地球と人と
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Essay■ 6_172 宇宙の元素 4:炭素ガス形成
Letter■ センター試験・環境汚染
Words ■ 本格的な受験シーズンに突入です


(2020.01.23)
 宇宙形成の最初期に、炭素ガスが銀河全体に広がっていたことが、明らかになりました。検証の結果、正しいことがわかってきました。しかし、そこにはいろいろな問題がありました。


Essay■ 6_172 宇宙の元素 4:炭素ガス形成

 前回紹介したように、藤本さんたちは、宇宙誕生から8億年しかたってないような複数の銀河を、炭素ガスが広く覆っていることを観測しました。この炭素ガスが、実はいろいろな問題があります。
 ビックバンでできる元素のほとんどが、水素とヘリウムで、それらより重い元素は、ほとんど形成されません。宇宙形成直後8億年で、ヘリウムより重い元素ができているのは、非常に不思議です。ヘリウムより重い元素は、恒星の内部での核融合、あるいは恒星の一生の終わりに起こる超新星爆発などで形成されるものです。
 重い元素ができるには、8億年の間に、星の誕生、核融合、死という一生を、急ぎ足で終えなければなりません。恒星の寿命は、星の質量が大きければ大きいほど短くなり、小さければ長くなります。恒星の死が短時間で終わることは、とてつも大きな星ができたことになります。宇宙誕生直後に、超巨大な恒星ができれば、短命で終わってもいいでしょう。ですが、8億年という期間で、本当に星が一生を過ごせるのでしょうか。これは1つ目の疑問です。
 さらに大きな問題があります。それは、ひとつやふたつの恒星の死で、銀河全体を炭素ガスで満たすことができると考えられません。銀河全体で、一気に星ができて、一気に燃え尽きてしまい、炭素ガスを撒き散らす必要があります。これは、宇宙誕生のメカニズムとして、銀河内で巨大な星が一斉にでき、一斉に超新星爆発をする、というようなプロセスを持っていなければなりません。本当でしょうか。
 このような問題を解決する一番簡単な答えは、観測ミスです。藤本さんたちも、最初に、自身らの観測ミスを考えました。観測精度が充分であれば、ミスかどうかを確認できます。アロマ望遠鏡の観測能力は他の望遠鏡の数倍以上の能力があるので、限られた時間の観測であっても、精度の高い結果がえられました。さらに、似た時期の複数のデータ(18個の銀河)を重ね合わせることで、その結果が正しいことも明らかになりました。
 これまでにも、古い銀河に炭素や酸素などの重い元素があるのことは知られていましたが、その広がりは不明でした。しかし、今回の精度の高い観測で、銀河全体に炭素ガスが広がっていることが明らかになりました。
 観測した同時期の銀河には、共通した特徴として、炭素ガスが広がっていることが明らかになりました。藤本さんたちは、これを宇宙の環境汚染と呼びました。


Letter■ センター試験・環境汚染 

・センター試験・
センター試験が先週末に終わりました。
現在の形式での試験は、今回が最後になります。
来年度からは新しい形式の
大学共通テストになります。
しかし、試験内容は二転三転しています。
英語の業者試験が中止、
数学、国語の記述式試験は中止。
来年の受験生は気が気でないでしょう。
非常に残念ですが、
政治が国民の方を見ていない気がします。

・環境汚染・
今回紹介した論文は、プレス発表で
「環境汚染」という言葉を使っていました。
「環境汚染」はあまりいい言葉ではないと思います。
なぜなら、環境も汚染も、
どこかに人間の存在を感じさせる用語になっています。
宇宙の初期には人間は関与していません。
ですから、「環境汚染」という言葉は
アイキャッチとして用いられたのでしょう。
学術的内容にそぐわなく感じました。


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