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Essay ★ 13 富士山:防災のための分類
Letter★ 風邪・富士


10mメッシュによる富士山の全景


10mメッシュによる富士山の山頂周辺


50mメッシュによる富士山の山頂周辺


傾斜量による富士山広域の地形解析。側火山の北西−南東方向の並びが良く見える。


地上開度による富士山広域の地形解析。流水による解析の跡が顕著に見える。


地下開度による富士山広域の地形解析。火口の分布がよく分かる。


傾斜量による富士山頂付近の地形解析。側火山の北西−南東方向の並びが良く見える。


地上開度による富士山頂付近の地形解析。流水による解析の跡が顕著に見える。


地下開度による富士山頂付近の地形解析。火口の分布がよく分かる。


箱根大涌谷からの眺め。


箱根乙女峠からの眺め。


箱根大観山からの眺め。


白糸の滝。溶岩の上部を地下水通り滝として流れ落ちている。


富士山の縄状溶岩。


富士山の富士川河口付近まで流れた溶岩。


富士山の小御岳の火山。


富士山の玄武岩溶岩。


富士山の玄武岩溶岩の偏光顕微鏡写真。

 現在の活火山という分類は、人間が火山災害をできるだけ少なくするために考え出された方法です。まだまだ活火山の研究は途中ですが、現状を紹介しましょう。

★ Essay 13 富士山:防災のための分類 

 日本の山の象徴として、富士山が挙げられます。葛飾北斎の富岳三十六景の浮世絵はあまりに有名です。太宰治は、「富嶽百景」の中で、あの有名な「富士には月見草がよく似合う」という言葉を残しました。カレンダーにもよく使われています。「一ふじ、二たか、三なすび」というように、初夢のめでたいものの象徴としても、富士山が使われます。富士山は日本人にとっては、非常に馴染み深い山であるといえます。
 その理由の一つは、富士山は、独立した山で、円錐形のきれいな形をしてるからでしょう。そのきれいな形が、多くの人を魅了してきたのでしょう。時には宗教的崇拝の対象となり、ある時には写真や映像の被写体としての魅力もあったでしょう。また、富士山は、日本最高峰という高さをもっています。高い山の登頂は、厳しい条件を乗り越えた後、達成されます。登頂の目的としても、修行の場としても、富士山は美しさの反面でもある厳しさを持っているのです。
 富士山は、ご存知通り、火山活動によってできた山です。日本列島で見ることのできる火山には、いろいろな形がありますが、富士山は、成層火山というタイプの形をしています。成層火山とは、層を成すという字が使われていることでもわかるように、火山噴火が何度もあり、そのたびに噴出物が出て、積み重なって高い山になってきたものです。成層火山は、富士山と似たような形となります。ですから、各地で○○富士という名称の山がありますが、その多くは成層火山です。
 火山とは、富士山のように風光明媚な景観をもたらしてくれます。そして、日本人は大好きな温泉も提供してくれます。しかし、いったん噴火が起こると、火山は近づきがたい危険なものとなります。火山の歴史を見ていくと、激しい噴火を起こすのは一時期で、それ以外は穏やかで、あまり活動的ではありません。火山には人にとって明と闇の両面を持っています。火山とは、ある一時的な活動が災害という闇の部分で、他の大部分の期間は人に益を与える明の部分となります。
 火山の災害は、火山噴火が予知できれば、防災可能となります。かつて、火山の区分として、活火山の他に、休火山、死火山がありましたが、現在では使われていません。それは、防災という観点からみて、休火山、死火山が無用であり、誤解を与えかねないからであります。
 かつての活火山の定義は、「過去およそ2000年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」となっていました。それ以前の火山で、火山活動を休止しているものを休火山、過去に噴火の記録のないものを死火山としてました。かつての分類では、富士山は休火山になっていました。
 しかし、このような定義は、言葉の上ではできても、実際の火山にあてはめると難しくなります。2000年以内に記録がなくても、本当は噴火した火山があります。たまたま昔の人が記録していなかったり、研究がまだ進んでなくて実態が不明なだけなのかもしれません。記録のないのは活動していないと道東ではないのです。
 また、休火山と死火山の境目をどこに引くか、活火山と休火山の境目をどこに引くかは、言葉ではできたとしても、実際の火山の防災を考えると意味をなしません。
 例えば、1979年に死火山に分類されていた木曽御嶽山が、水蒸気爆発を起こしたことから、死火山の分類区分が意味が無く、防災上は弊害となることがわかりました。また、火山の研究が進んで、火山活動の期間は、従来の2000年ほどの単位では収まらず、1万年の単位で火山活動が起こるという見方が必要であることがわかってきました。
 このような背景から、休火山と死火山という用語は使わなくなりました。
 現在では、まず火山という分類があります。火山とは、ある山が火山活動によってできたかどうか、です。火山のなかで、現在噴火中のもの、あるいは過去約1万年間で噴火したものを活火山と定義することになっています。
