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Essay ★ 19 桜島:益と害
Letter★ 監視カメラ・シラス


 10mメッシュ数値標高による桜島のCG地形。


 数値標高とランドサット衛星画像による桜島のCG地形。東側から眺めたもの。


 数値標高とランドサット衛星画像による桜島のCG地形。北側から眺めたもの。


 数値標高とランドサット衛星画像による桜島のCG地形。西側から眺めたもの。


 50mメッシュ数値標高による桜島のCG地形。


 上の同じところから10mメッシュ数値標高による桜島のCG地形。


 10mメッシュ数値標高による傾斜量地形解析。


 10mメッシュ数値標高による地下開度地形解析。


 10mメッシュ数値標高による地上開度地形解析。


 桜島。東側からの眺め。


 桜島の南東の展望台からの眺め。溶岩流と噴煙が見える。


 桜島の南東の展望台からの眺め。溶岩流があるのだが、植生のため所ごろにしか溶岩が見えない。


 桜島の南東の展望台からの眺め。噴煙部分の望遠撮影。


 桜島の南東の展望台からの眺め。噴煙部分の望遠撮影。


 桜島の西からの眺め。活火山のすぐ近くに生活を営む人が多数いる。

 火山は、日本人にとっては欠くことのできない存在で、長く付き合ってきました。火山は日本の風土として重要な要素ともなっています。そんな火山との付き合いを、桜島から考えてみました。

★ Essay 19 桜島:益と害 

 鹿児島県の錦江湾(鹿児島湾ともいいます)にある桜島は、典型的な日本の活火山のひとつです。現在も噴気を上げていて、何度も噴火を繰り返しています。時には、激しい噴火も起こっています。私は、桜島の噴気を4回ほど見ました。桜島からは2度、鹿児島市内から錦江湾ごしに2度、眺めています。そんな都会から間近に眺める桜島は、火山と人の生活の関係を考えさせられます。
 桜島という名前をもっているのに、島でなく大隈半島側の垂水市で陸続きとなっています。ですから、「島」という名称がついていることに、奇異な感じを持ちます。もともと桜島は名前の通り、錦江湾に浮かぶ島だったのです。ところが1914(大正3)年の噴火によって、流れ出た溶岩によって間にあった海峡が埋められたため、陸続きとなりました。
 桜島は、単独の火山のように見えますが、姶良(あいら)カルデラ(南北17km、東西23km)の南端にできた成層火山です。カルデラは錦江湾の北半分の丸みをもった部分です。そのカルデラは巨大な火山の活動によってできたものです。その一連の火山活動の一部として、桜島の火山があります。カルデラの北側に鹿児島の市街地があるのです。
 桜島は、直径10kmほどで東西に延びた楕円形(南北12.2km、東西9.5km)をしています。最高峰は北岳(1117m)、次いで中岳(1060m)があります。いずれも火山活動によってできた山です。その他にも権現山、鍋山、引ノ平などの側火山があり、山腹や海底での火山活動も起こっています。
 現在、噴煙を出しているのは南岳(1040m)で、北岳の山腹にあります。桜島の火山活動は、3つの時期があります。北岳が2万2000年前から2000年ほど活動して最初の成層火山(古期北岳)となりました。その後しばらく活動はなく、1万1000年前から4500年前までの長い期間にわたって、北岳で活動(新期北岳)が起こりました。そして4000年前ころから南岳の活動がおこり、現在に至っています。桜島の活動によって多くの火山灰が東側の大隈半島につもっています。
 南岳の活動時期となってから、噴火の記録が人の手によって残されていくようになります。最古の記録は708(和銅元)年ですが、764(天平宝字8)年、1471(文明3)年、1779(安永8)年、1914(大正3)年、1946(昭和21)年に大規模な噴火が起こっています。現在の火山活動は、1955(昭和30)年10月からはじまった噴火が現在も継続しています。1999年や2000年などに噴火を起こし、噴出物や爆発時の空振、土石流などにより被害を出しています。現在でも、南岳山頂火口から2km以内は立ち入り禁止となっています。
 桜島は、60万人を越す人口が密集する鹿児島市の南、ほんの10kmほどのところにある非常に活発な活火山です。風向きによっては、火山灰が市内に降ることもあります。2004年には、11回の噴火により、市役所での1平方メートル当たり124gの降灰がありました。
 そんな市街地に近接しているため、桜島は、常時厳重な監視体制がとられています。多数の地震計(5地点)や震度計(1地点)、空振系(4地点)、GPS(3地点)傾斜計(1地点)、望遠カメラ(2地点)による観測がなされています。
 私が見たときも桜島は噴気を出していました。噴気の規模は時々によって様々ですが、火山活動を目の当たりにすることができます。その噴気を眺めていると、時々刻々変化していることがわかります。そんな火山噴火をみていると、日本人と火山との共存についつい思い至ります。
 南九州、とくに鹿児島はシラスと呼ばれる白っぽい火山灰や細粒の軽石などで覆われています。その火山灰は、姶良カルデラの大噴火によるとされています。火山灰の起源は、桜島より前の2万5000年前に発生した姶良カルデラの入戸火砕流によるものだと考えられています。その量は約200立方kmに達し、日本全国にも飛んでいます。このような火山灰は広域テフラと呼ばれ(姶良Tn)、約150立方kmと見積もられています。鹿児島周辺ではシラスの厚さは数十mにも達しています。
 シラスは軽くてもろく、水に流れやいため、侵食をうけ、シラス台地という特有の地形をつくっています。シラス台地では、水が浸透しやすく、栄養分も乏しく、稲作にはてきしていません。しかし、シラスのようなところでもよく育つサツマイモや桜島大根などが主要な農産物となっり、全国にその名を知られる名産品となりました。
 人間は、智恵を使って、火山と共存してきたことが、鹿児島をみていると感じます。害と思われるようなことでも、智恵で益となしたのです。
 日本列島とは、古い大地の上に、火山活動が起こるような地質学的位置に常におかれていました。日本列島は火山活動によって常に変化を受けているところといえます。人類が登場してからも、火山活動は続いています。日本人は古くから火山とは付き合ってきたのです。そして日本に住む限り、未来も火山と付き合っていかねばなりません。
 今も昔も、火山は自然災害として、恐怖の存在です。でも、火山は人にとって悪いことばかりではなく、風光明媚な景観や温泉など、現在では重要な観光資源も与えてくれます。また特有の土壌を生かした農業製品をも生み出し、名産品としています。ですから火山は、人にとって益と害の両面を持っているのです。
 活火山とはいえ、被害を与えるような噴火はめったにあることではなく、静穏な状態が長く続きます。激しい火山活動の時間と平穏な時期とを比べると、明らかに平穏が時間の方が長くなります。ですから、観光資源として考えると、一時的な訪問をする人にとっては、火山とは危険性はほとんどなく、恵みだけを与えてくる存在といえます。
 ところが住んでいる人には、数10年に一度の噴火でも、脅威の存在となります。もし、噴火による火山放出物や降灰によって、家財や田畑を奪われるかもしれません。時には命の危険すらあるわけです。
 ですから、噴火に備えて防災というものを常に意識することになります。かつて科学が発達していないときは、いつ起こるとも知れない火山噴火に対処しようがありませんでした。あきらめるしかない自然災害となったのです。火山災害とは、自然災害の中でもっとも諦観がともなうものかもしれもしれません。
 現在では、噴火予知の水準はよくなりました。また予知が不完全でも、防災対策は以前と比べものにならないほどよくなりました。近年では、予知と防災によって、命や財産のすべてを失うようなことは、あまりなくなりました。最悪の事態は免れるようになったのです。
 観光資源として火山を考えると、同じ火山列島に住む日本人は、火山の恐ろしさを熟知しています。ですから、いったん噴火が起こったり、噴火の危険性があるときは、観光客が寄り付かなくなります。しかし、日本人は温泉好きです。火山活動が治まると、火山の恵みである温泉を味わいに戻ってきます。火山の恐ろしさを知っているからこそ、平穏な時期の恵みを味わおうとしているのかもしれません。


