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Essay ★ 34 旭岳:山頂から謙虚さをみる
Letter★ ラッシュ・タフ


紅葉の地獄谷


旭岳から南側山麓


紅葉の旭岳の山麓


地獄谷の噴煙


姿見の池と地獄谷


噴気孔


地獄谷に見える火山砕屑岩の断面


山頂から眺める地獄谷


旭岳山頂からみる後旭岳


山頂から見る御鉢平カルデラ方向(北側)。ランドサット画像と数値標高データで作成。


山頂から見る御鉢平カルデラ方向(北側)。ランドサット画像と数値標高データで作成。


旭岳山頂から眺められる地域(ピンク色部部)


上空から見た眺めたCG図。ランドサット画像と数値標高データより作成。


旭岳と御鉢平カルデラの地形図。


旭岳山頂の360°パノラマ合成画像。

 9月下旬の3連休に、家族で旭岳に登ってきました。連休の間は、好天に恵まれて、絶好の登山日和となりました。そして北海道の最高峰に立つことができました。

Essay ★ 34 旭岳:山頂から謙虚さをみる

 旭岳は、大雪山の中にある北海道の最高峰(2290m)を誇ります。北海道で一番早く秋が訪れるところでもあります。私たちが登ったときは、もう紅葉が始まっていました。
  旭岳の麓には、旭岳温泉として、ホテルや旅館などの宿泊施設がいくつもあります。旭岳温泉にはロープウエイの乗り場があり、ロープウエイを使えば4合目まで一気に登ることができます。ですから、北海道の最高峰でありながら、5合目あたりまで多くの観光客が訪れるところです。
  私が地質調査をはじめる前は、山登りや山歩きが好きで、近くの山を一人で登っていました。山登りとはいっても、ピークハンターのように頂上を目指すのが目的ではなく、自然の中を歩き回ることがもっぱらでした。もちろん、いくつかの山頂には立ちましたが、それは余禄のようなものでした。
  地質調査をするようになった頃は、山頂を目指すより、地質学の面白さを野外で満喫するようになっていました。調査のために沢に入ることが多く、今まで味わったことのない自然の趣を、沢登りを通じて味わっていました。そして自然の奥深さを感じていました。
  若い頃もそうだったのですが、地質調査を始めてからは特に、頂上を目指すことにあまり意味を見出せませんでした。目的もなしに頂上に行くことは無駄だとすら思っていました。本格的な登山する人の足元にも及びませんが、気がつくと結構あちこちの山頂を極めていました。
  家族で山に出かけるようになってもその考え方は変わらず、登頂は目的の一つにすぎません。子供や家内、自分自身の体力を考え、例え山頂を目指していても、無理はしなくなりました。今回の旭岳の登山も、長男が8合目でバテたので、家内と長男は下山させて、体力がまだ大丈夫であった次男と私が、登山を続けて、頂上に立ちました。
  旭岳を訪れる多くの観光客は、頂上を目指すのではなく、高原の景観を味わうことが目的でしょう。9月の下旬は、旭岳のロープウエイの姿見駅を降りると、まだ森林限界を越えていませんので、紅葉が楽しめます。池越しに見る紅葉は美しいものです。
  しかし、ロープウエイの駅付近でなんといっても目を引くのは、紅葉の向こう側に広がる景観とのコントラストです。山頂から急激に切れ込んだ谷(地獄谷と呼ばれています)は非常に荒々しいものです。
  西側に開いた谷には、噴煙を上げている噴火口が、何箇所も見えます。旭岳が活動して火山であることは、誰の目にも明らかです。風向きによっては、硫化水素の匂いも漂ってきます。
  旭岳を含む大雪山は、100万年間活動を続けている巨大な火山の集合体です。大雪山では、20個以上の火山体が確認されています。大雪山の中央部に直径2kmにもおよぶ大きなカルデラ(御鉢平カルデラと呼ばれています)があります。このカルデラは、約3万年前の大雪山ではもっとも大きな噴火でできたものです。
  旭岳は、御鉢平カルデラの南西のはずれにあたります。2万〜1万年前から活動をはじめて、約6500年前まで活発な噴火をしていました。安山岩のマグマが噴火したもので、活動初期には溶岩を何度も流しましたが、その後爆発的な噴火に変化して、降下スコリアや火砕流を出しました。このような火山噴出物が、旭岳の火山体をつくりました。
  3000〜2000年前ころに、水蒸気爆発によって山頂から西の山体が崩れて(岩屑なだれ)、現在の地獄谷ができました。この岩屑なだれや泥流の堆積物は、旭岳温泉にまで達しています。
  1000年前以降に、現在、姿見の池と夫婦池になっているところで噴火が起こりました。さらに250年前以降にも、地獄谷で水蒸気爆発が2度にわたり起こりました。その時に、現在も活動中の火口群が形成されました。旭岳は、現在も活発な噴気活動を続けています。
  旭岳の山頂から北東の方向を眺めると、御鉢平カルデラ周辺にある山々が見えます。残念ながら、御鉢平カルデラは、間宮岳が邪魔をしていて全貌を見ることができません。しかし、その巨大なカルデラさえ小さく見えるほど大雪山は大きいのです。
  大雪山からは多くのピークが見えます。それらの多くが火山であることがわかります。旭岳の登山道は火山由来の岩石からできます。山頂から眺めだけで、大雪山が巨大な火山である証拠が、いくつも見つかります。
  山頂から眺めると、大雪山は雄大なだけでなく、多様な自然や、神々しい景観を生み出していることが見えます。そんな雄大さと比べ、一つの山頂を極めただけで満足する人間の小ささを感じました。一つの山頂に達することが大切なのではなく、大雪山の偉大を感じることが大切なのでないでしょうか。自然の偉大さの前には、人は謙虚であるべきではないでしょうか。旭岳の山頂で、そんなことに思いを馳せました。
  登山から帰った翌日の新聞をみると、旭岳のカラー写真が第一面を飾っていました。今年はじめての冠雪が観測されたというニュースでした。その新聞記事を読んで、数日初冠雪が早ければと登頂はできなかったと思います。今回は本当に天候に恵まれたと思えました。
  北海道は、これから短い秋から、一気に冬に向かっていきます。