 このような定義の変遷にともなって、活火山の数は増加してきました。1968年に気象庁がつくったリストでは、日本の活火山として66個挙げられていました。1975年に火山噴火予知連絡会が作成した「日本活火山要覧」では、北方領土の活火山も含めて77個の活火山が掲載されています。1996年には、「日本活火山要覧(第2版)」が出版され83個に、その後1996年には3つの火山が追加され86個の活火山となりました。そして、現在の定義となり、2005年の気象庁編「日本活火山要覧(第3版)」では、108個が活火山として登録されています。
 もちろん富士山は、活火山として分類されています。
 活火山も、過去の活動度によって、3つのランクに分けられています。ランクは、過去100年間の観測データに基づく「100年活動指数」と、過去1万年間の地層に残るような大規模な噴火の記録に基づく「1万年活動度指数」それぞれ数値化して示しされています。その両者を参考にして、活動的な火山から順にA、B、Cの3つのランクをつけました。
 その結果、Aランクは13火山(十勝岳、樽前山、有珠山、北海道駒ヶ岳、浅間山、伊豆大島、三宅島、伊豆鳥島、阿蘇山、雲仙岳、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島)で、Bランクは36火山、Cランクは36火山、ランク外23火山(海底火山、北方領土のため)となっています。富士山はBランクとなっています。
 また、気象庁では、2003年11月4日より火山活動度レベルというものを示しています。火山活動度レベルとは、現在の火山活動の程度と防災対応の必要性の有無を、0〜5の6段階の数値で表しています。実際の火山災害に運用にできる情報提供をしています。
 レベル0は長期間火山の活動の兆候がない。レベル1は静穏な火山活動で噴火の兆候はない。レベル2はやや活発な火山活動で、火山活動の状態を見守っていく必要がある。レベル3は小〜中規模噴火活動等で、火山活動に十分注意する必要がある。レベル4は中〜大規模噴火活動等で、火口から離れた地域にも影響の可能性があり、警戒が必要。レベル5は極めて大規模な噴火活動等で、噴火活動等広域で警戒が必要、となっています。
 まだ、これは、全火山には対応していおらず、12個の火山(浅間山、伊豆大島、阿蘇山、雲仙岳、桜島、吾妻山、草津白根山、九重山、霧島山、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島)だけで実施されています。今後、さらに増えていく予定です。このうち、活動レベル3は諏訪之瀬島で、レベル2は、浅間山、霧島山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島の5個で、あとはレベル1です。富士山はまだこのレベルは示されていませんが、レベル1になると考えられます。
 富士山は成層火山ですから、過去から何度も噴火を繰り返してきたことがわかります。火山の形成は、大きく三つの活動に分けられます。古いものが順番に、小御岳(こみたけ)、古富士、新富士と活動しています。
 小御岳の活動は、数十万年前に活動したできた火山です。古富士の活動は、8万年前頃から1万5千年前頃まで火山噴火を起こしました。古富士は、成層火山で、標高3000m近くの高さまで達したと考えられています。古富士の山頂は、現在の宝永火口の北側、1〜2kmのところにあったと考えられています。
 新富士の活動は、1万1000年前から8000年前にかけて、古富士の山頂と西側の火口から噴火を起こし、大量の溶岩を出しました。この溶岩によって、現在の富士山の山体である新富士が形成されました。この時には、古富士の山頂と新富士の山頂が東西に並んでいたと考えられます。その後、8000年前から4500年前にかけて、山頂の火口から小規模の噴火を繰り返し、火山灰を出しました。4500年前から3000年前には、再び山頂や火山の脇から大規模な溶岩を流しました。大規模な溶岩の流出は、これ以降起こっていません。
 3000年前から2000年前までは、大規模な噴火が山頂火口からありました。これ以降は山頂からの噴火は無くなり、火山の山体の脇(側火山)からの噴火になります。
 最後の火山噴火は、1707年(宝永4年)の噴火です。この時の噴火で、宝永山ができ、宝永山の西側には巨大な噴火口は残っています。
 最近では、1897年から山頂で噴気活動があり1960年代まで活動は続きましたが、1982年には噴気はなくなっていました。1987年8月20〜27日に山頂で最大震度3の有感地震4回が起こっています。2000年10〜12月および2001年4〜5月にはやや深部低周波地震の多発し、現在は収まっています。
 なお、東京大学地震研究所の2004年4月に行ったボーリング調査によって、小御岳よりさらに古い山体があることがわかり、先小御岳と名付けられています。
 私は、以前、神奈川県の西の端の小田原市と湯河原町に住んでいました。小田原に住んでいたときには、毎日富士山を眺められる環境でした。近かったこともあったので、富士山を眺めることだけでなく、旅行でも、調査でも、富士山には何度も出かけました。しかし、残念ながら山頂へは行きませんでした。いつでもいけるという気持ちでいたからでしょうかね。