★ Letter to Reader 監視カメラ・シラス

・監視カメラ・
気象庁では、活火山を観測網の一つとして、監視カメラを設置しています。
その画像は、インターネットで公開されています。
桜島の画像も公開されています。
URLは次のところです。
http://www.seisvol.kishou.go.jp/vo/32.php?kansokuten=SKRTARvvi&mode=0&cmd=write(改行で切れているところをつないで入力してください)
この画像は、気象庁ではなく、
国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所による監視カメラ画像です。
このような情報公開によって、
火山活動を自宅から、眺めることができるわけです。
もちろん、インターネットですから、
日本だけでなく世界上からこの画像を見ることは可能です。
世界の火山のライブ映像も見ることができます。
なにも火山だけでなく、
日本も含め、名所や都会にはインターネットで公開されている
ライブ映像が多数あります。
ですから、ライブ映像だけで世界の名所旧跡を巡ることも可能なのです。
そんな時代になったのですね。
でも、温泉は行かなくては味わいません。
これだけは、今も昔も変わらないことでしょう。

・シラス・
シラスとは、南九州の方言で白い砂を意味しています。
姶良カルデラの火山活動は、二酸化ケイ素分が多く(酸性マグマとよばれる)、白っぽく見えるます。
これが、シラスの白い理由です。
シラスのような火山灰は、日本中に似たようなものがありますが、
鹿児島のような大規模なものは少ないです。
それほど鹿児島は、火山と密着していることになります。
シラスでつくられたサツマイモを食べさせて豚は
特有の風味を持つ黒豚として全国的に有名になりました。
実は鹿児島は、肉牛の生産も日本一だそうです。

 


の地図の作成に当っては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の2万5千分の1地形図を使用したものである。
(承認番号 平15総使、第140-623号)

10mメッシュ標高データ及び解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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