Letter★ ラッシュ・タフ

・ラッシュ・
昨年も同時期に旭岳温泉を登山のために予約をしようとしたら、
満員でどこにも泊まることできませんでした。
今年はなんとか予約をすることができました。
同じホテルに2泊して、丸一日を登山日にしました。
9月下旬は、北海道の高山では紅葉が始まる頃です。
今回の連休は、久しぶりの好天なので、
ロープウエイを使って多くの観光客が訪れていました。
私たちもロープウエイを使って登りました。
私たちが下山した午後2時ごろは、
ちょうどラッシュの真っ最中で、
1時間ほどロープウエイに乗るのに並ばねばなりませんでした。
疲れた体で行列をするのは大変でした。
北海道にいると都会を除いて混雑はほとんどないので、
こんな長蛇の列に並んだのは、珍しい経験でした。

・タフ・
今回の旭岳の登山で、我が家で一番体力のあるのは
小学校1年生の次男であることが判明しました。
次いで私で、小学校4年生の長男、家内と続きます。
本当は長男も体力があるはずなのですが、
すぐにあきらめてしまうところがあります。
長男が1、2年生の頃は、今の次男のように体力がありました。
なぜか、3年生になった頃から、急に体力がなくなりました。
あきらめ癖がついたのかもしれません。
一方、もともと次男は体力がある上に、
負けず嫌いな性格もあいまって、
少々のことでは弱音を吐きません。
登山途中はかなり苦しそうでしたが、
休めば体力はすぐに回復していました。
私は登山後、数日間、筋肉痛に悩まされました。
私の体力も衰えているのでしょうが、
今回の登山では、次男のタフさには驚かされました。


の地図の作成に当っては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の2万5千分の1地形図を使用したものである。
(承認番号 平15総使、第140-623号)

10mメッシュ標高データ及び解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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