(Mg)が多いなどという特徴があります。Mgの量はMg/(FeO+MgO)比で示されますが、この比が0.5以上です。Mgが多いのは、マントルから直接由来した玄武岩がもっている特徴で、一般の安山岩では見られない特徴です。このような安山岩は高Mg安山岩(High-Mg andesite、HMAと略されることがあります)と呼ばれ、島弧でも、ある特別な条件を満たしたところに産すると考えられています。
  瀬戸内火山帯の高Mg安山岩を詳しく調べられた海洋研究開発機構の巽好幸さんによれば、次のようなシナリオになるようです。
  まず、合成実験から高Mg安山岩は水を含んだマントルと共存できます。このような形成場は特異な条件によってのみ達成できると考えられています。
  その特異な形成史を見ていきましょう。
  大陸に縁にあった日本(列島とはなっていなかった)は、太平洋プレートが沈み込むところでした。3000万年前から1500万年前にかけて、日本は、割れ目(リフトと呼ばれています)ができ、やがて日本海が開いて、日本列島が成立します。その過程で特殊な火山活動が起こったと考えられています。
  2000万年前ころ、日本の南の海底で、南北に伸びた四国海盆が開きはじめ、新しい海洋底が形成されます。四国海盆の東側には、太平洋プレートの新たな沈み込みの場ができ、伊豆−ボニン列島が形成されます。1400万年前ころになると、日本海がフォッサマグナで割れるように開き始めます。このとき押し出された日本列島の西南部分(西南日本と呼ばれています)と四国海盆の間に南海トラフができます。南海トラフでは、本来なら沈み込むはずのない若くて熱い四国海盆の海洋プレートが、高温のマントルの中に強制的に沈み込みます。
  その沈み込んだ海洋プレートに混じっていた堆積物がマントルに持ち込まれます。マントルの中でそれらの堆積物の一部は溶けはじめます。そのとき珪長質のマグマが形成されます。珪長質マグマは、上昇中にマントルの岩石(カンラン岩)と反応しながら、最終的に1000〜1100℃の条件で水を含んだ高Mg安山岩となります。それが瀬戸内のサヌキトイドの起源だと考えられています。
  火山ごと、地域ごとに、マグマ活動には個性がありますが、上述のような条件が瀬戸内地域にはある時期できたようです。非常に複雑で特異な起源です。
  サヌカイトは、ドイツ人地質学者ナウマンが本国に持ち帰り、知人のバインシェンクがその特異性から讃岐(香川のこと)にちなんで、sanukiteと命名したのが由来です。その後、サヌカイトに類似した岩石が世界各地で見つかるようになってきたので、サヌキトイドと呼ばれるようになりました。
  サヌカイトのなかでも、たたくとカンカンといい音がするものがあります。そのようなサヌカイトを、カンカン石と呼び、土産物として珍重されています。いい音がするのは、非晶質で緻密なものです。土産をいろいろ見ていると、いい音がするのは、大きなもので高価です。もともと土産物を買うつもりはありませんでしたので、音を聞くだけならタダなので、音だけ楽しませてもらいました。
  五色台の展望台から、西を見れば、讃岐平野から瀬戸内海を眺めることができます。かなり離れていますが、瀬戸大橋も見ることができ、長大さが実感できます。カンカン石の乾いて澄んだ音からは、複雑で特異な地球の歴史に思いを馳せました。


Letter★ 梅雨・カンカン石

・梅雨・
今年の梅雨は長く、いつ終わるかわからない
様相になりました。
洪水の被害だけでなく、
農作への影響も心配です。
田舎に住むようになり、
歩いてくるとき、毎日田んぼの脇を通ります。
ついつい稲の生育をよく見るようになりました。
春は、寒くて、稲の生育の悪いようでしたが、
暑くなってからは順調に成長をしてきました。
しかし、梅雨にはいって成長はしているようですが、
実際のところは、どうでしょうか。
農家の人はいろいろ心配なことだと思います。
土砂降りの日でも、田んぼが大丈夫かどうか
見て回っている人もいます。
増水には気をつけないと、
以前友人の友人が、同じ状況で
川で流されて死んだ事故がありました。
早く梅雨が明けることを願っています。

・カンカン石・
私は土産物屋で購入する気はなかったのですが、
五色台を歩き回って、カンカン石を探しました。
残念ながら露頭は見つけることができませんでしが、
転石でカンカン石を採取できました。
また、サヌカイトも別のところで採取しました。
もちろんいずれも国立公園の範囲から
はずれいている道沿いで採取しました。


「この地図の作成に当たっては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の数値地図200000(地図画像)、
数値地図50000(地図画像)、
数値地図25000(地図画像)、
数値地図250mメッシュ(標高)、
数値地図50mメッシュ(標高)、
数値地図10mメッシュ(火山標高)及び
基盤地図情報を使用した。
(承認番号 平21業使、第53号)」

解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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