★ Letter to Reader 風邪・富士 


・風邪・
今回のメールマガジンの発行が1週間遅れました。
申し訳けありませんでした。
1月5日から12日まで、九州の調査に出かけていました。
帰宅後風邪を引き、数日寝ていました。
風邪を押して授業をして、溜まっていた仕事、
センター試験の監督などをしていたので、
メールマガジンをまとめる時間ができませんでした。
テーマは富士山に決めていたのですが、
きょうやっと時間ができ、急いで発行することできました。
ホームページの図の作成には、少し後になるかもしれません。

・富士・
私が神奈川の西部に住んでいたときは、
箱根と共に富士山は馴染みある火山でした。
特に小田原に住んできるときは、
アパートの窓から毎日見ることができましたし、
駅から自宅までの道からも見ることができました。
また、車でいけるいろいろなルートで富士山に出かけました。
富士山周辺にも出かけています。
大きな山ですので、周辺からもいろいろ眺めるための見所があります。
でも、それは富士山は火山本体がすばらしい成層火山だからでしょう。
私もいろいろなところから富士山を眺めました。
その大きくどっしりとした山体は、
いろいろな方向、いろいろな時刻、いろいろな季節で
さまざまな素顔をみることができます。
それが富士山を被写体にする
プロ、アマの写真家が多い所以でしょう。
北海道に住むようになって、富士山は遠くなりました。
でも北海道には蝦夷富士(羊蹄山)、利尻富士(利尻山)があります。
でも、毎日眺めることはできませんが、
少し足を伸ばせば見ることができます。
日本人は富士山か好きなのですね。


の地図の作成に当っては、
国土地理院長の承認を得て、
同院発行の2万5千分の1地形図を使用したものである。
(承認番号 平15総使、第140-623号)

10mメッシュ標高データ及び解析データは
北海道地図株式会社作成の
高分解能デジタル標高データを使用した。

地図、Landsatの画像合成には
杉本智彦氏によるKashmirを使用した。


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