地球と人と
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Essay■ 6_185 地球外生命 3:プロキシマb
Letter■ 教育実習・全地球凍結
Words ■ 地球から遠くの惑星に思いを馳せる


(2021.06.03)
 潮汐ロックのかかった惑星にもハビタブルゾーンがありそうです。これは作業仮説なので、検証が必要です。検証によって、ハビタブルゾーンができなかったり、限定的だったり、広くなることもあるかもしれません。


Essay■ 6_185 地球外生命 3:プロキシマb

 地球の気候モデルからメディオクリティの仮定を利用して、未知の惑星の気象を探る方法があることを、前回紹介しました。どのようなものか紹介していきましょう。
 モデルを適用する惑星は、系外惑星のプロキシマbです。前回紹介したように、地球とは全く異なった性質の惑星であることがわかっています。主星のプロキシマ・ケンタウリは、太陽とは異なる赤色矮星で、温度も低い恒星です。恒星のあまりにも近くを公転しているので、潮汐ロックにより惑星の同じ面を恒星に向けて固定されていると推定されます。そんな特異な惑星環境に、地球の気候モデルをどう適用するのでしょうか。
 プロキシマbは、夜側と昼側は固定されていることになります。そうなると、夜側では冷たくて海は永久に氷に覆われていて、昼側では暑く乾燥した大地がむき出しになっていそうです。しかし、夜と昼の境界では、液体の水が存在でき、ハビタブルゾーンがありそうです。これが検証する前の想定になります。これでも期待が持てそうですが、条件の変化によっては、水が存在できないかもしれませんし、できたとしても狭い範囲だけかもしれません。なんらかの検証が必要になります。
 現在の地球の気候変化を予測するモデルとして、大気大循環モデル(Global Circulation Model GCMと略)があります。GCMは、現在の観測データを、ある時刻の初期条件として与え、それ以降を大気の状態の方程式(偏微分方程式)をから計算(数値的な時間積分)していくものです。現在の気象予報は、このGCMを用いています。ただし、一般的に解けない方程式なので、計算可能な近似方程式にして計算機で解いていく方法です。計算を進めていくと誤差がおおきくなっていくので、実用性としては3日程度の予測しかできません。長期予報では、別の条件や方程式を用いる必要があります。
 GCMは実用性があるのですが、地球の条件に沿って気象予報のためにつくられています。GCMを、太陽放射、大気組成、気候強制力などを変更でき、3次元的に計算できるように拡張されたソフトウェア「ROCKE-3D」が開発されています。ROCKE-3Dは、過去の地球の気候変動や、他の惑星にも適用できるように作成されたものです。
 ROCKE-3Dを使って、特異な条件にあるプロキシマbの気候を、シミュレーションしたいくつかの研究がおこなわれました。その結果、液体の水が広く存在する可能性があることがわかってきました。昼側では、雲が傘のように広がり表面の温度を下け、水が存在できる可能性があること、夜側でも暖かいの大気や海洋が循環することで、水が存在できる可能もでてきました。
 シミュレーションの結果ですが、海が恒常的に存在できる可能性を示したことになります。恒常的な海の存在と変動する気候があれば、生物を生み出したり、進化を促すことができるでしょう。


Letter■ 教育実習・全地球凍結 

・教育実習・
ゴールデンウィーク開けに、各地でスタートした
4年生の教育実習が終わりました。
教育委員会が、実習生もその学校の教員として
扱ってくださったので
実習を無事終えることができました。
実習生は2週間前からの健康管理や、
早目の帰省などでコロナ対策をしてきました。
大学教員の実習指導は受けない学校もありました。
それぞれの学校の判断になりますが、
多くの実習はできました。
後期に回された学生もいますので、
このまま事態が収まればいいのですが。

・全地球凍結・
ROCKE-3Dは過去の地球の気候の推測にも
利用されています。
地質学的証拠から、7億年前ころの地球では、
非常に寒冷な時期があり、
全地球凍結(スノーボールアース)となったと考えられています。
ROCKE-3Dを適用したところ、赤道付近では、
海が500年も安定し存在できることが計算されました。
すべての海洋が完全に凍る(スノーボールアース)ことが
なかった可能性がでてきました。
この結果は、赤道付近にも氷河あったという
地質学的証拠とは矛盾しています。
両分野で、今後の検討が必要ですね。


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