地球と人と
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Essay■ 6_168 2019年ノーベル物理学賞 3:地球の立ち位置
Letter■ 寒波・執筆中の論文
Words ■ 体が馴れてないせいでしょうか、寒波が身にしみます


(2019.11.21)
 ノーベル物理学賞の内容に紹介しています。前回のピーブルズ博士の研究は多岐に渡っていたのですが、マイヨール博士とケロー博士の研究はわかりやすいもので、そのインパクも想像しやすいものです。


Essay■ 6_168 2019年ノーベル物理学賞 3:地球の立ち位置

 2019年のノーベル物理学賞は、ピーブルズ博士ともう一組、スイスのマイヨール博士とケロー博士が受賞しました。その内容は「太陽と似た恒星の周りを公転する系外惑星の発見」という業績に対して与えられました。この業績は、わかりやすいものです。
 ただし、実際の観測はなかなか困難なものでした。惑星は自ら光を発していません。恒星の光を反射をしているだけです。他の恒星の周りの惑星を、その反射の明かりだけで、遠く地球から、直接、観測するのは不可能です。そこで考案されたのが、恒星の運動が、惑星よってブレるのを観測しようという方法です。
 大きな惑星が回っていれば、恒星も共通の重心を回って動いています。もしその動きが、恒星のブレとして検出でき、周期性がわかれば、惑星の存在が間接的ですが、知ることができます。星のブレは、恒星の発する光の波長の変化を、ドプラー効果として観測するものです。ドプラー効果から、惑星のサイズや公転周期を推定していきます。
 マイヨール博士は、1977年から13年間かけて、291個の恒星を定期的に観測したところ、37個の恒星で周期変化をみつけました。しかし残念ながら、それらすべてが連星でした。連星とは、2つの恒星が共通重心で回っているもので惑星によるブレではありませんでした。
 1995年には、ブリティッシュ・コロンビア大学の研究グループが、21個の恒星を、12年間にわたって定期的に観測したのですが、「15年以下の公転周期を持つ木星の質量(木星質量)の1から3倍の惑星は存在しない」という結果を報告していました。
 ところが、マイヨール博士と当時大学院生であったケローさんが、より高精度の観測機を用い、以前の観測でドプラー効果が検出できなかった142個の恒星を選んで観測しました。すると、約50光年のペガスス座51番星(51Peg)に、太陽系以外ではじめて惑星があることを発見し、1955年に報告しました。この惑星は、51Peg bと命名されました。bとはその恒星系の最初の惑星となり、以降、惑星が見つかったら、c、d、・・・アルファベットがつけられていきます。
 さらに驚くべきことに、この惑星は木星の半分程度(0.47倍)の質量をもったガス惑星なのですが、たった4.2日間で恒星の周りを公転していました。私たちの太陽系では、想像もしていなかった惑星の発見でした。木星のようなガス惑星でありながら、太陽のすぐ近くを、それもものすごい公転速度で巡っていました。このような惑星は、「ホットジュピター(暑い木星)」と呼ばれました。
 その後、次々と系外惑星が見つかり、現在、その数は4000個以上になっています。その中には、異形の惑星も多数見つかってきました。多様な系外惑星の発見で、我々の太陽系が典型的な惑星系とば呼べず、多様な惑星系のひとつにすぎないことがわかってきました。その魁となったのが、マイヨール博士とケロー博士の発見でした。
 その結果、我々の太陽系の形成モデルも変更が迫られ、より普遍性があるモデルが必要になりました。また、その中でなぜホットジュピターの異形の惑星ができるのかも、説明される必要もあります。
 恒星からの距離に応じて水の存在できる領域(ハビタブルゾーン)の惑星、また地球サイズの惑星も見つかりました。もしハビタブルゾーンに地球サイズの惑星があれば、そこには生命が誕生しているのでしょうか。系外惑星の発見は、そのようなことを考えさせるきっかけになりました。


Letter■ 寒波・執筆中の論文 

・寒波・
先週末から北海道は寒波に見舞われています。
あちこちで除雪車が動き出したというニュースも流れました。
わが町は、週末に雪が降っていたのですが、
除雪するほどではありませんでした。
ところが、日曜日には嵐となり、すごく冷え込みました。
週の初めには道路が凍ってつるつるになっていました。
転びそうになりながら、早朝の凍てつく道を歩いています。

・執筆中の論文・
このシーリーズの最初に、
現在執筆中の論文で、系外惑星についてまとめている
と書きました。
ところが、論文を書き進めているうちに、
ページ数がオーバーしてしまいました。
しかたなく、その部分を削除しました。
次回の論文では、系外惑星などの多様性も含めた、
地球や私たちの太陽系のテクトニクスを考えるものとなります。
まあ、論文を書き進めていくと、
このようなことはよく起こることなので、
しかたがないでしょう。
締め切りのぎりぎりまで呻吟していましたが、
今週初めにやっと投稿することができました。


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