地球と人と
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Essay■ 6_151 重さの単位 3:ケイ素の真球
Letter■ 後期の講義の終了・大学4年生の心は
Words ■ 授業が終わるとなぜかワクワクする


(2018.01.18)
 今の質量の基準は、かつては不便なものから、便利なものにされてきました。現在の技術の基準からすると、あまりいい基準とはいえなくなってきました。その背景の事情を紹介しましょう。


Essay■ 6_151 重さの単位 3:ケイ素の真球

 重さの基準を、どこにでもある水を用いることは、原理的にはわかりやすいのですが、実用が難しそうです。前回紹介にしたように、液体の水を正確に測定することはなかなか困難です。そこで新たな基準として登場したのが、「キログラム原器」と呼ばれるオモリを作成することです。固体で変化しないオモリにすれば、天秤方式で測定すれば、重力などの影響をうけることなく、正確に重さを計測し、同じものをつくることもできます。
 1799年に、「キログラム原器」の原型となる「アルシーヴ原器」(kilogramme des Archives)が制作されました。それまでの水を用いた重さ定義に合わせて白金製の「キログラム原器」が作成されました。これで、基準を変化しない固体にする準備ができました。
 1889年の第1回国際度量衡総会で、白金イリジウム合金(白金:イリジウム=90:10)の「国際キログラム原器」の質量を基準とすることが決められました。「国際キログラム原器」自体は、1889年に製作されたものを基準とされました。
 「国際キログラム原器」の複製が作成され、各国に配られました。40個が複製され、日本には6番、30番、39番が原器として配布されています。39番は韓国に渡しました。日本では、今でも6番が「日本国キログラム原器」とし、30番は副原器として使っています。これらは、現在も産業技術総合研究所に保管されています。
 130年ほど前と比べると、計測技術は格段の進歩がありました。測定において単位は非常に重要なものです。国際単位系(International System of Units、SIと略されています)として、7つの基本単位があります。この7つがあれば、他の単位(組立単位)が定義できます。基本単位とは、長さのメートル(m)、質量のキログラム(kg)、時間の秒(s)、電流のアンペア(A)、温度のケルビン(K)、物質量のモル(mol)、光度のカンデラ(cd)となっています。
 これまで、長さや時間など、より精度の高くなるような基準を、時代ごとに決めてきました。ですから、いずれの単位の基準も精度がよくなってきています。ところが質量に関しては、未だに国際キログラム原器を基準としています。質量は重要な単位なので、問題です。
 他にも、いくつかの問題があります。原器は約40年ごとに国際キログラム原器と比較されるのですが、日本国キログラム原器は国際キログラム原器に比べて0.176mg、重いことが分かっています。さらに国際キログラム原器でも問題が見つかっています。原器は金属ですので、表面に物質が吸着して年々質量が増えていました。その値が変化するような基準は問題です。そして、1988年から1992年の定期校正で原器を洗浄したころ、約60μg減ったことがわかっています。
 このような変動する基準を、なぜ質量の単位にするのかというと、これ以上にいい質量の基準になるものがなかったからです。
 ところがこの度、より精度のいい質量の基準ができるという報告がでました。それは次回としましょう。


Letter■ 後期の終わりに・大学4年生 

・後期の終わりに・
大学の講義の授業も来週で終わります。
そしてすぐに定期試験がはじまり、
大学入試がスタートします。
いよいよ大学の年度の終わりと
次年度に向けての準備が並行します。
今年度は例年以上に忙しかったのですが、
忙しいときほど、終わりの達成感はあります。

・大学4年生・
私たちの学科では4年生に
卒業研究を必修として課しています。
12月に報告書の提出があり
1月下旬に発表会があります。
この2つは必ず行わなければなりません。
それが4年生にとっては、
大きな区切りとなります。
発表会が終われば、
社会に出る準備となります。


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