地球と人と
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Essay■ 6_175 月の地質図 2:レゴリス
Letter■ 課題とコメント・高くつく教訓
Words ■ それでも月はめぐる


(2020.05.07)
 月の表面は、レゴリスと呼ばれる堆積物に覆われています。レゴリスの形成過程から、いろいろ読みとれることがあります。月の歴史、そして地球や他の天体の歴史も、読み取ることも可能となります。


Essay■ 6_175 月の地質図 2:レゴリス

 月の表面は、砂のようなレゴリス(regolith)に覆われています。レゴリスは、聞き慣れない言葉です。アメリカの地質学のメリル(Merrill)が1897年に「風化や植生などでその場できた物質による被覆層」や「風、水、氷などで運ばれ分解された破片」に対してはじめて使いました。その後、惑星や月の探査で、天体表層を被覆する堆積物がたくさんあることから、レゴリスという用語がよく使われるようになりました。
 月には大気も水ないはずなのですが、岩石が砕かれて破片になっていることは、どういう意味があるのでしょうか。月では、破片をつくるような作用には、隕石の衝突しかありません。隕石の衝突は非常に稀な現象に思えますが、大気も水もないので、一度できたクレータは侵食を受けることがなく残り、レゴリスも次のものが飛び散って覆うまで残っています。
 クレータは、付近に別の隕石が落ちれば形が壊され、レゴリスに覆われていきます。稀な現象でありますが、確率的には、古いクレータほど、後の時代のクレータによって破壊されることになります。近接するクレータ同士では、破壊された形状やレゴリスの覆い方から、新旧の判別が可能になります。
 前回紹介した、黒っぽい岩石からできている地域はクレータが少なく、白っぽい地域はたくさんのクレータができます。これは、黒っぽい地域が新しい岩石(35億前から30億前)で、白っぽい地域が古い岩石(45億前から40億前まで)であるという、アポロの年代と一致します。このようなクレータを密度から、年代を見積もる「クレータ年代学」も考案されています。年代測定の試料の手に入らない天体であっても、クレータの数から密度が見積もれれば、その地域の年代を推定することが可能になります。
 クレータの形成率を時代ごとにみていくと、古い時代ほどクレータの形成率が高く、新しくなるにつれて減っていくという現象も見つかりました。これは、太陽系の形成の初期に、大量の隕石が落下したこと、つまり隕石が初期に一気に集積したことを意味しています。惑星の公転軌道にあった隕石が、惑星(例えば、地球)や衛星(例えば、月)となる大きな天体に、集っていったことになります。このような天体の形成は「暴走成長」モデルと呼ばれています。
 月の大きなクレータには、すべて名前がつけられています。クレータの中でも大きなものは、飛び散らさせた破片やレゴリスなども多くまります。そのような大きなクレータの衝突時期を、時代の区切りに利用し、クレータの名称が時代名にされています。
 月では、岩石の種類と時代が、ほぼ推定できるようになりました。そこから、全月の地質図が作成されました。


Letter■ 課題とコメント・高くつく教訓 

・課題とコメント・
いろいろWEB講義が今週からはじまりました。
ゼミナールのメンバーに対しては、
すでにテレビ会議システムで
個別面談やゼミをスタートしています。
問題は、大人数の講義です。
いちおうWEB講義は作成していますが、
動画を使わないように、
資料と課題提出で講義を進めることになりそうです。
100名を超える授業が2つあるので、
課題に対して、すべてコメントをすることは不可能です。
どうしたものか考えあぐねています。

・高くつく教訓・
新型コロナウイルスは疫病ですから
だれのせいでもありません。
したがって、その渦中の国や地域は
その対処をしていくしかありません。
淡々と自粛を継続していくしかありません。
本来なら、完全が外出自粛を徹底すれば、
もっと早くおさまったかもしれません。
日本では、100年前のスペイン風邪以来の疫病なので、
準備不足と指導者の無能を露呈してしまいました。
自粛をもっと継続することになります。
高くついた教訓となりそうです。


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